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溶連菌感染の後、どうして尿検査をみるの?【ベスタの小児科医が解説】
お子さんが溶連菌感染症と診断され、ホッとしたのも束の間、「治った後、尿検査に来てくださいね」と言われて、「よくなった後も、また病院に行かなきゃいけないの?」などと思ったことはないでしょうか?練馬区や西武線沿線にお住まいの保護者の皆さま。その疑問、よく分かります。この記事では、なぜ溶連菌感染症の後、尿検査が大切なのかを、小児科専門医・アレルギー専門医の視点から、分かりやすく解説します。
当クリニックは、練馬区中村橋駅すぐの好立地で、アレルギーや夜尿症といった専門外来に加え、土日祝日も対応する365日診療体制を整えています。急なご病気の際も、またアレルギーなどでお困りの際も、地域の保護者の皆さまに寄り添い、より良い医療を提供できるよう努めています。
はじめに:溶連菌感染症とは?
溶連菌感染症は、A群β溶血性レンサ球菌という細菌によって引き起こされる感染症です。子どもの間で非常に流行しやすく、のどの痛みや発熱、体に赤い発疹が出るのが主な症状です。一部例外もありますが、抗生剤をしっかり飲めば、症状は速やかに改善します。
では、なぜ治った後にわざわざ尿検査をする必要があるのでしょうか?
溶連菌が引き起こす「合併症」とは
溶連菌感染症から回復した後、ごくまれにですが、深刻な合併症を引き起こすことがあります。その代表的なものが「溶連菌感染後急性糸球体腎炎」と「リウマチ熱」です。
「リウマチ熱」について
日本小児循環器学会の稀少疾患サーベイランス調査によると、近年の日本における小児リウマチ熱の年間報告数は10例程度で推移しており、非常に少なくなっています。 → https://jspccs.jp/report/database/
なお、世界では多くのリウマチ熱の発症が報告されています。(年間のリウマチ熱発症者は約50万人、心疾患による死亡者は約30万人) → https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/rheumatic-heart-disease
「溶連菌感染後急性糸球体腎炎」について
日本では「溶連菌感染後急性糸球体腎炎」に注意
腎炎の機序(メカニズム)
溶連菌をやっつけるときに体内で溶連菌への抗体がつくられます。
菌との戦いの後、「溶連菌の残骸(抗原)」と「抗体」が結合した塊=免疫複合体ができます。
この免疫複合体が腎臓の糸球体に沈着し、それを「異物」と間違えた免疫が糸球体ごと攻撃してしまい、糸球体に炎症が生じてしまったのが、溶連菌感染後急性糸球体腎炎です。
腎炎でみられる症状
糸球体(=フィルター)が炎症でこわされるため、、
- 腎機能が悪くなる → 尿量が少なくなる → 浮腫む、体重が増える、高血圧
- 尿に赤血球とタンパクが漏れ出る → 血尿蛋白尿、肉眼的血尿
などの症状がでます。
軽症のこともありますが、症状が強い場合は、入院となります。特に血圧と尿量をきちんとコントロールしなければいけない状況では入院が必須です。血圧が急激に上がって、けいれんしたり、高血圧性脳症になってしまうこともあります。
腎臓の炎症は基本的には一過性です。腎機能の悪化、乏尿や浮腫などの強い症状が出たとしても、多くは1-3週間で軽快します。血尿や蛋白尿は数か月前後で治るケースが多いですが、症状が強い場合は、血尿や蛋白尿が治らずに続いたり、まれに腎機能障害が残ることもあります。
糸球体とは、、?
「糸球体」とは血液をろ過して尿を作るための腎臓にあるフィルターですが、膨大な量の血液がその「糸球体」を流れ、ろ過されます。正常の糸球体ろ過量は100-120ml/min(体表面積1.73mm2あたり)以上とされていますが、これは健常成人では、1日当たり150Lです。
とてつもない量の血液が流れてくるためか、「糸球体」というフィルターは色々なものが沈着しやすく、病気になりやすい場所の一つです。IgA腎症やループス腎炎も免疫複合体が糸球体へ沈着します。アミロイドーシス、多発性骨髄腫では異常なタンパクが糸球体に沈着して、症状がでます。ファブリー病やフィブロネクチン腎症なども異常な代謝物質が糸球体に沈着します。
キッチンの排水溝ネットのようなイメージですね。
尿検査はいつ行うのがいいでしょうか?
腎炎は溶連菌性咽頭炎の1-2週間後(大体10日前後)に発症します。そのため、溶連菌感染症治療の約2週間後に尿検査を行います。(皮膚感染の場合は、3-6週間後に発症します。)
自宅で尿を採るときに、気をつけることは?
① 朝一番の尿を採る
起立性蛋白尿の影響を受けないためです。
② 出している途中の尿=「中間尿」を採る
出始めや終わりの尿には雑菌などが混じりやすいからです。
尿検査で異常が見つかったらどうなるの?
尿検査で「尿蛋白」や「尿潜血」が陽性になったからといって、必ずしも病気とは限りません。
風邪をひいている時や運動後でも一時的に陽性になることがあります。
軽微な尿異常であれば、まずは再検査を行い、本当に異常かどうかを確認します。陽性が続く場合は、当院腎臓外来でエコー検査や血液検査など、さらに詳しい検査を行うことができます。
*だるさ、浮腫、尿量低下、高血圧などの症状がある場合や、高度の血尿蛋白尿、肉眼的血尿の場合はすぐに精査と治療が必要です。
小学校入学前のお子さまは、学校検尿を行う機会がないので、溶連菌感染後の尿検査で初めて血尿や蛋白尿を指摘される場合も多くみられます。検尿異常については、こちらのブログもご確認ください。 →
https://www.besta-kids.jp/2025/05/09/1745/
合併症(腎炎)を予防するために大切なこと
溶連菌感染症の合併症を予防するために、最も重要なのは「抗生剤を最後まで飲みきること」です。筆者は溶連菌感染後急性糸球体腎炎で入院する子を多く見てきましたが、その大半は薬を飲めずに腎炎を発症してしまうというパターンでした。(多くは腎炎を発症した後、その1-2週間前の風邪が溶連菌感染だった、と血液検査でわかりました。)
医師から処方された抗生剤は、決められた期間、飲み忘れがないように最後まで飲みきることが大切です。当院では、抗菌薬の投与期間は、症状の程度や抗菌薬の種類に応じて、5-10日間としています。
質問(FAQ)
Q: 溶連菌に感染するたびに、毎回尿検査をしないといけないの?
はい。残念ながら感染のたびに尿検査を行うのが望ましいと思います。腎炎になりやすいかどうかは、本人の体質ではなく、溶連菌の種類によります。なので、前回の尿検査が大丈夫だからといって、今回も大丈夫かどうかはわかりません。
ただし、何が何でも尿検査を採取しなければいけない!というわけではありません。
尿がうまく採取できない、どうしても適切な時期に予約がとれない、など特別な事情がある場合は、だるさ、むくみ、尿量低下、尿色調(褐色尿に注意しましょう)などの症状が出てこないかどうか、2-3週間注意して観察しましょう。また3歳未満は腎炎を発症するリスクは非常に低いことがわかっています。状況に応じて対応していくことが重要だと思います。
Q: ベスタこどもとアレルギークリニックへはどうやって行けますか?
西武池袋線「中村橋駅」北口を出て、徒歩1分です。駅前の中杉通りを北に向かっていただき、右手に松屋が見える1つ目の道を左に曲がってください。1階が薬局(ココカラファイン)のビルの2階にございます。提携駐車場(40台)や駐輪場(15台)もございますので、お車や自転車でもお越しいただけます。詳しいアクセス方法は、こちらのアクセス案内ページをご覧ください。
関連リンク
腎臓専門外来の案内:https://www.besta-kids.jp/special-outpatient/#link03
検尿異常:https://www.besta-kids.jp/2025/05/09/1745/
肉眼的血尿:https://www.besta-kids.jp/2025/05/02/1687/
ネフローゼ症候群:https://www.besta-kids.jp/2025/05/24/1852/
慢性糸球体腎炎:https://www.besta-kids.jp/2025/09/01/2649/
溶連菌感染後急性糸球体腎炎:https://www.besta-kids.jp/2025/08/28/2574/
尿路感染症:https://www.besta-kids.jp/2025/05/02/1666/
包茎:https://www.besta-kids.jp/2025/05/16/1823/
夜尿:https://www.besta-kids.jp/2025/05/16/1773/
医療上の免責事項 本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の症状や状況に応じた医学的な診断・治療を代替するものではありません。お子さまの症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指示に従ってください。
監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
