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子どもの炎症性腸疾患(IBD)とは?血便・下痢・腹痛が続くときの症状・検査・治療を解説

「血便が続く」「お腹が痛いと言うのが増えた」「下痢が長引いている」
そんな変化が続くと、とても心配になりますよね。
子どもの血便や腹痛は感染性腸炎など一時的な病気のこともありますが、症状が続く、体重が増えない、身長が伸びにくい、肛門の腫れや口内炎をくり返すといったサインがあれば、炎症性腸疾患(IBD)も考える必要があります。
この記事では、子どものIBDでみられやすい症状、受診の目安、検査の流れ、治療の考え方を保護者向けにわかりやすく解説します。
もくじ
まず受診を考えたい症状
次のような症状があるときは、早めに小児科や小児消化器の専門医へ相談しましょう。
- 血便を伴う下痢が続く
- 腹痛を繰り返し、普段の生活に支障が出る
- 体重が減っている、または増えにくい
- 身長の伸びが悪い
- 口内炎を繰り返す
- 肛門の痛み、腫れ、膿、切れやすさがある
小児IBDでは、血便・体重減少・腹痛は重要な警告症状です。またクローン病では肛門病変や成長障害が手がかりになることがあります。
炎症性腸疾患(IBD)とは?

炎症性腸疾患(IBD)は、原因不明の慢性炎症が腸に起こる病気の総称で、主に潰瘍性大腸炎とクローン病を指します。小児では、どちらとも言い切れない分類不能型IBD(IBD-U)に分けて考えることもあります。
過敏性腸症候群(IBS)のような機能性疾患と違って、IBDでは腸に実際の炎症があり、血液検査や便中カルプロテクチン測定((腸の炎症度合いを調べる便の検査)が参考になります。ただし、それだけで確定はできず、感染症などを除外したうえで、内視鏡と生検を組み合わせて診断します。
潰瘍性大腸炎とクローン病の違い
炎症性腸疾患(IBD)は、主に潰瘍性大腸炎とクローン病のことを指します。
ただし小児では、診断時点でどちらにも完全には当てはまらないIBD-Uに分類されることもあります。
どちらも腸に慢性的な炎症が起こる点は同じですが、炎症が起こる場所や特徴に違いがあります。
主な特徴は次のとおりです。

子どものクローン病では、腹痛や下痢だけでなく、肛門の腫れや痛み、膿、切れやすさが手がかりになることがあります。潰瘍性大腸炎では血便を伴う下痢が目立ちやすいのが特徴です。
免疫異常が関与する慢性炎症性疾患
炎症性腸疾患は、細菌などの感染による一時的な腸炎とは異なります。本来は体を守るはずの「免疫」がうまく働かなくなり、自分の腸の粘膜を攻撃してしまうことが関係していると考えられています。
通常、免疫は体内に侵入した細菌やウイルスを排除する仕組みです。何らかのきっかけで誤作動が起こると、腸への攻撃が続き、炎症が慢性化してしまいます。
なぜ免疫の異常が起こるのかは明確ではありませんが、体質や腸内細菌のバランス、生活環境などが複雑に関わっていると考えられています。
若年層に多く指定難病に指定されている理由
IBDは若い年代に多い病気で、潰瘍性大腸炎は20代に発症ピークがあり、クローン病も主として若年者にみられます。小児では10歳以降に多い一方、6歳未満で発症する超早期発症型もあります。日本では多くの患者がおり、国の指定難病に定められています。指定難病とされる理由は以下の3つです。
- 原因が不明であること
- 完治させる治療法がなく、治療を長く行う必要があること
- 症状が重い場合や長く治療を行う場合、生活への影響が大きいこと
指定難病に定められている背景には、原因が明らかでないことや、長期にわたり治療が必要で生活への影響が大きいことがあります。一定の条件を満たした場合には、医療費助成制度を利用でき、継続的な治療を支える仕組みが整えられています。
炎症性腸疾患(IBD)の主な症状

炎症性腸疾患(IBD)の症状は、炎症が起きている部位や程度によって異なります。腹痛や下痢、血便などの消化器症状が中心ですが、腸以外に症状が現れることもあり、経過も人それぞれです。
ここでは、代表的な症状や腸管外症状、再燃と寛解を繰り返す特徴について解説します。
子どものIBDでよくみられる症状
代表的な症状は、腹痛、下痢、血便です。炎症が続くと発熱、だるさ、貧血、体重減少も起こります。とくに潰瘍性大腸炎では血便を伴う下痢が目立ちやすく、クローン病では腹痛、下痢、体重減少、発熱、肛門病変などが出ることがあります。
子どもでは、体重が増えにくい、身長が伸びにくい、思春期の進みが遅いといった成長の変化も重要なサインです。小児潰瘍性大腸炎の指針でも、身長・体重・二次性徴・骨年齢などを定期的に確認する必要があるとされています。クローン病では、肛門の腫れや痛み、膿、切れやすさが手がかりになることもあります。
また、IBDでは腸だけでなく、関節・皮膚・目・口に症状が出ることがあります。たとえば、関節の痛み、すねの赤いしこり、目の充血や痛み、治りにくい口内炎などです。こうした腸管外症状が、お腹の症状より先に出ることもあります。
再燃と寛解を繰り返す
炎症性腸疾患は、症状が良くなる時期と悪くなる時期を繰り返す病気です。症状が強く出る「再燃期」と、落ち着いている「寛解期」があり、この波のような経過が特徴です。
寛解期には普段通りの生活が送れることもありますが、自己判断で薬をやめたり通院をやめたりすると、再び悪化する可能性が高まります。症状がない時期も治療を続けることが、再燃を防ぎ、安定した生活を保つために大切です。
子どもの成長や学校生活への影響とサポート
炎症性腸疾患は、学童期や思春期などの心と体が成長する時期に発症することも少なくありません。成長期のお子さんの場合、腸の慢性的な炎症で栄養の吸収が妨げられ、身長の伸びや体重の増加が遅れる成長障害が起こることがあります。
学校生活を安心して送るためには、事前の配慮と学校との連携が欠かせません。腹痛や下痢に備えて、授業中でもトイレに行きやすい環境を整えてもらうなどの配慮を相談しておきましょう。体育や学校行事も、体調に合わせて無理のない範囲で参加できるよう話し合っておくことが大切です。
給食についても、食べられないものがある場合は代替食やお弁当の持参など柔軟に対応できるようにします。欠席や早退が増えた場合でも学習の遅れが出ないよう、学校と協力して支援体制を整えることが安心につながります。
ご家庭と学校がこまめに情報を共有しながら、無理のない環境づくりを進めていくことが大切です。
発症に関わると考えられていること

IBDの原因はまだはっきりわかっていません。遺伝的ななりやすさ、免疫の異常、腸内細菌叢、食事や喫煙などの環境因子が複雑に関わると考えられています。そのため、特定の食べ物やストレスが単独で原因になるわけではなく、決して親の育て方や食事管理が悪かったから起こる病気ではありません。
小児では10歳以降に発症が目立ちますが、6歳未満で発症する超早期発症型IBDもあります。超早期発症型では、遺伝的背景や免疫異常がより強く関わる場合があり、専門施設での評価が大切です。
検査はどのようにすすむ?
IBDが疑われるときは、まず問診で症状の期間、血便の有無、体重変化、成長の様子、家族歴などを確認します。
そのうえで、血液検査や便検査を行い、感染性腸炎などほかの病気を除外します。便中カルプロテクチンは、機能性の腹痛や下痢との見分けに役立つことがありますが、これだけで確定はできません。
小児でIBDを疑う場合、非緊急時には上部内視鏡と回腸末端までの大腸内視鏡、さらに多部位の生検を組み合わせることが推奨されています。必要に応じてMRIや超音波などで小腸や合併症も評価します。
炎症性腸疾患の治療法

治療の目的は、炎症を抑えて症状を落ち着かせ、再燃を防ぎながら成長と生活を守ることです。完治を目指すというより、寛解を長く保ち、学校生活や日常生活を安定させることが大切になります。
潰瘍性大腸炎では、5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA製剤)が基本薬になり、症状の活動期や再燃時にはステロイド薬で抑えることもあります。難治例では免疫調節薬や生物学的製剤の使用を検討します。小児潰瘍性大腸炎の指針では、寛解維持の目的にステロイドは使わないことが明記されています。
クローン病では、小児では栄養療法が重要です。とくに完全経腸栄養(EEN)は、小児クローン病で優先的に選択されるべき寛解導入治療とされています。必要に応じてステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤などを組み合わせます。一方で、5-ASA製剤の効果はクローン病では限定的です。
内科治療だけで十分な効果が得られない場合や、大量出血、穿孔、腸閉塞、狭窄、膿瘍、瘻孔、がんやその高リスクがある場合には、手術を検討します。手術は「治療の失敗」ではなく、合併症を防ぎ生活の質を守るために必要になる治療です。
寛解維持と長期管理が大切
炎症性腸疾患(IBD)は、症状が落ち着く寛解期と悪化する再燃期を繰り返す病気です。症状が落ち着いていても炎症が残っていることがあるため、自己判断で薬をやめると再燃しやすくなります。血液検査、便中カルプロテクチン、必要に応じた内視鏡や画像検査を使って状態を確認しながら、長期的に管理していきます。
まとめ
炎症性腸疾患(IBD)は完治が難しい指定難病ですが、適切な治療を継続することで症状をコントロールし、安定した生活を送れる可能性があります。
血便、長引く下痢、体重減少、成長の停滞などがあるときは、早めに相談することが大切です。
寛解期を長く保つためには、自己判断で治療を中断せず、医師と相談しながら継続することが大切です。保護者の方にとっても不安の大きい病気ですが、正しい知識を持ち、周囲と連携しながら向き合っていくことが安心につながります。
練馬区中村橋にあるベスタこどもとアレルギーのクリニックでは、必要に応じて専門医療機関と連携しながら適切なサポートを行っています。土曜日、日曜日も診療を行っております。練馬区周辺でかかりつけの小児科を探されている方や気になる症状がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
参考文献
- 日本小児栄養消化器肝臓学会「小児潰瘍性大腸炎治療指針(2019)」
- 日本小児栄養消化器肝臓学会「小児クローン病治療指針(2019)」
- 難病情報センター「潰瘍性大腸炎」「クローン病」
- 小児炎症性腸疾患における内視鏡検査のポイント(2023)
- 小児IBD診断に関するPorto基準/関連ポジションペーパー
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監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
医療上の免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の赤ちゃんの状態や健康に関する問題については、必ず医師の診察を受けてください。この記事の情報だけで判断せず、ご心配な点はかかりつけ医にご相談ください。
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
