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RSウイルスは乳児が危険?入院になる症状と予防策【ベスタの小児科医が解説】
「赤ちゃんの咳が止まらない」「ミルクを飲まなくなった」――そんな時、RSウイルス感染症の可能性があります。特に生後6か月未満の乳児は重症化のリスクが高く、注意が必要です。本記事では、RSウイルス感染症の症状や予防策、入院が必要となるケースについて、小児科専門医が詳しく解説します。
ベスタこどもとアレルギーのクリニックでは、科学的根拠と専門医(小児科・アレルギー科)監修による信頼性の高い情報提供を心がけています。 当クリニックは、西武池袋線「中村橋駅」から徒歩1分とアクセスしやすく、練馬区、中野区、杉並区、西東京市など西武線沿線にお住まいの多くの保護者の皆様にご利用いただいております。アレルギー専門外来やおねしょ(夜尿症)外来といった専門的な診療に加え、365日診療体制で、急な体調変化にも対応できる点が強みです。 当院の理念「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」に基づき、お子様一人ひとりの状況と保護者の方のお気持ちに寄り添った医療を提供いたします。
RSウイルス感染症とは?
RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、乳幼児に多く見られる呼吸器感染症の原因ウイルスです。2歳までにほとんどの子どもが感染するとされており、特に初感染時は重症化しやすい傾向があります。感染経路は主に飛沫感染と接触感染で、感染者の咳やくしゃみ、またはウイルスが付着した手や物に触れることで広がります。家庭内や保育園などで感染が拡大しやすい特徴があります。
乳児が重症化しやすい理由
RSウイルス感染症では鼻水や痰などの分泌物が大量にでてきます。乳児、特に生後6か月未満の赤ちゃんは、気道が細く、咳の力も弱いため、RSウイルスに感染すると細気管支炎や肺炎になり苦しくなってしまうことがあります。また、早産児や心臓・肺に基礎疾患のある乳児は、特に重症化のリスクが高いとされています。
RSウイルス感染症の症状と経過
RSウイルスに感染すると、通常は2〜8日の潜伏期間を経て症状が現れます。典型的な潜伏期間は4〜6日とされています。
軽症の場合
初期症状は一般的な風邪と似ており、鼻水、軽い咳、微熱などが見られます。多くの子どもはこれらの症状で自然に回復します。
重症化した場合
特に乳児、そして早産児や心臓・肺に基礎疾患のある乳児では、症状が進行し、細気管支炎や肺炎を引き起こすことがあります。重症化すると以下のような症状が現れます。
- 激しい咳:コンコンという乾いた咳から、ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)を伴う咳に変化することがあります。これは、気道に分泌物がでてきたことにより狭くなっているサインです。
- 呼吸困難
♢呼吸が速い(頻呼吸):いつもより呼吸の回数が増えます。
♢陥没呼吸:肋骨の間や鎖骨の上がへこむような呼吸が見られます。これは、呼吸をするのにいつも以上の力を使っている状態です。
♢多呼吸:呼吸が浅く速くなることもあります。
- 哺乳量の減少や哺乳拒否:呼吸が苦しいため、母乳やミルクを飲む体力がなくなったり、途中で中断したりするようになります。脱水症状につながることもあるため注意が必要です。
- 顔色不良、チアノーゼ:口の周りや唇、爪などが紫色になるチアノーゼは、体内の酸素が不足している重篤なサインです。
- 無呼吸発作:特に生後1〜2か月の乳児では、一時的に呼吸が止まる無呼吸発作が見られることがあります。これは非常に危険な症状であり、緊急性が高いです。
- ぐったりして反応が鈍い:活気がなく、刺激に対する反応が乏しくなる場合は、全身状態が悪化しているサインです。
これらの症状は、RSウイルス感染症が重症化しているサインであり、迅速な医療機関の受診が必要です。
症状の期間と回復
軽症であれば数日で改善に向かいますが、重症化した場合は症状がピークに達するまでに5日程度を要し、その後も咳や鼻水などの症状が1〜2週間続くことがあります。完全な回復にはさらに時間がかかる場合もあります。
入院が必要となる症状と治療
以下の症状が見られる場合、速やかに医療機関を受診し、入院が必要かどうかの判断を仰ぎましょう。
- 酸素飽和度(SpO2)の低下:SpO2が90〜94%以下に持続的に低下している場合は、入院を考慮する目安となります。これは、血液中の酸素濃度が低い状態を示し、全身への酸素供給が不足している可能性が高いです。
- 呼吸困難が著しい:陥没呼吸が強く、呼吸がかなり速く、苦しそうな場合。
- 哺乳困難や脱水症状:水分がほとんど摂れておらず、おしっこが少ない、皮膚の張りが悪いなどの症状がある場合。
- 無呼吸発作を繰り返す:特に月齢の低い乳児で無呼吸が頻繁に見られる場合。
- 全身状態の悪化:ぐったりして意識レベルが低下している場合。
入院した場合の治療
現在、RSウイルスに対する特効薬はありません。そのため、入院治療では主に対症療法が行われます。
- 酸素吸入:酸素飽和度が低い場合や呼吸が苦しい場合には、鼻カニューレやマスク、あるいは高流量鼻カニューレ(HFNC)などを用いて酸素を投与し、体内の酸素濃度を保ちます。HFNCは、加湿・加温された高流量の酸素を送り込むことで、呼吸の負担を軽減し、気道を広げる効果も期待できます。
- 輸液療法:哺乳量が減少したり、脱水症状が見られたりする場合には、点滴で水分や栄養を補給します。
- 吸引:鼻水や痰が多くて呼吸が苦しい場合には、鼻や喉の分泌物を吸引し、気道を確保します。
- 吸入薬:気管支を広げる効果のある薬(気管支拡張薬)や炎症を抑える薬(ステロイド)を吸入することで、呼吸を楽にする場合があります。ただし、RSウイルス感染症では気管支拡張薬の効果は限定的であることが多いです。
抗菌薬(抗生物質)の使用について
RSウイルスはウイルス感染症であるため、抗菌薬は直接効果がありません。しかし、RSウイルス感染症によって免疫力が低下し、二次的に細菌感染(細菌性肺炎など)を併発するリスクがある場合や、細菌感染が疑われる場合には、合併症の治療として抗菌薬が使用されることがあります。医師が診察し、必要と判断した場合にのみ処方されます。
RSウイルス感染症後のぜーぜー(喘鳴)について
RSウイルスに感染した乳幼児の一部は、感染後も「ぜーぜー」という喘鳴を繰り返すようになることがあります。これは、RSウイルスによる気道の炎症が、気道の過敏性を高め、その後も風邪をひいたり、運動したりすることで気道が狭くなりやすくなるためと考えられています。
特に、乳幼児期にRSウイルスに感染し重症化した子どもは、将来的に喘息を発症するリスクが高まることが指摘されています。これは、RSウイルス感染が、もともと持っている気道のアレルギー体質を顕在化させる引き金となる可能性があるためと考えられています。お子さんがRSウイルス感染後に喘鳴を繰り返すようであれば、医師に相談し、適切な経過観察や治療を受けることが重要です。
RSウイルス感染症の予防策
現在、RSウイルスに対する特効薬はありませんが、予防策として以下の方法が有効です。
日常生活での予防🏠
- 手洗い・うがいの徹底:外出後や食事前など、こまめな手洗いと、うがいができる年齢の子どもはうがいを励行しましょう。
- おもちゃや手すりなどの消毒:RSウイルスは物体の表面で数時間生存可能です。子どもが触れるおもちゃや、ドアノブ、手すりなどは定期的に消毒しましょう。
- 風邪症状のある人との接触を避ける:家族や周囲に風邪の症状がある人がいる場合は、乳児への接触をできるだけ避け、マスクの着用を促しましょう。
- 人混みを避ける:流行期には、不必要な人混みへの外出を控えることが感染リスクを減らします。
- 適度な換気:室内の空気を定期的に入れ替え、密閉空間を避けることも大切です。
医学的な予防策🏥
医学的な予防策は、特に重症化のリスクが高い乳児や、全てのお子さんを対象とした新しい選択肢が増えています。
- シナジス🄬(パリビズマブ): RSウイルスの流行期(通常9月〜3月頃)に、早産児(特に在胎期間28週以下の乳児)、心臓や肺に基礎疾患のある乳児、ダウン症候群の乳児など、高リスク児に対して月1回の筋肉内注射で予防効果があります。ウイルスが細胞に侵入するのを防ぐ抗体製剤です。
- ベイフォータス🄬(ニルセビマブ): 2024年から導入された新しい予防薬です。1回の筋肉内注射で約5か月間の予防効果が期待できます。この薬は、基礎疾患のない健康な乳児にも適応がありますが、任意接種(自費診療)となる場合が多いです。RSウイルスの表面にあるタンパク質に結合し、感染を防ぎます。
- 妊婦へのワクチン接種(アブリスボ🄬): RSウイルスの流行期に入る前の妊娠24〜36週の妊婦が接種することで、胎児に抗体が移行し、生後6か月頃までのRSウイルス感染症の発症・重症化を予防します。母親が抗体を持つことで、赤ちゃんが生まれてくる前に免疫を獲得できるという画期的な予防策です。
これらの予防策については、お子さんの状況や地域の流行状況を考慮し、医師と相談の上、適切な方法を選択してください。
よくある質問(FAQ)🔍
Q1: RSウイルス感染症の潜伏期間はどれくらいですか?
A1: 潜伏期間は2〜8日で、典型的には4〜6日とされています。
Q2: RSウイルス感染症に特効薬はありますか?
A2: 現在、RSウイルスに対する特効薬はありません。症状に応じた対症療法が中心となります。
Q3: 兄弟がRSウイルスに感染した場合、乳児への感染を防ぐにはどうすればよいですか?
A3: 手洗いやおもちゃの消毒、マスクの着用など、家庭内での感染予防策を徹底しましょう。また、感染者との接触を最小限に抑えることが重要です。
Q4: 中村橋駅からベスタクリニックへの行き方は?
西武池袋線「中村橋駅」北口を出て、徒歩1分です。駅前の中杉通りを北に向かっていただき、右手に松屋が見える1つ目の道を左に曲がってください。1階が薬局(ココカラファインさん)のビルの2階にございます。提携駐車場(40台)や駐輪場(15台)もございますので、お車や自転車でもお越しいただけます。詳しいアクセス方法は、こちらのアクセス案内ページをご覧ください。
おわりに
RSウイルス感染症は、特に乳児にとって重症化のリスクが高い感染症です。早期の発見と適切な対応が重要となります。当クリニックでは、365日診療体制を整えており、急な症状にも対応可能です。また、アレルギー専門外来も設けており、気管支喘息のあるお子様のケアにも力を入れています。お子様の健康に不安を感じた際は、いつでもご相談ください。
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医療上の免責事項
本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の症状や状況に応じた医学的な診断・治療を代替するものではありません。お子さまの症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指示に従ってください。
監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医