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「ヒトメタニューモウイルス」って何?長引く咳・熱の対処法
クリニックで「ヒトメタニューモウイルス」と診断された。
「あまり聞いたことのない名前だけど、、…?」
「RSウイルスとはなにが違うの?」
「熱や咳はいつまで続くの?」
「どんなことに気を付けていけばいいの?」
この記事では、「ヒトメタニューモウイルス(hMPV)」について、ウイルスの特徴、一般的な症状、ご家庭でのケア、再受診のサインなどを解説していきます。
もくじ
そもそも「ヒトメタニューモウイルス(hMPV)」って、どんなウイルス?
ヒトメタニューモウイルスは、英語の「human metapneumovirus」の頭文字をとって「hMPV」とも呼ばれる、呼吸器感染症、つまり「かぜ」を引き起こすウイルスのひとつです。
2001年に発見された比較的新しいウイルスで、「メタニューモ」という少し難しい名前に驚かれるかもしれません。
しかし、決して珍しいウイルスではなく、多くのお子さんが6歳頃までには一度は感染すると言われています。
症状はRSウイルスとよく似ています。以前は「RSウイルスではないけれど、似たような症状のかぜ」として診断されていたものが、検査技術の進歩によって、このヒトメタニューモウイルスによるものだと分かるようになってきました。
主に、冬の終わりから春、そして初夏にかけて流行のピークを迎えることが多いです。
ヒトメタニューモウイルスの潜伏期間は、およそ4〜6日です。
主な症状
他のウイルスに比べて、呼吸の症状が強い特徴があり、気管支炎や肺炎に注意が必要なウイルスです。
しつこい咳
痰が絡んだような「ゴホゴホ」という咳が特徴です。高熱や喘鳴が落ち着いた後も1-2週間程度、咳が長引くこともあります。咳き込みで嘔吐してしまうことも多いです。
鼻水
サラサラした鼻水ですが、粘り気のある黄色や緑色の鼻水にもなります。
発熱
38℃以上の高熱が4-5日以上続くことも少なくありません。高熱が続いた後は徐々に上がったり下がったりして解熱していくことが多いです。
喘鳴
時に、呼吸をする時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音(喘鳴:ぜんめい)が聞こえることもあります。これは、ウイルスの影響で気管支が狭くなっているサインです。もともと喘息をお持ちのお子さんは症状が強く出やすい傾向があります。症状が出たばかりの時は大丈夫でも、だんだんと呼吸が苦しくなっていく子が多いです。症状が始まってから4-6日目ぐらいで呼吸困難のピークをむかえます。
⇒以下の、「もう一度病院受診を考えるべきサイン」に注意しながら、経過をみていくことが大事です。
もう一度病院受診を考えるべきサイン
ほとんどの場合は自然に回復しますが、まれに症状が悪化し、気管支炎や肺炎に進んでしまうこともあります。特に、小さなお子さんは注意が必要です。
呼吸が苦しそう
肩を上下させて、必死に息をしている(肩呼吸)
呼吸に合わせて、胸やお腹がペコペコと凹む(陥没呼吸)
呼吸のたびに、小鼻がヒクヒクしている(鼻翼呼吸困難)
水分がとれない
水分がいつもの半分以下
おしっこの量が極端に少ない、または出ていない
ぐったりしている
ぐったりしていて、あやしても笑わない
顔色や唇の色が悪い(青白い)
熱が5日以上続いていて、下がらない。
37‐38℃で上下していた熱が、39‐40℃台で続くようになる場合などは要注意です。
RSウイルスとの違いは?
hMPVウイルスも、RSウイルスも、呼吸の症状が強く、気管支炎や肺炎に注意が必要なウイルスです。症状だけで、この2つのウイルスを完全に見分けるのは、私たち小児科医でも難しいのが実情です。わずかですが、以下の違いがあります。
・RSウイルスよりもhMPVウイルスのほうが、高熱が続く子が多いです。
・RSウイルスで重症化するのは生後6か月未満が多いですが、hMPVウイルスは1歳以上でも重症化してしまう子が多いです。初感染の年齢がRSウイルスより高めであることが影響しているのかもしれません。
治療薬について
ヒトメタニューモウイルスに特効薬(抗ウイルス薬)は、現在のところありません。
そのため、治療の基本は、**「対症療法」**となります。
主に使われるお薬の種類
解熱剤(熱を下げるお薬)
高熱でぐったりしている時や、つらくて眠れない、水分が摂れないといった場合に使います。
主にアセトアミノフェン(商品名:カロナール、アンヒバ座薬など)が処方されます。
去痰薬(痰を出しやすくするお薬)
ヒトメタニューモウイルスの咳は、痰が絡んだ「ゴホゴホ」という湿った咳が特徴です。この痰の粘り気を和らげ、体外に出しやすくするためのお薬です。カルボシステイン(商品名:ムコダインなど)が代表的です。
気管支拡張薬(空気の通り道を広げるお薬)
咳がひどく、呼吸の際に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音(喘鳴)が聞こえる時に使います。炎症で狭くなった気管支を広げ、呼吸を楽にする効果があります。
胸に貼るテープタイプのお薬(ツロブテロールテープ、商品名:ホクナリンテープなど)や、吸入薬が用いられます。
抗生剤(抗菌薬)
抗生剤は細菌をやっつけるお薬であり、ウイルスへの効果はありません。ただし、ウイルスの感染に加え、細菌が入り込んで**「二次感染」**(例えば、中耳炎や細菌性肺炎など)を起こした場合には、その細菌をやっつけるために抗生剤が必要になります。
ステロイド薬
背景に気管支喘息があると、よりゼーゼーしやすくなります。気管支喘息の発作に使用されるステロイド薬を使用する場合があります。
ご自宅でできること
こまめな水分補給
ミルク、湯冷まし、麦茶、幼児用のイオン飲料など、お子さんが飲めるものを少量ずつ、こまめに与えましょう。
お部屋の湿度管理
空気が乾燥すると、喉が刺激されて咳が出やすくなります。加湿器を使ったり、濡れたタオルを室内に干したりして、湿度を50〜60%に保つと、呼吸が楽になります。
鼻水を楽にしてあげる
鼻が詰まっていると、呼吸がしづらくなり、ミルクや食事がうまく摂れないことも。市販の鼻吸い器などを使い、こまめに鼻水を吸ってあげましょう。
登園・登校の目安
ヒトメタニューモウイルスには、インフルエンザのように「解熱後◯日」といった明確な出席停止期間の決まりはありません。
登園・登校を再開する目安は、 「解熱し、ひどい咳も落ち着いて、普段通り元気に食事や水分がとれること」 です。
医療上の免責事項 本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の症状や状況に応じた医学的な診断・治療を代替するものではありません。お子さまの症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指示に従ってください。
監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医

初めまして。
当院のホームページをご覧くださりありがとうございます。
私は小児科の中でも特にアレルギーと呼吸器を専門にしていますが、赤ちゃんの体重が増えない、おねしょが無くならない、ニキビが気になる、便秘気味など少しでも心配なことや不安に感じることがあれば、何でもご相談していただければと思います。
こどもたちがなるべく制限を受けることなく笑顔で日々を過ごし、自分らしく元気に成長できるよう、ご家族の不安を取り除けるよう、「優しさ」を持ったクリニックを目指して、地域の子育てに貢献できるよう頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
