食物アレルギー
食物アレルギーについて
食物アレルギーの診療では色々な情報を整理する必要があります。「血液検査の数字だけを見て、数値が高いからアレルギーだね」とか「数値が高いから除去しましょう、大きくなったら少しずつ始めてみてください」という診療では症状は良くなりにくいですし、お父さん、お母さんも困ってしまうと思います。
当院ではお子さんのこれまでの病歴や他のアレルギー疾患のコントロール状況、生活環境、原因食品の種類など、色々な要素を勘案して、お子さんに合った具体的な治療方針をお話ししたいと思っています。「食物負荷試験が必要かどうか」や「どんな加工品でどんな量なら食べられるのか」、「症状がでた場合はどうやって対応すれば良いか」などです。初診時は詳しくお話しを聞かせていただいた上で、検査を行い、今後の方針をお話しするため長めの時間が必要になります。食物アレルギーについて初めて受診する方は、なるべくアレルギー外来(初診)の予約をお願いいたします。
即時型食物アレルギー
最も一般的な食物アレルギーです。原因食物を食べた後、2時間以内に症状が出現します。症状は皮膚症状(じんましん、発赤)、呼吸器症状(咳、鼻汁、ゼイゼイ)、消化器症状(嘔吐、腹痛、下痢)、神経症状(意識障害)、循環器症状(血圧低下)など多岐にわたります。即時型症状の中でも重篤なものをアナフィラキシーと言います。血液検査で測定するIgE抗体が、原因のタンパク質とくっつくとヒスタミンという物質が出てきて、このヒスタミンが悪さをして色々なアレルギー症状が出てきます。花粉症などで処方される抗ヒスタミン薬(アレジオンとかザイザルとかアレロックとか)はこのヒスタミンをブロックすることでアレルギー症状を軽快させます。
食物アレルギーでは症状が出た際の「食べた物・形態」、「量」、「食べてから症状が出るまでの時間」、「出現した症状」、「どれくらいで症状が良くなったか」が大事な情報になります。アレルギー外来受診時はこの情報をまとめていただけていると大変助かります。
即時型食物アレルギーの検査
血液検査
■非特異的IgE抗体
全てのIgE抗体をひっくるめてどれ位あるかを見ています。どの程度のアレルギー体質かを測定しているイメージです。年齢によって正常値が異なります。
■特異的IgE抗体
それぞれの抗原(ダニ、卵白、杉、小麦など)に対するIgE抗体がどれ位あるかを見ています。特異的IgE抗体が高くても症状が出ないことや、逆に特異的IgE抗体がなくても症状が出ることがあるので、結果の解釈は難しいです。問診で症状の出現の仕方などを詳しく聞いて、総合的に判断します。
また最近は小麦(ω5グリアジン)、ピーナッツ(Ara h 2)、クルミ(Jug r 1)、カシューナッツ(Ana o 3)、大豆(Gly m 4)など、より精度が高いと言われるコンポーネントの特異的IgE抗体も測定することが多いです。下記のView39ではコンポーネントの測定ができないため、食物アレルギーで検査を行う場合は特異的IgE抗体価を測定する方が良いです。
■View39
アレルギーのスクリーニング検査として行われることがあります。1回の血液検査で色々な項目を測定できることがメリットですが、正確性にやや欠けることがあり、実際の症状と合わせて結果を解釈する必要があります。View39で陽性であった項目に必ずアレルギーがあるとは限らないことを認識して検査を行う必要があります。
■ドロップスクリーン
微量な血液で食物抗原22項目、吸入抗原19項目に対して網羅的にスクリーニング検査を行うことができる機械です。View39と同様に1回の検査で多項目を測定できることがメリットですが、コンポーネントを測定することができないことがデメリットになります。非特異的IgE抗体は測定できず、結果の解釈が困難であり、不必要な食物除去や環境整備が必要になる可能性が高いため、当院では行っておりません。
プリックテスト
爪楊枝のようなもので、直接皮膚に原因と思われる食物タンパクをくっつける検査方法です。血液検査よりも感度が高く、プリックテストが問題なければ、ほとんど症状なく食べることができます。逆にプリックテストが陽性でも食べられることがあるので、結果の解釈には注意が必要です。理論的にはどんな食べ物でも検査ができるので、血液検査で測定できない食べ物でも検査ができます。抗ヒスタミン薬など飲んでいるときちんとした結果が出ないため、休薬が必要になります。検査をご希望の際は事前にお伝えください。
食物経口負荷試験
食物アレルギーの診断に最も重要な検査です。検査の方法ですが、もし症状が出現してもすぐに対応ができるように、クリニックで原因の食品を食べていただきます。重篤な症状が出現しないように食べる量や形態を設定する必要があります。
また、食べられる量を知りたいのか、少しでも食べてしまった時にどの程度の症状が出るか(リスク評価)を知りたいのかなど、負荷試験の目的によっても負荷量を調節する必要があります。
食物アレルギーガイドラインでは、「食物アレルギーのお子さんの食物除去は必要最低限にしましょう」と明記されています。それは原因の食べ物を全く食べないよりも少しずつ食べる方が、食物アレルギーが早く良くなることが分かってきたからです。安全に食べられる量をきちんと見定めて、少しずつ食べられる量を増やしていくためにも食物経口負荷試験はとても重要な検査です。負荷試験を終えた後は、負荷試験の結果から現時点でお子さんが実際にどんなものが食べられるかの具体的なお話をします。固ゆで卵白3gならこんなものが食べられますとか、牛乳10ml飲めたらこんなものが食べられますといった話です。こどもたちが原因食品を少しずつ食べ続けるためにはとても大事なお話だと考えています。
またアレルギー症状が出た時にどの様に対応すれば良いかもお話します。このような症状ならお薬を飲んで経過をみてください、このような症状なら早めにクリニックを受診してくださいといったお話です。時間のかかる検査なので予約制になりますが、できる限り多くのお子さんに対応できるよう努めます。
即時型食物アレルギーの治療
食物アレルギーに対しては安全な量の摂取を継続することが推奨されています。経口免疫療法という安全な量を超えた量の摂取を継続していく治療法もありますが、重篤な症状が出現するリスクが高いため、日本アレルギー学会では一般診療施設で行うことを推奨しておらず、原則としては当院でも行っておりません。アレルギー症状が出現した場合は症状に合わせて、抗ヒスタミン薬、気管支拡張吸入薬、エピペン®を使用します。エピペン®は一般の方が使える注射薬です。アナフィラキシーになった場合はエピペン®を早く使えば使うほど、症状が軽くおさまるのでとても大事な薬ですが、注射薬ですので使い方を習熟する必要があります。
当院では初回処方時はもちろん、1年に1回の更新に合わせて、人形などを使って実際に注射を打ってもらい、いざという時にしっかり使えるように使い方をお話しさせていただきます。
消化管アレルギー
(食物蛋白誘発胃腸症)
原因の食物を食べた後に消化器症状(嘔吐、下痢、血便など)が見られる病気です。色々な呼び方があり、厳密に言うと少し異なりますが、基本的には同じ病気です。食べた後しばらくしてから(典型的には1~4時間)嘔吐を繰り返すことが多いです。症状が出てくるまで時間がかかるため、診断がつけられず、見過ごされているケースも少なくありません。以前は人工乳(普通ミルク)が原因であることが多かったのですが、最近は鶏卵(特に卵黄)で吐いてしまうお子さんが多いことが報告されています。即時型食物アレルギーと異なり、血液検査はなく、正確な診断のためには食物経口負荷試験を行う必要があります。
花粉食物アレルギー症候群・
口腔アレルギー症候群
ハンノキやシラカバなどカバノキ科の花粉症になるとサクランボやリンゴ、モモといったバラ科の果物を食べた時に口の中がチクチクするといった症状が出ることがあります。体の中のカバノキ科に対するIgE抗体が間違えて果物のタンパク質に反応してしまうために出てきてしまう症状です。花粉症と果物アレルギーの組み合わせは他にもたくさんありますが、カバノキ科花粉とバラ科果物の組み合わせが最も多いです。
症状は口の中だけでおさまることが多いですが、果物摂取後2時間以内に激しい運動をしたり、原因の果物のフレッシュジュース(加熱処理などがされていないもの)を摂取するとアナフィラキシーになることがあるので注意が必要です。また果物によっては稀に食べるだけでアナフィラキシーになる場合もありますので、症状が心配な際はご相談ください。
食物依存性運動誘発
アナフィラキシー
食べても大丈夫なのに食べた後に激しい運動をするとアナフィラキシーになってしまう病気です。食べるだけ、運動をするだけでは症状は出ません。運動の他に入浴や飲酒が引き金になることもあります。この病気はアナフィラキシーの中でも症状が強く、注意が必要です。診断のためには原因の食物を食べてから運動負荷試験を行うのですが、体調などにより症状が出たり、出なかったりするので診断は難しい場合が多いです。専門施設での検査、診断が必要になりますので、症状が心配な際はご相談ください。
アレルギーコラム
準備中
その他のアレルギーコラム
子どもの病気
ILLNESS
-
食物アレルギー
More
-
アトピー性皮膚炎
More
-
気管支ぜんそく
More
-
花粉症
アレルギー性鼻炎More
-
便秘症
More
-
じんましん
More
-
夜尿症
(おねしょ)More
-
にきび
More
その他、子どものよくある症状や病気については子どもの病気・疾患をご覧ください。