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子どもの夜尿症について【ベスタの小児科医が解説】
子どもの夜尿症(やにょうしょう)について知っておきたいポイント
おねしょが続いて心配。おねしょはいつまで続くの?おねしょは、ご家族だけではなく、こども達の悩みでもあります。この記事では、小児科専門医が夜尿症の基礎知識から正しいケア方法までを丁寧に解説。ベスタこどもとアレルギーのクリニックでは、科学的根拠と専門医(小児科・アレルギー科)監修による信頼性の高い情報提供を心がけています。 当クリニックは、西武池袋線「中村橋駅」から徒歩1分とアクセスしやすく、練馬区、中野区、杉並区、西東京市など西武線沿線にお住まいの多くの保護者の皆様にご利用いただいております。アレルギー専門外来やおねしょ(夜尿症)外来といった専門的な診療に加え、365日診療体制で、急な体調変化にも対応できる点が強みです。 当院の理念「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」に基づき、お子様一人ひとりの状況と保護者の方のお気持ちに寄り添った医療を提供いたします。
もくじ
夜尿症とは?
夜尿症(やにょうしょう)とは、5歳以上で夜間に月1回以上のおねしょがあり、それが3ヶ月以上続く状態を指します。大半は一次性夜尿症(乳幼児期から継続するタイプ)で、これは成長に伴い自然に改善する典型的なおねしょです。一方、いったんおねしょが止まって6ヶ月以上夜尿症がない時期があった後に再発した場合は二次性夜尿症と呼ばれ、精神的ストレスなど何らかの要因が背景にある可能性があります。また、夜間の寝ている間だけ尿失禁が起こるものを単一症候性夜尿症(典型的なおねしょ)といい、これに対し昼間の頻尿や尿漏れ等を伴う場合は非単一症候性夜尿症といいます。後者では泌尿器系の問題が関連している可能性もあるため小児科や泌尿器科での相談が勧められます。また、尿量が多すぎる場合も糖尿病や尿崩症などの病気が隠れている可能性があります。
夜尿症の主な原因
お子さんのおねしょは、決して親御さんのしつけやお子さんの性格のせいではありません。夜間の尿量や膀胱の容量、睡眠の深さなど複数の要因が関与します。具体的には、膀胱が十分に尿を溜められないうちに容量一杯になってしまうこと、就寝中に作られる尿の量を抑える抗利尿ホルモン(ADH)の分泌リズムが未熟で夜間の尿量が多くなること、膀胱がいっぱいになったことに本人が気づいて起きることができないこと(睡眠中の覚醒障害)などが原因と考えられています。これらの体質的要因に加え、夕方以降の過度な水分摂取や就寝前にトイレに行かない、塩分の摂りすぎなど生活習慣上の問題があると、さらにおねしょをしやすくなります。また、環境の変化や心理的ストレスが引き金となって夜尿が出現するケースもあります。
夜尿症と便秘の関係
実は便秘と夜尿症には深い関係があります。夜尿症のあるお子さんは、ないお子さんに比べて便秘を伴う割合が約5倍と非常に高いことがわかっています。大腸に便が溜まっていると膀胱が圧迫されて容量が減ってしまい、おねしょを誘発しやすくなります。そのため、便秘が見られる場合はまず便秘の治療を優先します。実際、便秘の治療を1年間続けたところ、半数以上で夜尿症も改善したとの報告があります。お子さんに便秘傾向がある場合は、ぜひ便通の改善に取り組んでください。
なぜ規則正しい生活が大事なのか?
規則正しい生活は夜間尿量を減らし、良好な睡眠を得るためにとても大切です。通常、夜間には尿の量を減らすホルモン(抗利尿ホルモン)が増えるのですが、不規則な生活ではこのホルモンのリズムが乱れ、夜間の尿量が増えてしまいます。寝る時間や起きる時間が一定になれば良質な睡眠が得られやすくなり、膀胱からの刺激に対して目が覚めやすくなります。また、規則正しい食事や排便習慣は便秘の予防・改善にもつながります。
治療① (生活習慣の改善と夜尿日誌)
夜尿症の治療では、まず生活習慣の見直しを行います。
*夕食後から就寝前までの水分摂取はコップ1杯程度に控える。(就寝前の1-2時間は飲水を控える。)
*塩分の多い食事を控えめにする。
*就寝前には必ずトイレに行き、膀胱を空にしておく。
*規則正しい生活を心がける。
*寝冷えしないようにお腹や体を暖かくして寝る。
*夜中に無理に起こしてトイレに連れて行かない。
こうした生活改善だけでも、約20~30%のお子さんは症状の改善がみられると報告されています。ご家庭では「夜尿日誌」(おねしょをした日やその量などを記録するノート)をつけてみましょう。日誌をつけることは、治療効果の判定や今後の方針決定に役立ちます。うまくできた日には、お子さんご自身にシールを貼ってもらうのも効果的です。
治療② (薬物療法の役割と適応)
生活習慣の改善だけで十分な効果が得られない場合、薬による治療も選択肢となります。代表的な薬にデスモプレシン(抗利尿ホルモン製剤)があり、夜間の尿量を減らす作用があります。使用時は医師の指示に従い、水分制限を守ることが重要です。センサーをパンツにつけて、夜尿があった直後にアラームで本人に知らせる治療(アラーム療法)もデスモプレシンと並んで最初の選択肢となる治療です。薬物治療を行う際も、「夜尿日誌」で効果を確認しながら適切な量を調整していきます。
治療③ (心理的アプローチと本人の参加)
夜尿症の克服には、お子さん本人の前向きな参加と家庭での温かいサポートが不可欠です。治療にあたっては「起こさない、焦らない、怒らない、ほめる、比べない」という5つの原則がよく紹介されます。おねしょは本人の意思でコントロールできるものではないため、叱ったり他の兄弟や友人と比較したりすることは逆効果です。それよりも、うまくいった日にはしっかり褒めて自信と意欲を持たせてあげることが大切です。夜尿症で困っている子どもたちは「おねしょをしないようになりたい」という思いから勇気を出して受診しています。その気持ちを尊重し、親子二人三脚で取り組む姿勢が治療効果を高めます。お子さんご自身がシールを貼ったり、記録したりすることも重要で、認知療法に似た効果があります。
宿泊行事への対策
修学旅行やお泊まり会などの宿泊行事は、夜尿症のお子さんや保護者にとって心配の種になりますが、いくつかの工夫で安心して参加することができます。事前に(理想的には行事の約6週間以上前から)生活習慣の改善や必要に応じた対策を始めておきましょう。当日は夕食~就寝前の水分摂取を普段以上に控え、寝る前には必ずトイレを済ませましょう。担任の先生に事情を相談し、深夜に一度そっと起こしてトイレに連れて行ってもらう、朝は他の子より先に様子を見てもらい万一失敗していてもさりげなく着替えを手伝ってもらう、といった配慮をお願いしておくと安心です。お泊まり中は濃い色のパジャマを着せたり、吸収パッドを仕込んだ専用パンツ(市販の失禁パッドを普通の下着に縫い付ける等)を履かせたりして、万一漏れても目立たない工夫もできます。必要であれば主治医に相談し、デスモプレシンなどの薬を一時的に使用することも検討しましょう。その場合、事前に数週間試して効果を確認し、当日も忘れず持参することが大切です。これらの準備をしておけば、お子さんも過度に緊張せず宿泊行事に参加できるはずです。おねしょがあるからと行事への参加をあきらめず、医師や学校とも連携してサポートしていきましょう。
参考文献
日本夜尿症学会 編. 夜尿症診療ガイドライン2021. 診断と治療社 2021.
金子一成. 小児科医が知っておきたい夜尿症のみかた. 南山堂. 2018.
医療上の免責事項 本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の症状や状況に応じた医学的な診断・治療を代替するものではありません。お子さまの症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指示に従ってください。
監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
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