トピックス
学校の検尿で引っかかったらどうする?
この記事を監修した医師

小児科専門医/院長
濵野 翔
学校の尿検査で引っかかった!
「蛋白尿」や「潜血」の異常といわれた!
学校の検尿で異常を指摘されたとしても、深刻な病気ではない場合がほとんどですが、早期対応が必要な腎臓の病気が潜んでいることもあります。
この記事では、お子さんの尿検査で蛋白尿・潜血と言われたときの原因や経過、検査・治療の流れについて解説します。
もくじ
はじめに(学校検診と尿検査の背景)

学校では毎年「尿検査」が実施されます。この学校腎臓病検診(検尿)は、日本では1974年から導入されました。
腎臓の病気はかなり進行するまで自覚症状が出にくく、症状が出た時には腎機能が元に戻らなくなっていることも少なくありません。
尿検査によるスクリーニングにより、症状のない早期のうちに異常を見つけて治療につなげることで、将来の腎不全を減らす効果も報告されています。
学校検尿に引っかかる人ってどのくらいいるの?
2014年の学校検尿全国調査によれば、血尿および蛋白尿の陽性率は以下のとおりです。
血尿:潜血(1+)を判定基準とした場合、小学生の0.77% 中学生の2.23% 高校生の2.09%が1回目の尿検査で陽性となります。
タンパク尿:蛋白(1+)を判定基準とした場合、小学生の0.56% 中学生の1.74% 高校生の2.12%が1回目の尿検査で陽性となります。
多くは問題ないケースです。(いわゆる「経過観察」でよい)
血尿もしくは蛋白尿などが続けてみられていた場合、三次検査を経て、精密検査を受ける(近隣の病院やクリニックへ誘導される)ことになりますが、多くの方は病気は見つからず、「経過観察」となります。
その後の経過観察でも血尿や蛋白尿が改善する、もしくは悪化せずに経過し、「大丈夫。問題ないでしょう。」とされるパターンがほとんどです。
しかし、血尿や蛋白尿が悪化して、あとから病気だとわかる場合もあります。
よくある症状と経過

ここでは、よくある症状、もしくは病気について解説していきます。
無症候性血尿
学校の尿検査で潜血尿を指摘されても、お子さん自身に目立った症状がなく、精密な検査をしても、血尿以外に異常がない場合、”無症候性血尿”として経過をみることになります。
潜血(血尿)で引っかかった場合、このような”無症候性血尿”のケースの頻度が最も高いです。
再検査で正常に戻ることもある、尿が濃いだけで蛋白が陽性になることもある
「一時的な異常」でその後正常に戻るケースもあります。
例えば激しい運動をした直後や発熱・脱水のときには、一過性に尿に蛋白や血液が混じることがあります。
尿が濃いだけで蛋白が陽性となることもあり、詳細な検査(尿タンパク/クレアチニン比)をすれば異常のないことがわかります。
これらもあまり心配しなくてよく、よくあるケースの一つです。
家族性血尿
子どもだけでなく、「うちは母も祖母もいつも血尿で引っかかるんです。」などとおっしゃられるご家族はよくいます。
ご家族の状況を伺うと、「血尿はよく引っかかるけど、蛋白尿はなくて、血液検査をしても腎機能は大丈夫で、高齢になっても特に問題ないです。」と、おっしゃられるパターンがほとんどです。
そのような家系で、お子さんも血尿の程度が軽い場合は、将来的な腎機能は大丈夫な可能性が非常に高いです。
一方、透析をしていたり、腎不全と言われている方が親族にいる場合は要注意です。腎予後の悪い遺伝性疾患もあります。
例えば、アルポート症候群という遺伝性腎炎では、糸球体のフィルター部分を構成する基底膜のコラーゲン繊維が脆くなっていて、そこから血尿が漏れやすいことが知られていて、腎臓の予後が悪い場合もあります。
体質的なこともある
血尿が出やすい体質について、はっきりと解明されているわけではないのですが、家族歴がなくても「しょっちゅう血尿で引っかかる」、という方も沢山います。
血尿が軽度である場合、将来的な腎機能は問題ない可能性が高いです。
さきほど説明した「無症候性血尿」の方のほとんどが、このような体質に関わるものと推察されます。
起立性蛋白尿(体位性蛋白尿)
思春期の小学生高学年~中学生の痩せ型のお子さんでは起立性蛋白尿(体位性蛋白尿)がよくみられます。
身長がよく伸びてくる時期にもみられやすいです。
これは日中の活動時にだけ尿蛋白が出現する現象で、朝起きてすぐの尿には蛋白が出ないのが特徴です。
腎臓の働きや将来の腎機能への影響はないと考えられており、基本的に治療の必要はありません。
起立性蛋白尿の確認のため、夜間の尿と昼間の尿を分けて検査を行うこともあります。
慢性糸球体腎炎
蛋白尿や一定以上の強い血尿が続く場合は注意が必要です。
その場合もお子さんは元気で症状がないことが多いですが、腎臓の疾患が潜んでいる可能性があります。
血尿蛋白尿の原因で重要なのは、糸球体腎炎という腎臓内部のフィルター部分の炎症です。
代表的な慢性糸球体腎炎であるIgA腎症などは、風邪のたびに尿が紅茶のような色になるといったエピソードがみられることがありますが、顕微鏡的血尿のみの場合は気づかれず進行することもあります。
このような病的な場合でも早期発見・治療介入によって腎機能の悪化を防ぐことができます。
腎臓で尿がつくられるメカニズムを知ろう。
腎臓の糸球体というところで尿がろ過されるメカニズムを知れば、『軽い血尿だから、あまり問題なさそうだな。』、『血尿と蛋白尿がしっかり出ているから糸球体のダメージが心配だ。ちゃんと検査しないといけない。』といったように、より適切な判断ができるようになります。

上の図のように、心臓から大動脈、腎動脈を通り、腎臓に入ってきた血液は分岐していき、「糸球体(しきゅうたい)」という毛細血管の集まりに送られます。 糸球体では、毛細血管の中の血液から水分などが、血管の外(=ボウマン腔)へ出ていき、尿の元がつくられます。ここで作られた尿の元(=原尿)は、尿細管・集合管というところを通過する際に必要なものが再吸収され、最終的に不要となったものだけが腎臓の中央に集まり、尿管、膀胱、尿道を通り、尿として体の外へ出ていきます。

この糸球体の毛細血管の壁は3層構造(内皮細胞、基底膜、上皮細胞)のフィルターになっており、老廃物などは通過しますが、血液やタンパク質などの大切なものは通過できず、血管の外へ漏らさないような仕組みになっています。
軽度の血尿であれば、あまり心配しなくいい理由
フィルターがいかに精巧とはいえ、血液中には多量の赤血球とタンパクが含まれていて、血液から尿が生成される過程で多少の赤血球やタンパクが尿中にすり抜けるのは当然のことであり、正常の尿にもわずかな赤血球やタンパクは存在しています。
血尿の検査は、尿を顕微鏡でみて、一定の視野のなかに何個赤血球があったかで判断します。視野の中に5個以上が”血尿”と定義されており、およその分類ですが、1-4個は正常、5-20個は軽度、20‐50個は中等度、50個以上は高度血尿です。
赤血球が3個ぐらい漏れる人(=正常)と、赤血球が7個ぐらい漏れる人(=軽度血尿)では、大した差がないことが理解できると思います。
しかし、血尿がたくさん出ていて、かつタンパク尿もたくさん出ているとなれば、『糸球体フィルターが破壊されているのではないか?大丈夫か?』となりますよね?
糸球体を『家』で例えるなら、軽度の血尿は、「ドアや窓の建付けが悪くて、部屋の空気が少し外にもれやすい」程度の状態ですが、大量の血尿蛋白尿は「家の壁が誰かによって破壊されている」ような状態です。前者と後者では、状況の深刻さはだいぶ違いますよね?
自宅で採尿する時の注意点

学校で尿検査の異常(蛋白尿・潜血など)を指摘された場合、もう一度自宅で早朝第一尿を採取して提出する流れになっていることがほとんどです。
きちんと採尿しないと正確な結果にならないことがあります。以下の点に注意しましょう。
- 前日は激しい運動を避け、検査当日の早朝起床時の尿を採る。(前夜、寝る前に排尿したらベッドへ直行してください。朝起きたらすぐトイレへ向かい、採尿します。この方法で、安静時尿が適切に採取できます。)。
- 前日の夜はビタミンC(アスコルビン酸)を多く含む食品やサプリの摂取を控える(偽陰性防止)。
- 採尿時はできれば中間尿を清潔な容器に採る。最初と最後は捨て、途中の尿を採取することで雑菌や不要な混入を減らします。
- 採った尿はフタをしっかり閉め、提出まで冷暗所に保管して速やかに検査に出す(時間経過で結果が変化するのを防ぐ)
医療機関では何を調べる?

自治体により学校検尿のシステムは多少異なりますが、再検査で「蛋白尿・潜血」が続く場合は、近隣の病院やクリニックへ案内されると思います。指示に従い、医療機関を受診しましょう。
まず行う検査
血圧測定
高血圧がないかどうか、確認します。
尿検査
尿試験紙法は潜血(ヘモグロビン)やタンパクの濃度に応じて反応する試験紙を用いたスクリーニングです。尿沈渣検査では赤血球の数や形態を調べます。タンパク尿を定量的に検査します(尿蛋白/クレアチニン比)。
血液検査
腎臓の働きを示す数値(クレアチニンや尿素窒素)、炎症の有無、免疫異常の有無などを調べます。
腹部エコー検査(超音波検査)
形態的な異常(先天的な腎奇形や結石など)がないかを確認します。
表1に検尿異常の主な精密検査と基準値の目安をまとめました。
さらに詳しい評価のための検査
腎生検
持続する血尿に加えて蛋白尿も出現している場合など、腎臓の組織検査が必要と考えられるケースでは腎生検を行うことがあります。
腎生検では入院の上、背中から針を刺して腎臓の一部の組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べます。
これは糸球体腎炎の確定診断や重症度の評価に不可欠な検査です。
血尿のみで蛋白尿が伴わないうちは腎生検までは行わないのが通常ですが、蛋白尿の持続が確認された場合には検討されます。
眼底検査
腎炎の種類によっては網膜にも変化が出るため、行う場合があります。
遺伝子検査
遺伝性腎炎(Alport症候群)やDent病など、遺伝子検査で診断を行う疾患もあります
経過観察となった場合

検査の結果、特に大きな異常がない場合は、多くは定期的な経過観察となります。
例えば血尿だけの場合(いわゆる無症候性血尿と言われる状態)では、基本的に治療はせずに定期的(例えば、2-3ヶ月おきに)に尿検査を行って様子を見るのが一般的です。
様子を見て、本当に大丈夫なのか?
お医者さんから“血尿だけなので様子をみていきましょう。”と言われても、「このまま腎機能が少しずつ悪くなったりしないのか?」、「問題ないなら受診しなくてもいいのではないか?」、「結局、今後どうなっていく可能性が高いのだろう?」と、色々と気になると思います。
千葉市で行われた14年間の学校検尿の経過観察では、無症候性血尿の約85%の症例で尿所見が正常化し、12%の症例で血尿が持続、3%の症例で腎炎(主にIgA腎症)に移行したという報告があります。
参照リンク: 宇田川淳子, 倉山英昭, 松村千恵子, 秋草文四郎: 臨床所見から見た小児腎生検の適応について. 千葉医学雑誌, 72: 113-119, 1996.
このように多くは問題のない経過をたどるため、過度な心配は不要です。
また、血尿だけが続いている場合、腎臓の働きが悪化していくことは通常ないとされています。
しかし、定期的に尿検査をしていると、血尿が悪化したり、蛋白尿が新たに出てきたり、腎炎としての症状が徐々に表れてくるような場合もあります。適切にフォローしていくことが大切です。
学校検尿で見つかることがある病気について

病気が見つかった場合は、その病気に応じた専門的治療を開始します。
見つかる可能性のある疾患については以下の通りです。
慢性糸球体腎炎(IgA腎症など)
尿検査で血尿・蛋白尿が持続し、腎生検で確定診断された場合、進行抑制のための治療を行います。
食事療法(減塩やタンパク質制限)や薬物療法(尿蛋白を減らすACE阻害薬・ARBといった降圧薬、ステロイドや免疫抑制剤の投与など)が検討されます。
IgA腎症では扁桃摘出とステロイドパルス療法を併用する治療法も行われています。
以下リンクも参照ください。
ネフローゼ症候群
尿蛋白が大量に出て体にむくみが現れる病気です。小児では微小変化型ネフローゼが多く、腎生検の前に副腎皮質ステロイドによる治療を開始して、治療の反応性をみる場合もあります。
ステロイドに反応すれば尿蛋白は陰性化し、むくみも取れます。再発することもあるので長期の経過観察が必要です。
以下リンクも参照ください。
急性糸球体腎炎
溶連菌感染後急性腎炎など、急に血尿やむくみ、高血圧が出現するタイプです。
入院の上で安静確保と食事療法(減塩)、必要に応じ降圧薬や利尿薬の投与などを行います。
多くは数週間~数ヶ月で尿所見が改善し治癒します。
以下リンクも参照ください。
溶連菌感染の後、どうして尿検査をみるの? 急性糸球体腎炎について
その他
遺伝性腎炎(Alport症候群)、尿路感染症、尿路結石、先天性腎尿路異常(水腎症、嚢胞性腎疾患、腎低形成腎・腎異形成)、悪性腫瘍などさまざまな病気が見つかる場合があります。以下リンクもご参照ください。
子どもでも尿路結石ができるの!?突然の腹痛や血尿、疑うべき原因は?
予防と生活の工夫

腎炎やネフローゼ症候群やその他多くの病気の発症を日常生活の工夫で防げるわけではありません。
ですが、生活習慣の改善は腎臓への負担を減らし、お子さんの将来の健康にもつながります。
バランスの良い食事
塩分の摂りすぎは腎臓に負担をかけ、将来の高血圧の原因ともなります。育ち盛りのお子さんで制限する必要はありませんが、高塩分食やスナック菓子やジャンクフードは控えめにしましょう。偏った食事は避け、野菜や果物も含めたバランスの良い食事を意識してください。将来的な生活習慣病予防にもつながります。ただし腎臓疾患によっては、塩分や水分をたくさん必要とする病気の方もいれば、反対に水分や塩分、タンパクの摂取を制限しなければいけない状態の方もいます。血尿だけで他に異常のない方はよいですが、腎臓疾患を指摘されている方は主治医の指示に従ってください。
感染症の予防と早期治療
溶連菌感染後の腎炎など、感染症が引き金で腎臓に影響が出ることがあります。普段から手洗い・うがいの徹底や適切なワクチン接種で感染予防に努めましょう。のどの痛みや発熱があるときは早めに受診し、溶連菌感染症と診断された場合は抗生剤を適切に飲み切ることが大事です。尿路感染症を防ぐにはトイレを我慢しすぎない習慣や、特に女の子の場合はおしりの拭き取り方など清潔も心がけてください。
おわりに(保護者の皆様へ)

お子さんの尿検査異常(蛋白尿・潜血)は、最初は誰でも心配になるものです。しかし、慌てずに正しいステップを踏めば、多くの場合は大事に至らずに済みます。まずは学校の指示どおり再検査を受け、その結果に応じて小児科で必要な検査・治療を受けましょう。早期に対応すれば、たとえ腎臓の病気が見つかった場合でも適切にケアすることができます。
当院(ベスタこどもとアレルギーのクリニック)でも、学校検尿で異常を指摘されたお子さんの診察を受け付けています。腎夜尿症外来で、血尿蛋白尿についての詳しい検査(血液検査、尿検査、超音波検査)を行うことが可能です。
関連リンク
腎臓専門外来の案内:https://www.besta-kids.jp/special-outpatient/#link03
検尿異常:https://www.besta-kids.jp/2025/05/09/1745/
肉眼的血尿:https://www.besta-kids.jp/2025/05/02/1687/
ネフローゼ症候群:https://www.besta-kids.jp/2025/05/24/1852/
慢性糸球体腎炎:https://www.besta-kids.jp/2025/09/01/2649/
溶連菌感染後急性糸球体腎炎:https://www.besta-kids.jp/2025/08/28/2574/
尿路感染症:https://www.besta-kids.jp/2025/05/02/1666/
包茎:https://www.besta-kids.jp/2025/05/16/1823/
夜尿:https://www.besta-kids.jp/2025/05/16/1773/
当院の公式LINEアカウントでは子どもの健康に役立つ情報を発信していますので、ぜひともLINE登録もお願いいたします。お子さんの健やかな成長を一緒に支えていきましょう!

QRコードでLINEの友だちを追加
LINEアプリの友だちタブを開き、画面右上にある友だち追加ボタン>[QRコード]を
タップして、コードリーダーでスキャンしてください。
医療上の免責事項 本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の症状や状況に応じた医学的な診断・治療を代替するものではありません。お子さまの症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指示に従ってください。
表1:学校検尿異常の主な精密検査と基準値の目安

この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
