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ロタウイルスの予防接種とは?効果や接種時期、反応をわかりやすく解説

ロタウイルスは、乳幼児に感染するウイルスで、下痢や嘔吐、発熱、腹痛などの症状が現れます。入院が必要になることもある感染症で、重症化すると合併症を引き起こすリスクもあります。
こうしたリスクから子どもを守る手段として推奨されているのが、ロタウイルスワクチンです。
この記事では、ロタウイルスワクチンの効果や接種できる時期、副反応や接種当日の注意点までをわかりやすく解説します。正しい知識を身につけることで、漠然とした不安を解消し、大切なお子さんをより安全に守る準備を整えましょう。
もくじ
ロタウイルス胃腸炎の特徴

ロタウイルス胃腸炎は、乳幼児に突然の激しい嘔吐や下痢、発熱をもたらす疾患で、重い脱水症状や合併症を引き起こすことがあります。世界では、5歳未満の子どもが年間約12万8500人も命を落としている感染症です。(※1)
予防接種が推奨されているのは、この深刻なリスクを防ぐためです。以下では、ロタウイルスの特徴3つを解説します。
- 嘔吐・下痢・発熱を引き起こす感染症
- 潜伏期間は1~3日程度
- 感染経路は糞口感染(経口感染)
嘔吐・下痢・発熱を引き起こす感染症
ロタウイルス胃腸炎では脱水症状に陥りやすく、重症化のリスクが高い特徴があります。
多くの子どもが5歳までに一度は感染するといわれており、重症化を防ぐには早期の受診が欠かせません。以下のような脱水サインが見られるときは、すぐに医療機関を受診しましょう。
- おしっこの回数や量が少ない
- ぐったりして元気がない
- 泣いても涙が出ない
- 唇や口の中が乾いている
- お腹の皮膚をつまんでも戻らない
脱水が進むと、点滴や入院治療が必要になるケースも少なくありません。重症化のリスクが高いからこそ、予防接種で守ることが重要です。
潜伏期間は1~3日程度
ロタウイルスは、体に入ってから症状が現れるまでの潜伏期間が1〜3日と短いのが特徴です。感染後、突然の嘔吐に続いて水のような下痢が始まり、発熱を伴うことも多く見られます。
体力の少ない乳幼児では、これらの症状が短時間で体調を大きく崩す要因になります。症状の進行が急なため、ワクチンで免疫をつけておくことが、お子さんの体を守るうえで重要な備えとなります。
感染経路は糞口感染(経口感染)
ロタウイルスの感染は、便に含まれるウイルスが口から入る「糞口感染(ふんこうかんせん)」によって起こります。少量のウイルスでも感染が成立するため、日常生活のちょっとした行動から広がってしまうのが特徴です。
代表的な感染経路は次のとおりです。
- ウイルスが付着した手で触れた食べ物を口にする
- おむつ交換後に手洗いが不十分なまま調理や食事をする
- ドアノブや手すり、おもちゃに付着したウイルスを触り、その手で口元に触れる
ロタウイルスはアルコール消毒に強く、一般的な手指消毒だけでは完全に防ぎきれない厄介な性質を持ちます。このため、家庭内や保育施設などでは、一人が感染すると短期間で広がることも珍しくありません。
強い感染力を持つロタウイルスからお子さんを守るためには、日常的な衛生管理に加え、予防接種で免疫をつけることが大切です。
ロタウイルスワクチンの効果

ロタウイルスワクチンは、単に感染を防ぐだけではなく、罹患した場合でも症状を軽くし、合併症を減らす役割があります。具体的には、次の3つの効果が期待されます。
①ロタウイルス発症の抑制
②ロタウイルス胃腸炎の重症化を予防
③合併症のリスク軽減
①ロタウイルス発症の抑制
ロタウイルスワクチンの第一の役割は、感染そのものの発症を抑えることにあります。接種によって体の中に免疫が準備されるため、ウイルスが侵入しても症状が現れる前に排除できる仕組みが働きます。
すべての感染を完全に防げるわけではなく、接種していても「ブレークスルー感染」と呼ばれる感染が起こることもあります。
これはワクチンを受けていてもウイルスに感染してしまうことを意味しますが、多くの場合は軽い風邪程度で済み、重い症状に至ることはほとんどありません。
実際、ワクチン導入により世界各地で感染率が大きく減少したことが報告されています。例えばとある研究では、導入前に33%だった有病率が導入後には23%まで下がったとされています。(※2)
ワクチン接種はお子さんを守るだけでなく、園や学校など集団での感染拡大を防ぐ有効な手段です。
②ロタウイルス胃腸炎の重症化を予防
ロタウイルスワクチンの効果の一つは、入院が必要になるような重症化を防ぐことです。ロタウイルス胃腸炎は、激しい嘔吐や白っぽい水のような下痢が特徴で、体の小さい赤ちゃんは短時間で脱水に陥る危険があります。
水分が摂れなくなると、点滴や入院治療が必要になることもあります。ワクチンを接種しておくと、感染しても症状が軽く済みやすく、お子さんの体への負担を軽減できます。
入院や長引く看病を避けられ、ご家族の体力的・精神的な負担も軽くなるのもメリットです。
③合併症のリスク軽減
ロタウイルス胃腸炎で注意すべきなのは、嘔吐や下痢などの消化器症状だけではありません。重症化すると脱水や炎症が全身に広がり、以下のような命に関わる合併症を引き起こすことがあります。

ワクチンを接種しておくと胃腸炎そのものが重症化しにくくなり、危険な合併症につながる可能性を減らしやすくなります。胃腸炎の症状が軽く済めば、体への負担も軽減されます。
ロタウイルスワクチンの接種時期

ロタウイルスワクチンの接種スケジュールについて、以下のポイントを解説します。
- 定期接種は生後15週未満までが対象
- ロタリックス®は2回接種、ロタテック®は3回接種が必要
- 他の予防接種と同時に接種も可能
定期接種は生後15週未満までが対象
ロタウイルスワクチンは、初回接種を「生後14週6日まで」に終えることが大前提です。この期限を過ぎると接種は推奨されなくなるため、早めのスケジュール調整が欠かせません。接種時期のポイントは次のとおりです。

厳しい期限があるのは、副反応の一つである腸重積症のリスクを避けるためです。2020年10月以降に生まれた赤ちゃんは定期接種として公費で受けられますが、「生後15週未満で初回を始める」ことが条件です。
期限を過ぎると任意接種となり、医療機関にもよりますが2〜3万円ほど自己負担が必要になります。
赤ちゃんが生まれると日々があっという間に過ぎます。母子手帳を手に、早めに小児科へ相談して他のワクチンと一緒に予定を立てておくと安心です。
ロタリックス®は2回接種、ロタテック®は3回接種が必要

日本で接種できるロタウイルスワクチンには「ロタリックス®」と「ロタテック®」の2種類があります。どちらを選ぶかは初回接種時に決め、その後は同じ種類を最後まで続けることが大切です。
それぞれの特徴を整理すると次のようになります。

どちらも重症のロタウイルス胃腸炎を防ぐ効果には、大きな差がないとされています。異なるのはカバーするウイルスの型の数ですが、実際の予防効果はほぼ同等とされています。
接種回数が少なくスケジュール管理がしやすい点から、2回で完了するロタリックス®が選ばれやすい傾向です。海外の研究でも、2回接種の方が最後まで打ち切らずに完了できる割合が高いことが報告されています。(※3)
迷ったときは、かかりつけ医と相談し、ご家庭にとって負担の少ない方法を選ぶと安心です。
他の予防接種と同時に接種も可能
ロタウイルスワクチンはシロップ状の経口ワクチンで、注射ではなく口から飲む形で行われます。赤ちゃんの体への負担が比較的少ないのが特徴です。
生後2か月以降に始まるヒブや小児用肺炎球菌、B型肝炎などのワクチンと、同じ日に接種できます。同時接種を選ぶことで、以下のようなメリットがあります。
- 通院回数をまとめられるため、移動や待ち時間の負担が減る
- 予防接種のスケジュール管理がシンプルになり、接種漏れを防げる
- 限られた接種期間内に免疫をつけられる
同時接種はお子さんの免疫を早期に整えつつ、保護者の負担も軽減できる方法です。かかりつけ医と相談しながら積極的に活用することが推奨されます。
接種後に見られる副反応

ロタウイルスワクチンの副反応のほとんどは、数日で自然に治まる一時的な軽い症状です。よく見られる症状から、すぐ受診が必要なものまで以下の3つを解説します。
- 下痢、嘔吐、便秘、胃腸炎など
- アナフィラキシー
- 腸重積症
下痢、嘔吐、便秘、胃腸炎など
ロタウイルスワクチンは経口で接種する「生ワクチン」であり、体内で弱められたウイルスが腸に入って免疫を作る仕組みです。接種後1週間以内に軽い胃腸炎のような症状が出ることがありますが、多くは自然に治まります。
脱水やぐったり感などが見られる場合は、早めの受診が必要です。ご家庭で観察するときのポイントを以下にまとめました。

少しでも不安を感じたら、かかりつけ医に相談しましょう。
アナフィラキシー
アナフィラキシーは、ロタウイルスワクチンに限らず、あらゆるワクチン接種でまれに起こりうる重い副反応です。頻度は低いものの、命に関わる可能性があるため注意が必要です。
特徴として、接種から30分以内で急激に症状が現れることが多いため、接種後は院内で様子を観察します。
以下のような症状がある場合、アナフィラキシーを疑います。
- 皮膚症状:全身に広がるじんましん、急な赤みや腫れ
- 呼吸器症状:息苦しさ、ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音、声のかすれ
- 循環器症状:ぐったりして意識がもうろうとする、顔色や唇が青白い
- 消化器症状:繰り返す激しい嘔吐
こうした症状は短時間で進行するため、帰宅後に当てはまる異変があれば、救急車を呼ぶか、すぐに医療機関を受診してください。
腸重積症
ロタウイルスワクチンの副反応の中で、注意が必要とされるのが腸重積症です。
腸の一部が隣の腸に入り込んでしまい、血流が悪くなる病気で、ワクチンを接種していない赤ちゃんにも起こり得ます。
早期に見つけて治療を始めれば、手術をせずに済む可能性が高くなるため、「いつもと違うサイン」に敏感になることが重要です。
以下のような症状が出た時は、腸重積症を疑いましょう。
- 激しい泣き方を周期的に繰り返す
- 嘔吐を繰り返し、次第に黄色い液体(胆汁)を吐くようになる
- いちごジャムのような血便が出る(血液と粘液が混じった特徴的な便)
- 顔色が悪く、ぐったりして元気がない
上記の症状が1つでも見られたら、腸重積症の可能性があるので、すぐに医療機関を受診してください。
接種当日の過ごし方
ロタウイルスワクチンは甘いシロップを飲む経口タイプのワクチンであり、接種当日も基本的には普段通りに過ごせます。
ただし、赤ちゃんに余計な負担をかけないため、いくつか注意しておきたい点があります。授乳やミルクは接種の30分〜1時間前から控えておくと飲みやすく、吐き戻しのリスクも減らせます。
接種後に吐いてしまっても、口の粘膜からすでに吸収が始まっているため、原則として再接種の必要はありません。
入浴も可能ですが、長湯は避けて体を清潔にする程度にとどめ、ぐったりしているときは無理に入れないようにしましょう。
外出や激しい活動も控え、なるべく自宅で穏やかに過ごすことを心がけましょう。接種後1〜2週間は便に弱毒化されたウイルスが排出されるため、おむつ交換後は石けんと流水で丁寧に手を洗うことが大切です。
まとめ
ロタウイルス胃腸炎は、激しい嘔吐や下痢による脱水症状で入院が必要になることもある病気です。深刻な感染症から大切なお子さんを守るために、予防接種は効果が期待できる手段になります。
重要なのは、初回接種を生後14週6日までに済ませることです。接種できる期間が短いため、早めの計画が欠かせません。副反応など不安な点もあるかもしれませんが、正しい知識を持つことで落ち着いて対応できます。
出産後、少し落ち着いたら、ぜひかかりつけの小児科医と相談し、予防接種のスケジュールを立てておきましょう。
ベスタこどもとアレルギーのクリニックでは、ロタウイルス感染症の予防接種を実施しています。365日診療を行っていますので、お気軽にご相談・ご来院ください。
参考文献
- Xiaochen Lin, Hongjun Li. Diverse processes in rotavirus vaccine development. Hum Vaccin Immunother, 2025, 21(1), p.2475609.
- Kasturi Saikia, Riya Ahmed, Birupaksha Das, Sourav Paul, Suvendra Kumar Ray, Ramesh Chandra Deka, Partha Pratim Borah, Niruprabha Saharia, Nima D Namsa. Impact of Rotavac Vaccine on Hospital-Based Disease Prevalence and Strain Diversity in India: A Systematic Review and Meta-Analysis. Rev Med Virol, 2025, 35(5), p.e70066.
- Halima Tahrat, Ali Munir, Federico Marchetti. Rotavirus vaccine coverage, completion, and compliance: A systematic literature review. Hum Vaccin Immunother, 2025, 21(1), p.2442780.
- 厚生労働省.「ロタウイルスワクチン」
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監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
医療上の免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の赤ちゃんの状態や健康に関する問題については、必ず医師の診察を受けてください。この記事の情報だけで判断せず、ご心配な点はかかりつけ医にご相談ください。

初めまして。
当院のホームページをご覧くださりありがとうございます。
私は小児科の中でも特にアレルギーと呼吸器を専門にしていますが、赤ちゃんの体重が増えない、おねしょが無くならない、ニキビが気になる、便秘気味など少しでも心配なことや不安に感じることがあれば、何でもご相談していただければと思います。
こどもたちがなるべく制限を受けることなく笑顔で日々を過ごし、自分らしく元気に成長できるよう、ご家族の不安を取り除けるよう、「優しさ」を持ったクリニックを目指して、地域の子育てに貢献できるよう頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
