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子どもの熱性けいれん|ダイアップの使い方と受診のタイミングを解説

熱性けいれんは日本の子どもの約1割が経験し、ほとんどは後遺症を残さず回復します(※1)。しかし、初めて見たときは驚かれる方が多いでしょう。
この記事では、保護者の方が特に迷いやすい
・救急車を呼ぶべきタイミング
・翌日の受診で良いケース
・再発予防(ダイアップの使い方)
を、小児科医の視点で具体的に解説します。
もくじ
子どもに起こる熱性けいれんとは?

熱性けいれんは、主に生後6か月〜6歳頃までの乳幼児期に起こる、発熱が引き金となる発作です。ほとんどの場合は、脳に後遺症を残すことなく自然に回復します。
まずは熱性けいれんを正しく理解し、気持ちを落ち着けて対応するための知識を身につけましょう。熱性けいれんの主な症状や原因、てんかんとの違いを解説します。
主な症状
熱性けいれんは、発熱に気づいてから24時間以内に起こることが多く、前触れもなく突然始まります。
けいれん時に見られる主な症状を以下にまとめました。

米国国立衛生研究所によると、多くの症状は15分以内におさまります。(※2)子どものけいれんが起こっても、保護者の方はできるだけ冷静さを保ち、様子を観察しましょう。
原因
子どものけいれんで最も多いのが熱性けいれんです。(※3)
子どもの脳はまだ発達の途中のため、熱が急に上がると刺激に弱く、けいれんとして現れることがあります。
熱性けいれんは遺伝も関係すると考えられており、家族に経験者がいる場合は、発症しやすい傾向にあります。まれに、低血糖や頭のけが、脳炎などが原因になることもありますが、こうした病気は 「けいれん後も意識が戻らない」「ぐったりしている」など他に明らかな異常を伴う のが特徴です。
熱性けいれん以外のけいれんの原因は、以下のとおりです。

上記の他にもごく稀に胃腸炎の時にけいれんを起こすケースもありますが、多くは熱が原因です。
てんかんとの違い
結論から言うと、熱性けいれんはてんかんとは別物 であり、ほとんどの子どもは自然に卒業します。
将来てんかんに移行するのは 2〜7%程度 とされていますが、逆に言うと 90%以上の子は何も問題なく成長します。(※3)
熱性けいれんとてんかんの違いは、下記の表を参照してください。

子どもの熱性けいれんの種類

子どもの熱性けいれんの種類として、以下の2つを詳しく解説します。
①単純型熱性けいれん
熱性けいれんの大半は単純型に分類され、特別な検査や治療は必要ありません。子どものけいれんが単純型かどうかは、以下の症状で判断します。
- 15分未満で自然におさまる(多くは2〜3分程度)
- 全身が左右対称にけいれんする
- 発熱して24時間以内に1回だけ起こる
単純型の熱性けいれんは2〜3分でおさまり、けいれん後も機嫌が戻るのが特徴です。
ただし「単純型かどうか」は医師の判断が必要なため、初めての場合は翌日でも受診がおすすめ です。
②複雑型熱性けいれん
単純型熱性けいれんの特徴のうち、いずれか1つでも当てはまらない場合を複雑型熱性けいれんと呼びます。複雑型熱性けいれんの主な症状は、以下のとおりです。
- けいれん発作が15分以上続く
- 体の片側だけがけいれんする、左右非対称な動きをする(焦点性発作)
- 発熱して24時間以内に、けいれんを2回以上繰り返す
複雑型熱性けいれんの場合、単純型より少してんかんの可能性が高まりますが、多くの子は問題なく成長します。(※4)
複雑型熱性けいれんには、髄膜炎や急性脳炎・脳症などの緊急性の高い病気が隠れていることがあり、しっかり診察を受け、原因を詳しく調べるために、脳波検査などの精密検査を検討してもらいましょう。
子どもがけいれんを起こしたときの対応法

子どもの安全を守るために大切なのは、保護者の方が落ち着いて行動することです。事前の正しい知識が、家族を守る力になります。子どもにけいれんが起きたときは、以下の対応を行いましょう。
①自宅で応急処置を行う
【まずやるべき3つ】
① 危険物をどかし、子どもを横向きに寝かせる
② けいれんが始まった時間を確認する
③ 呼吸と顔色を見守る
【やってはいけない3つ】
× 口に指やスプーンを入れない(歯が折れる・窒息のおそれ)
× 大きく揺さぶらない
× 無理に抑えつけない
動画撮影は、上記が済んで安全が確保できてから にしてください。
子どもが自宅でけいれんを起こしたら、子どもの安全を確保し、様子を見守ることが基本です。
まずは子どもを安全な場所に寝かせましょう。寝かせる際は、吐いたもので喉を詰まらせないように横向きにしてください。
また、けいれんが始まった時間を確認し、スマートフォンのタイマーや動画撮影などで継続時間を計測しましょう。静かに様子を見守り、けいれんが長く続くようであれば、救急車を呼ぶようにしてください。
余裕があれば動画を撮っておくことで、医師に相談する際に正確に症状を伝えられます。
②病院を受診する
【救急車を呼ぶ】
・けいれんが5分以上続く
・顔色が悪い、呼吸が弱い
・けいれん後も意識が戻らない
【夜間・休日でも受診】
・けいれんが片側だけだった
・同じ日に2回以上起きた
・嘔吐・頭痛・ぐったりが続く
【翌日の受診でよい】
・けいれんが2〜3分で自然に止まり、機嫌も戻っている
判断に迷う場合は、小児救急電話相談「#8000」で看護師や医師の助言が受けられます。
子どもに熱性けいれんの症状が見られたときは、病院を受診することが大切です。
けいれんが15分以内におさまったり、意識が普段どおりに戻り元気にしていたりする場合は、翌日以降の受診でも問題ありません。診療時間内にかかりつけの小児科医に相談してください。
初めてけいれんを起こした後は、熱性けいれんか鑑別するために、症状が軽くても医療機関の受診をおすすめします。
③けいれん中の様子を医師に詳しく伝える
病院を受診する際には、けいれん中の様子をできるだけ詳しく医師に伝えてください。可能であれば、スマートフォンの動画機能でけいれんの様子を撮影しておくと、言葉で説明するよりも多くの情報が伝わります。
診察時には、以下のポイントを伝えられるように観察・記録しておきましょう。

子どものけいれんの検査方法

熱性けいれんかどうかは、子どもの年齢や発熱、けいれんの様子から総合的に判断します。
単純型熱性けいれんの場合、血液検査や画像検査は原則不要 です。
検査が必要になるのは、以下のようなケースです。
・けいれんが15分以上続いた
・けいれん後も意識が戻りにくい
・髄膜炎や脳炎が疑われる症状がある(首の痛み、強い嘔吐、ぐったり)
病気の鑑別のために、必要に応じて血液検査や頭部CT・MRI検査・脳波検査・髄液検査などを行うことがあります。
脳波検査は、てんかんや脳炎・脳症などとの鑑別や痙攣の種類の特定などを目的に行われます。検査時間は30分〜1時間程度で、手順は以下のとおりです。
- ベッドに横になり、頭皮に電極を貼る
- 目が覚めている状態の脳波を記録する
- 眠っている間の脳波を記録する(睡眠導入剤を使うこともある)
髄液検査は、髄膜炎や脳炎が疑われる際に行われ、背中に針を刺して脳脊髄液を採取します。
けいれん後に注意すべきポイント

子どものけいれん後の状態は、熱性けいれんか、他の病気が隠れていないかを診断するための重要な情報になります。けいれん後に注意しておきたいポイントは、以下の3つです。
①眠気やふらつきなどの副作用
②日常生活でのケア
③けいれんの再発やてんかんへの移行
①眠気やふらつきなどの副作用
子どものけいれん後、薬剤を使って治療すると、副作用で眠気が強くなったり、足元がふらついたりすることがあります。眠気やふらつきは、薬が脳の興奮を鎮めるために効いている証拠です。
薬の副作用に対する家庭での対応を以下にまとめました。

副作用の多くは半日程度で自然に改善します。しかし、半日以上経過しても意識がはっきりせず、普段と違う様子が続く場合は、医療機関へ相談してください。
②日常生活でのケア
子どものけいれんが現れた後は、日常生活で以下の点に気をつけましょう。
- 水分や栄養をしっかりと摂る
- 十分に睡眠を取る
- 過度なストレスを避ける
水分・栄養や睡眠の不足は、けいれんにつながる可能性があります。規則正しい生活を心がけ、熱が出た場合には、こまめに体温を測定しつつ水分補給もしてください。
身体的・精神的ストレスもけいれんの原因になるため、リラックスできる環境を整えましょう。
③けいれんの再発やてんかんへの移行
熱性けいれんを一度起こした子どものうち、30%程度が再発を経験するといわれています。(※3)以下のような場合に再発しやすい傾向です。
- 初めてけいれんを起こした年齢が1歳未満と早い
- 両親や兄弟に熱性けいれんの経験者がいる
- 38℃台の発熱後、短い時間でけいれんを起こした
熱性けいれんが脳に後遺症を残したり、発達に影響を与えたりすることはほとんどありません。しかし、てんかんへ移行する場合もある点に注意が必要です。
てんかんとの鑑別には、詳しい検査が必要なので、疑いのある症状が見られるときは専門医に相談してください。
熱性けいれんの予防法|ダイアップ坐剤

ダイアップ坐剤は、けいれんが起こりにくい状態にするお薬です。
熱性けいれんは、体温の上昇が原因となり脳神経が興奮することで起こります。ダイアップ坐剤はこの脳の活動にブレーキをかけることで、けいれんが起こりにくい状態を保ちます。
実際にお子さんに使用するときの方法やタイミングについて、詳しく見ていきましょう。
ダイアップ坐剤の使用方法
ダイアップ坐剤を初めて使うときは、以下の手順を参考にして落ち着いて行いましょう。
- 石鹸と流水で手を洗い、清潔な状態にする
- 子どもを横向きにし、上側の脚を曲げたり両足を持ち上げたりする
- 坐剤を挿入する
- 挿入後はティッシュで肛門を数十秒軽く押さえる
解熱剤などの他の坐剤も使う必要がある場合は、けいれん予防が優先です。ダイアップ坐剤を先に使用し、少なくとも30分以上の間隔をあけてから、もう一方の坐剤を使用してください。
ダイアップ坐剤を使用するタイミング
ダイアップ坐剤は、使用するタイミングが大切であり、体温が37.5〜38.0℃に達した時点で使用を開始します。発熱の初期に使う理由は、急激に熱が上がったときに熱性けいれんが起こりやすいとされているからです。1回目を使用した8時間のちに2回目を使用します。
ダイアップ坐剤が効果を発揮するまでには約30分かかります。熱が上がりきる前に使用し、けいれんが起こりやすい体温のピーク時に、薬の血中濃度が高まっている状態にしておくことが必要です。
熱が上がりきってからや、けいれんが始まってから使っても、十分な予防効果は得られません。発熱に気づいたら、こまめに体温を測り、適切なタイミングで使用できるように準備をしておきましょう。
子どもの過去のけいれんの状況などから、医師が個別に開始温度を指示している場合は従ってください。
2回の使用後も高熱が続く場合でも、3回目の使用は控えてください。ダイアップ坐剤の使用は原則2回までのため、2回目の挿入以降も発熱やけいれんへの不安が続く場合は、医療機関に相談してください。
ダイアップを使用する際は下記に注意してください
■坐剤が押し戻されやすいとき
・挿入後、10〜20秒ほど肛門を軽く押さえる と出にくくなります。
■坐剤が出てしまった場合
・5分以内 → 再挿入
・5分以上経過 → 再挿入不要(ほぼ吸収されています)
■使用を開始する体温
医師から個別に指示がある場合はそれを優先してください。一般的な目安は 37.5〜38.0℃ です。
まとめ
【今日から覚えておくべき3つ】
① けいれん時は「横向き・時間を測る・呼吸をみる」
② 救急車の基準は「3分以上」「片側だけ」「意識が戻らない」
③ ダイアップは「初期の熱」「8時間以上空けて2回まで」
ベスタこどもとアレルギーのクリニックは、熱性けいれんをはじめとした小児診療を行う医療機関です。子どものけいれんに不安を感じ、判断に迷うときはお気軽にご相談ください。
参考文献
- Sawires R, Buttery J, Fahey M. A Review of Febrile Seizures: Recent Advances in Understanding of Febrile Seizure Pathophysiology and Commonly Implicated Viral Triggers. Front Pediatr, 2022, 9, 801321.
- National Institutes of Health:「Febrile Seizures」.
- 日本小児神経学会:「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」.
- Eilbert W, Chan C.Febrile seizures: A review.J Am Coll Emerg Physicians Open,2022,3,4,e12769.
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監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
医療上の免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の赤ちゃんの状態や健康に関する問題については、必ず医師の診察を受けてください。この記事の情報だけで判断せず、ご心配な点はかかりつけ医にご相談ください。
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
