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体がむくんでいたら注意!子どものネフローゼ症候群とは【ベスタの小児科医が解説】
「朝起きたら、子どものまぶたが腫れている…」「最近、靴下の跡がくっきり残るようになった…」そんな症状に心当たりはありませんか?
子どもの体のむくみは、成長過程でよくあることと思われがちですが、実は腎臓の病気「ネフローゼ症候群」のサインかもしれません。
この記事では、お子さまがネフローゼ症候群と診断された保護者の皆さまに向けて、子どものネフローゼ症候群の原因から治療、そしてご家庭でのきめ細やかなケアや日常生活の注意点まで、最新の医学情報に基づいて網羅的に解説することを目的としています。
当クリニックは、練馬区、中野区、杉並区、西東京市など、特に西武線沿線にお住まいの皆さまの「かかりつけ医」として、365日、土日祝日も診療を行っています。「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という診療理念のもと、一人ひとりのお子さまとご家族に寄り添った医療を提供しますので、どうぞ安心してご相談ください。
もくじ
はじめに;ネフローゼ症候群とは?
ネフローゼ症候群とは、腎臓の「糸球体(しきゅうたい)」という、血液をろ過して尿を作るフィルター(本来は、タンパクと血球が尿にもれないように機能しています。)に障害が起こり、血液中の大切なタンパク質(特にアルブミン)が尿の中に大量に漏れ出てしまう病気です。その結果、血液中のタンパク質が減少し(低タンパク血症・低アルブミン血症)、血液の浸透圧が低下することで血管の外に水分が漏れ出しやすくなり、体全体の水分バランスが崩れて「むくみ(浮腫)」が生じます。
主な症状
最初の症状は、「まぶたの腫れぼったさ」や「顔全体のむくみ」であることが多いですが、他にも様々な症状が現れることがあります 。
- むくみ(浮腫):
- 顔面:特に朝起きた時にまぶたが腫れぼったい、顔全体がパンパン。
- 下肢:靴が入らない、靴下の跡が残る。指で押すとへこんだまま(圧痕性浮腫)。
- 腹部:お腹に水が溜まる(腹水)、張って苦しい。
- 陰嚢が腫れる。
- 体重の急激な増加:数日間で1~2kg以上
- 尿量の減少、尿の泡立ち
- 全身のだるさ、疲れやすさ、元気がない 。
まれだが、重篤な症状
-
- 呼吸困難:胸に水が溜まる(胸水)
- 腸管浮腫:食欲不振、吐き気、腹痛、下痢。
- 高血圧
- 血栓症:血液が濃縮され固まりやすくなる。
- 急性腎障害・腎機能低下
子どものネフローゼ症候群の原因
子どものネフローゼ症候群は、その原因によって大きく3つに分類されます。
(1) 特発性(一次性)ネフローゼ症候群
子どものネフローゼ症候群の約90%は、はっきりとした原因が特定できないこのタイプです。体の免疫システムが何らかの形で関わっていると考えられています。腎臓の糸球体にある足細胞(ポドサイト)がタンパクを漏らさないための大事な役割を担っているとされているのですが、最近の研究では、足細胞のタンパク質である「ネフリン」に対する自己抗体(抗ネフリン抗体)が一部の患者さんで見つかるなど、免疫学的な機序の解明が進んでいます。
特発性ネフローゼ症候群の中には、主に以下の組織型が含まれます 。
-
- 微小変化型ネフローゼ症候群:子どもの特発性ネフローゼ症候群の中で最も多いタイプで、腎生検(腎臓の組織を調べる検査)をしても、光学顕微鏡では糸球体にほとんど変化が見られないのが特徴です。多くはステロイド治療によく反応し、腎機能予後も良好です 。
- 巣状分節性糸球体硬化症:糸球体の一部が硬化(硬くなること)してしまうタイプで、微小変化型に比べてステロイド治療に反応しにくく、腎機能が低下しやすい傾向があります 。
(2) 二次性(続発性)ネフローゼ症候群
他の病気や薬剤が原因で起こるタイプです。小児で二次性ネフローゼ症候群の原因となる主な疾患には以下のようなものがあります。
-
- 紫斑病性腎炎(IgA血管炎に伴う腎炎)
- ループス腎炎(全身性エリテマトーデスに伴う腎炎)
- IgA腎症
- 膜性腎症
- B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルス、HIVなどのウイルス感染症
- その他、まれに薬剤や悪性腫瘍などが原因となることもあります 。
(3) 先天性ネフローゼ症候群
生まれつき腎臓の糸球体を構成するタンパク質の遺伝子に変異があることなどが原因で、多くは生後早期に発症します。NPHS1(ネフリン遺伝子)、NPHS2(ポドシン遺伝子)、WT1(ウィルムス腫瘍遺伝子1)などが知られています。生後早期からの高度タンパク尿、著しいむくみ、腹水などが見られ、成長発達への影響も大きいです。変異しているタンパク(遺伝子)の種類や、変異の仕方によって、重症度や発症時期は異なります。診断には遺伝子検査が重要となります。治療はステロイドや免疫抑制薬の効果は乏しく、アルブミン補充や栄養管理、腎移植などが検討されます。予後は原因遺伝子や合併症により異なります。
その「むくみ」、本当にネフローゼ?他の病気との鑑別
「むくみ」は、ネフローゼ症候群以外にもいくつかの病気が考えられます。代表的なものとしては、以下の疾患が挙げられます。
- 急性糸球体腎炎:溶連菌感染後などに起こりやすく、血尿、蛋白尿、高血圧、むくみなどが主な症状です。
- 血管性浮腫(クインケ浮腫):じんましんの一種で、まぶたや唇などが急に腫れあがります。
- 心疾患:心臓のポンプ機能が低下すると、体に水分が溜まりやすくなり、むくみ(特に足など下半身)、息切れや疲れやすさなどの症状が出ます 。
- 肝疾患:肝硬変などでアルブミンの合成能力が低下すると、低アルブミン血症となり、むくみ(特に腹水)が出やすくなります。
- 甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンの不足により、全身の代謝が低下し、むくみ(粘液水腫)が出ることがあります。
- 栄養失調:極端なタンパク質摂取不足などにより低アルブミン血症となり、むくみが生じることがあります。
- 薬剤性浮腫:一部の薬剤の副作用としてむくみが現れることがあります。
これらの病気とネフローゼ症候群を見分けるためには、詳しい症状の経過観察と、尿検査や血液検査などの検査が不可欠です。
診断のすすめかた:どんな検査をするのか?
小児ネフローゼ症候群の診断基準
国際小児腎臓病学会(IPNA)のガイドラインによると、小児ネフローゼ症候群は、主に以下の基準に基づいて定義されています。
- 高度タンパク尿:早朝尿の尿タンパク/クレアチニン比(UPCR)が 2.0 g/gCre (200 mg/mmol) 以上または、24時間蓄尿で尿タンパク排泄量が 1000 mg/m²/日 以上 尿試験紙では、おおむね (3+)~(4+) に相当します 。
- 低アルブミン血症:血清アルブミン値が 3.0 g/dL (30 g/L) 未満 。
- 浮腫
これらのうち、1.高度タンパク尿と2.低アルブミン血症を満たして診断となります。血清アルブミン値が不明の場合は1.と3.浮腫で診断します。
主な検査内容
- 尿検査:最も重要な検査です。尿中のタンパク質の量(高度タンパク尿の有無)、血液が混じっていないか(血尿の有無)、尿の濃さなどを調べます 。
- 血液検査:血液中のタンパク質(特にアルブミン)の濃度が低下しているか(低アルブミン血症)、コレステロール値が上昇しているか(高脂血症)、腎臓の機能を示す数値(クレアチニン、BUNなど)、電解質バランス、免疫グロブリンなどを確認します 。
- 腎生検:ステロイド治療に反応しにくい場合(ステロイド抵抗性)、診断を確定するため、あるいは他の腎疾患との鑑別のために、腎臓の組織を少量採取して顕微鏡で詳しく調べる検査です。専門的な医療機関で行われます。
- 画像検査(超音波検査、レントゲン検査など):腎臓の形や大きさに異常がないか、腹水や胸水の有無などを確認することがあります。
- 遺伝子検査:特定の遺伝子異常が原因となるネフローゼ症候群(先天性ネフローゼ症候群など)が疑われる場合に行われることがあります。
子どものネフローゼ症候群の多くはステロイドがすぐによく効く「微小変化型」です。
一方で、「微小変化型」以外の「巣状分節性糸球体硬化症」や「二次性ネフローゼ」は、ステロイドが効きにくかったり、効くのに時間がかかることが多いです。
そのため、診断を確定するために行う腎生検よりも先にステロイド治療を試し、ステロイドの反応性を確認する場合があります。
ステロイド治療の基本方針と副作用・対策について
子どものネフローゼ症候群の治療は、主にステロイド薬による薬物療法と、食事療法を含む生活管理が中心となります。多くの場合、初回の治療は入院して行われます。
治療の主役:ステロイド薬(プレドニゾロン)
治療の基本となるお薬は、副腎皮質ステロイド薬(一般的にはプレドニゾロン)です。ステロイド薬は、腎臓の糸球体での炎症や異常な免疫反応を抑え、尿へのタンパク質の漏出を減らす効果があります。微小変化型の場合、ステロイドは非常に効きやすいとされています。
- 初発時の投与量・期間: 日本小児腎臓病学会の「小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン」では、初発時の治療として、プレドニゾロンを体重1kgあたり2mg/日(または体表面積1m²あたり60mg/日、1日の最大量は60~80mg)を4週間連日経口投与し、その後、隔日投与に切り替えて徐々に減量していく方法などが推奨されています 。治療期間は合計で数ヶ月に及ぶことが一般的です。
- 再発時の投与量・期間: 再発した場合も、基本的にはステロイド薬による治療が再度行われます。投与量や期間は、再発の頻度や重症度、前回の治療への反応などを考慮して決定されます。軽症であれば外来での治療が可能な場合もあります 。
- 期待される効果と寛解について: 多くのお子さん(約80~90%)はステロイド治療によく反応し、治療開始後1~4週間ほどで尿タンパクが消失し、むくみも改善します。この状態を「寛解(かんかい)」といいます。
完全寛解の定義(日本小児腎臓病学会のガイドラインに基づく)
試験紙法で早朝尿の尿蛋白が3日連続して陰性を示す
(または)
尿タンパク/クレアチニン比(UPCR)が 0.2 mg/mgCr 以下を3日連続で示す
治療の目標は、まず完全寛解を目指すことです。
知っておきたいステロイドの副作用と対策
ステロイド薬は効果的な治療薬ですが、長期間高用量で使用すると様々な副作用の可能性があります。
- 易感染性:免疫力が低下し、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなる、または重症化しやすくなる。 対策:手洗いやうがい、人混みを避ける、マスクを着用する、などの感染予防策
- 満月様顔貌(ムーンフェイス)、中心性肥満、食欲亢進:顔が丸くなったり、お腹周りに脂肪がつきやすくなったり、食欲が増したりします。 対策:カロリーの過剰摂取にならないよう、バランスの取れた食事を心がける。野菜やきのこ類など、低カロリーで満腹感が得られる食材を上手に取り入れる。
- 高血圧、高血糖(糖尿病)。 対策:定期的な血圧測定や血糖値のチェック。食事療法(塩分や糖分の制限)。
- 骨粗鬆症:骨がもろくなり、骨折しやすくなる。 対策:カルシウムやビタミンDを多く含む食事を心がける。適度な運動(医師の許可のもと)で骨の健康を保つ。骨粗鬆症の予防薬が処方されたり、骨密度の検査を行うこともあります。
- 成長障害 対策:定期的な成長のモニタリングをおこなう。
- 精神症状:不眠、イライラ、気分の落ち込みなど 対策:十分な休息をとり、ストレスを溜めないような環境づくりを心がけましょう 。
- 眼の合併症:眼圧上昇(緑内障)、白内障 対策:定期的な眼科検診が推奨されます。
- 皮膚線条:急激な体重増加や皮膚の伸展により、お腹や太ももなどに線状の跡が現れる。 対策:急激な体重増加を避けることが予防に繋がります。保湿ケアも有効な場合があります。
- その他:多毛、にきび、消化性潰瘍、副腎不全など 。 気になる症状があれば、早めに医師に相談しましょう。消化性潰瘍の予防のために胃薬が処方されることもあります。
ステロイド治療はネフローゼ症候群の治療に不可欠ですが、副作用への理解と適切な対応が重要です。ご家庭でのケアと医療機関との連携で、副作用を最小限に抑えながら治療を進めていきましょう。
再発を繰り返す場合やステロイドが効きにくい場合に使用される免疫抑制薬について
ネフローゼ症候群は再発しやすい病気であり、また一部のお子さんではステロイド治療が効きにくい場合があります。初回のステロイド治療で約90%のお子さんは寛解しますが、残りの約10%は寛解せずにステロイド抵抗性となります 。
寛解したお子さんのうち、約70~80%が再発を経験すると言われています 。再発のパターンは様々で、以下のように分類されます。
- 非頻回再発型(10-20%):再発はするものの、その頻度が比較的少ないタイプです。全体の約10~20%程度とされています。
- 頻回再発型ネフローゼ症候群(30-50%):ステロイド治療で一度は寛解するものの、再発を頻繁に繰り返すタイプです。日本小児腎臓病学会のガイドラインでは、「初発時から半年以内に2回以上、または任意の1年間に4回以上の再発」と定義されています。ステロイド依存性ネフローゼ症候群はステロイド薬を減量中や中止後すぐに再発を繰り返すタイプで、頻回再発型の一つのパターンです 。
- ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群(10‐20%):標準的なステロイド治療を4週間行っても尿タンパクが消失せず、完全寛解に至らないタイプです。
ネフローゼに用いられる免疫抑制薬
頻回再発型やステロイド抵抗性に対しては、ステロイド薬の長期使用による副作用を軽減したり、寛解導入・維持を目指したりするために、以下のような免疫抑制薬が使用されることがあります。
免疫抑制薬は以下のような有害事象があります。本来の免疫力を下げる薬なので、いずれの薬剤も感染症に注意が必要です。
- シクロスポリン(ネオーラル®など):
- 主な有害事象:腎障害(長期投与による慢性腎毒性を含む)、肝障害、多毛、歯肉肥厚、高血糖、高脂血症、電解質異常(高カリウム血症、低マグネシウム血症)
- 備考:定期的な血液検査(血中濃度測定や腎機能など)が重要です。グレープフルーツジュースとの併用は避ける必要があります 。
- ミゾリビン(ブレディニン®など):
- 主な有害事象:骨髄抑制(白血球減少、貧血、血小板減少など)、肝機能障害、高尿酸血症
- 備考:他の免疫抑制薬に比べれば、安全性は高いです
- シクロホスファミド(エンドキサン®など):
- 主な有害事象:骨髄抑制、出血性膀胱炎、消化器症状(吐き気、嘔吐など)、脱毛、性腺機能抑制(不妊のリスク)、二次性悪性腫瘍(白血病、膀胱がんなど)、心筋障害(高用量の場合)
- 備考:出血性膀胱炎予防のため、十分な水分摂取と頻回の排尿が重要です。長期投与の場合は、性腺への影響や二次がんのリスクがあります。
- ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト®など):
- 主な有害事象:下痢などの消化器症状、骨髄抑制、感染症、催奇形性 。
- 備考:妊娠可能な女性には催奇形性のリスク説明と避妊の徹底が必要です。
- リツキシマブ(リツキサン®など):
- 主な有害事象:Infusion reaction(投与中または投与後24時間以内に起こる発熱、悪寒、頭痛、発疹など)、感染症(B型肝炎ウイルスの再活性化を含む)、進行性多巣性白質脳症(PML:まれだが重篤な脳の感染症)、血球減少。
- 備考:注射薬です。点滴投与中はバイタルサインのモニタリングが重要です。B型肝炎ウイルスのスクリーニング検査が投与前に必要です。PMLの初期症状(麻痺、言語障害、認知機能障害など)に注意が必要です 。
日常生活で気をつけること:3つの時期別ポイント
ネフローゼ症候群の治療中や寛解期には、病状に合わせて日常生活で気をつけるべきポイントが異なります。ここでは、「1.蛋白尿が出ている時期」「2.ステロイド治療中」「3.症状が落ち着いている時期」の3つの時期に分けて解説します。
1.蛋白尿が出ている時期(急性期・再発時)の過ごし方
この時期は、むくみや倦怠感などの症状が強く現れやすいため、体調管理が特に重要です。
- 食事:
- 塩分制限:むくみを悪化させないために、塩分を控えた食事が基本です。1日の塩分摂取量の目安は医師や管理栄養士の指示に従いましょう。加工食品や外食は塩分が多い傾向にあるため注意が必要です。
- 水分摂取:むくみが非常に強い場合には、医師の指示により水分摂取量を制限することもありますが、自己判断での過度な水分制限は脱水を引き起こす可能性もあるため避けましょう。
- タンパク質:昔と比べ、現在は過度な制限はしないことが多いです。医師や管理栄養士の指示に従い、良質なタンパク質を適量摂取しましょう。
- 安静と運動: むくみが強い急性期は安静が必要ですが、症状が落ち着いてくれば過度な安静は不要です。むしろ、長期間の寝たきりは血栓症のリスクを高める可能性もあるため、医師と相談しながら少しずつ活動量を増やしていくことが大切です。
- 感染予防: 手洗いやうがいを徹底し、人混みを避けるなど、感染予防策を厳重に行いましょう。インフルエンザや水痘が大流行している時期だけ学校をお休みするのも対策の一つです。
- 家庭でのチェック項目: 医師の指示に従い、家庭で毎日尿検査(試験紙で尿タンパクをチェック)と体重測定を行い、記録しましょう。蛋白尿の悪化による、急激な体重増加、浮腫の悪化、尿量低下、倦怠感などの症状に注意が必要です。
2.ステロイド治療中の過ごし方
蛋白尿が消失し寛解した後も一定期間はステロイドを飲み続けなければいけません。ステロイド内服中は、薬の効果を最大限に引き出しつつ、副作用を最小限に抑えるための工夫が必要です。
- 食事:ステロイドの副作用で食欲が増すことがあります。食べ過ぎによる急激な体重増加を防ぐため、食事の量や内容を工夫しましょう。低カロリーで満腹感が得られる野菜やきのこ類を多く取り入れたり、よく噛んでゆっくり食べることを心がけたりするのも良いでしょう。高血圧や高血糖のリスクがあるため、塩分や糖分の摂りすぎにも注意が必要です。医師や管理栄養士の指導を受けましょう。
- 運動: 体調が安定していれば適度な運動は可能です。激しい運動やコンタクトスポーツは、事前に主治医に相談しましょう。
- 感染予防: ステロイド治療中は免疫力が低下しているため、引き続き感染予防策を徹底することが非常に重要です。
- 予防接種: ステロイド治療中(特に高用量投与中)は、生ワクチンの接種は原則として避けます。不活化ワクチンについても、接種のタイミングや可否は、ステロイドの投与量や病状を考慮して主治医が判断しますので、必ず相談してください。免疫抑制薬を使用している場合も同様に注意が必要です。
3.症状が落ち着いている時期(寛解期)の過ごし方
ステロイド内服が終了し、寛解を維持している期間です。再発を予防し、健やかな学校生活や日常生活を送るための大切な時期です。
- 食事: 基本的に食事制限はありません。成長期に必要な栄養をバランス良く摂取することを心がけましょう。
- 運動: 基本的に運動制限はありません。むしろ、適度な運動は体力維持、ストレス解消、骨の健康に繋がるため推奨されます。学校の体育や部活動への参加も、主治医と相談の上で可能です。
- 感染予防: 寛解期であっても、感染症は再発の引き金になることがあります。手洗い、うがい、十分な睡眠、バランスの取れた食事など、基本的な感染予防策を続けましょう。
医師の指示通りに定期的に通院しつつ、家庭での定期的な尿タンパクチェックや体重測定も継続しましょう。
よくある質問
“Q1: ネフローゼ症候群は治りますか?”,
“A1: 多くの子ども(特にステロイド感受性ネフローゼ症候群の場合)は、適切な治療により症状が改善し、寛解に至ります。しかし、ネフローゼ症候群は再発しやすい病気であり、約7割のお子さんが再発を経験すると言われています。幼少期や学童期に多く再発していたとしても、思春期、青年期と時間がたつごとに再発回数は減っていきます。根気強く病気と付き合い、継続的な管理を行っていくことが大切です。ステロイド抵抗性の場合や、特定の腎臓の組織型の場合は、将来的に腎機能が低下するリスクもあるため、専門医による長期的なフォローアップが不可欠です。”
“Q2: 学校や保育園に通っても大丈夫ですか?”, ”
“A2: 症状が安定している寛解期であれば、基本的には通常の学校生活や保育園生活を送ることが可能です。ただし、主治医の指示に従い、学校や園の先生とも情報を共有し、無理のない範囲で活動することが大切です。むくみが強い時期や、高用量のステロイド治療中で感染リスクが高い時期などは、登園・登校を控える必要がある場合もあります。運動や給食(塩分調整など)に関しても、病状に応じて配慮が必要になることがあるため、定期的な受診の際に具体的に相談し、必要であれば学校生活管理指導表などを活用しましょう
“Q3: ネフローゼ症候群の治療でステロイドを使うと聞きましたが、副作用が心配です。どのような配慮がありますか?”,
“A3: ステロイドはネフローゼ症候群の治療に非常に効果的なお薬ですが、副作用のご心配はよく分かります。医師は、お子さんの状態に合わせてステロイドの投与量や期間を慎重に決定し、副作用を最小限に抑えるよう努めます。例えば、初期治療では効果を確実にするために連日投与を行いますが、寛解すれば隔日投与(1日おきの服用)に切り替えることで、副作用の軽減を図ります 。また、本記事の「知っておきたいステロイドの副作用と対策」で解説したように、それぞれの副作用に対する具体的な対策(感染予防、食事管理、血圧測定、眼科受診など)をきちんと行うことで、ステロイドは比較的安全に使用できるお薬です。
万が一、副作用が強く出てしまった場合には、免疫抑制薬の併用や調整を行うことで、ステロイドの減量や中止を目指すことも可能です。治療方針や副作用について不安な点や疑問点は、遠慮なく医師にご相談ください。一緒に乗り越えていきましょう。”
おわりに(保護者の皆さまへ)
お子さんの体のむくみというサインから、ネフローゼ症候群について、原因、症状、診断、治療、そして日常生活での注意点まで詳しく解説してきました。この病気は、適切な治療、そして何よりもご家庭での根気強い日々のケアと観察が大切です。
診断を受け止め、日々の看病や食事管理、定期的な通院を続けることは、保護者の皆さまにとって大きなご負担や不安が伴うことと思います。特に、ステロイド治療の副作用や再発への心配は尽きないかもしれません。
ベスタこどもとアレルギーのクリニックは、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、お子さん一人ひとりの個性とご家族の状況に合わせた、温かい医療を提供してまいります 。もしお子さんの症状でご心配なこと、ネフローゼ症候群についてもっと詳しく聞きたいことがあれば、どうぞお気軽に当クリニック腎・夜尿外来にご相談ください。専門医がお話を伺い、最適なサポートをさせていただきます。
練馬区中村橋駅すぐの場所で365日診療を行っており、西武線沿線、特に練馬区 、中野区 、杉並区 、西東京市 、板橋区 、武蔵野市 の皆さまにとって、身近で頼れる存在でありたいと願っています。
関連リンク
腎臓専門外来の案内:https://www.besta-kids.jp/special-outpatient/#link03
検尿異常:https://www.besta-kids.jp/2025/05/09/1745/
肉眼的血尿:https://www.besta-kids.jp/2025/05/02/1687/
ネフローゼ症候群:https://www.besta-kids.jp/2025/05/24/1852/
慢性糸球体腎炎:https://www.besta-kids.jp/2025/09/01/2649/
溶連菌感染後急性糸球体腎炎:https://www.besta-kids.jp/2025/08/28/2574/
尿路感染症:https://www.besta-kids.jp/2025/05/02/1666/
包茎:https://www.besta-kids.jp/2025/05/16/1823/
夜尿:https://www.besta-kids.jp/2025/05/16/1773/
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出典
- 日本小児腎臓病学会. 小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン2020.
- 日本小児腎臓病学会. 小児腎臓病学 改訂第3版.
医療上の免責事項 本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の症状や状況に応じた医学的な診断・治療を代替するものではありません。お子さまの症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指示に従ってください。
監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医

初めまして。
当院のホームページをご覧くださりありがとうございます。
私は小児科の中でも特にアレルギーと呼吸器を専門にしていますが、赤ちゃんの体重が増えない、おねしょが無くならない、ニキビが気になる、便秘気味など少しでも心配なことや不安に感じることがあれば、何でもご相談していただければと思います。
こどもたちがなるべく制限を受けることなく笑顔で日々を過ごし、自分らしく元気に成長できるよう、ご家族の不安を取り除けるよう、「優しさ」を持ったクリニックを目指して、地域の子育てに貢献できるよう頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
