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揺さぶられっ子症候群とは?症状・原因・受診の目安をわかりやすく解説

赤ちゃんをあやすために体を揺すったり、遊びで「高い高い」をしたりするときはありませんか? この行動は、揺さぶられっ子症候群と呼ばれる脳損傷を起こす可能性があります。外傷が基本的にないため、保護者が嘔吐やけいれんなどの予兆に気づかず、後遺症につながるケースも見られます。
この記事では、揺さぶられっ子症候群の症状や原因、受診の目安を解説します。大切な赤ちゃんを守るために正しい知識をつけましょう。
もくじ
揺さぶられっ子症候群とは
揺さぶられっ子症候群(SBS:Shaken-Baby-Syndrome)とは、赤ちゃんを激しく揺さぶることで脳に損傷が起こる状態です。
赤ちゃんは、大人よりも体重に対して頭の重さの割合が高く、体の重心が高い位置にあります。首の筋肉の発達も未熟で、頭を支える力が弱いため、揺さぶられると首がしなってしまいます。脳は発達途中のため、頭蓋骨との間にすき間がある状態です。
赤ちゃんは、頭が体に対して大きく、首の筋肉も未熟です。そのため、強い揺れが加わると頭が大きく動き、脳や血管に強い力(引っ張り・ねじれ)がかかります。これにより、頭の中の出血(硬膜下血腫など)や、けいれん・意識障害などの症状につながることがあります。
優しくあやす、ベビーカーで散歩するなどの穏やかな揺れでは、通常は発症しません。しかし過度に赤ちゃんを揺さぶると、発症することがあり、外傷がないため発見が遅れる可能性があります。
揺さぶられっ子症候群の主な原因と注意すべき行動

揺さぶられっ子症候群は、日常の何気ない動作が引き金になることがあります。ここでは、具体的に注意が必要な行動を解説します。
激しい揺さぶりや「高い高い」のリスク
赤ちゃんが体を揺さぶられると、脳が頭蓋骨に何度も打ちつけられます。そのため、脳の血管が切れて出血したり、脳細胞が傷ついたりする原因となります。
保護者が赤ちゃんと遊ぶ際の「たかいたかい」も、やり方によってはリスクがあります。特に手から離れるほど高く上げたり、膝の上に載せて弾ませたりすると、揺さぶられっこ症候群になる可能性があります。
2秒以上激しく揺さぶったり、短い時間で5回以上頭を揺らしたりする行為は要注意です。
赤ちゃんをあやす際は、頭と首をしっかりと支え、優しく穏やかに動かすことを心がけてください。
日常で無意識に行いやすい危険な動作
揺さぶられっ子症候群は、日常生活のなかで保護者が意図せず行ってしまう動作にも注意が必要です。以下のリストを参考に、自分の行動を振り返りましょう。
【日常生活で注意したい行動チェックリスト】
- 泣きやまないときに体を小刻みに強く揺すっていないか
- 赤ちゃんを抱っこしたまま走ったり飛び跳ねたりしていないか
- 遊びのつもりで、赤ちゃんの頭が大きく振られる動きになっていないか
上記の行動は、脳を揺らしてしまう可能性があるため、注意が必要です。
代表的な症状と見分け方
揺さぶられっ子症候群は、外傷がない一方で、脳がダメージを受けているという注意点があります。ここでは、症状の見分け方として注意すべき代表的な兆候や特徴を解説します。
嘔吐・けいれん・ぐったりなどの全身症状
揺さぶられっ子症候群は、以下のようなさまざまな全身症状が現れます。

これらの症状が見られたら、脳に異常が起きている可能性があります。こうした症状があれば、すぐに医療機関を受診しましょう。
意識障害・網膜出血など脳と眼の異常
揺さぶられっ子症候群は、脳と眼に特徴的な異常が現れる場合もあります。
意識障害とは、赤ちゃんの意識がはっきりしない状態です。呼びかけに反応しない、視線が合わない、一日中ほぼ眠っていて起きないなどの様子が見られます。
網膜出血とは、網膜の血管が切れて出血する症状です。赤ちゃんが揺さぶられると、衝撃は眼球にも伝わり、眼球内の血管から出血します。眼底検査で確認できる症状で、揺さぶられっ子症候群に特徴的とされています。
頭蓋内出血(ずがいないしゅっけつ)とは、頭蓋骨の中で脳を包む膜(くも膜や硬膜)の血管が切れ、出血する状態です。なかでも、硬膜下血腫が多く見られます。この出血が脳を圧迫し、けいれんや意識障害などの症状を引き起こす原因となります。
明らかな外傷がないのが特徴
揺さぶられっ子症候群は、外傷がほとんどないため、気づかれにくいのが大きな特徴です。
外から見て青あざや傷がないことが多く、周囲の大人が「けがをさせてしまった」という自覚を持ちにくいです。そのため、原因がわからないまま時間が経ってしまうことがあります。
赤ちゃんは自分で痛みや不調を言葉で伝えられません。そのため、「なんとなく元気がない」「ミルクの飲みが悪い」「いつもと様子が違う」などの小さな変化がサインになることもあります。
外傷が見えなくても、普段と違う様子に気づいたら早めに医療機関へ相談することが大切です。
診断と治療までの流れ

ここでは、どんな症状があればすぐに病院へ行くべきか、どの診療科を選べば良いかを解説します。
まずは小児科を受診
揺さぶられっ子症候群が心配な症状がある場合は、まず小児科に電話で相談するか、症状が強い場合は救急外来/救命救急センターの受診を検討してください。
けいれん・意識障害・呼吸の異常などがあるときは、救急車(119)の利用もためらわないでください。
揺さぶられっ子症候群は、外傷がほとんどありません。そのため、頭の中を詳しく調べるためにCT・MRI検査や、眼の状態を調べる専門的な検査(眼底検査)が必要です。
医療機関での伝え方と注意点
医療機関では、医師に正確な情報を伝えることが適切な診断につながります。以下のような情報を詳細に伝えてください。

もし思い当たることがある場合も、正確に伝えましょう。医師は、適切な治療につなげるために赤ちゃんの状況を詳細に確認します。
揺さぶられっ子症候群を予防するには
子育ては大きなやりがいを感じるものです。しかしときには、「なかなか泣き止んでくれない」「子どもを相手していて常に寝不足」などのように、つらく感じることもあります。
こうしたささいなストレスが積み重なり、つい「カッ」となって泣き止ませるために強く揺さぶることがあるかもしれません。
「殴る」「蹴る」などの物理的な暴力は、誰しもがその危険性を知っていますが、同じくらい「揺さぶる」ことも危険であるということを認識しておきましょう。
加えて、親自身がリフレッシュする時間を設けたり、ストレスを感じたら小児科医や保健師さんに相談したりして、一人で抱え込まないことも大切です。
次のようなコツと心の準備を認識しておくと良いでしょう。
・赤ちゃんを安全な場所に寝かせる(ベビーベッドや床の上など、転落しない場所)
・数分だけ離れて深呼吸する(自分を落ち着かせる時間は、赤ちゃんを守る時間です)
・パートナーや家族に交代を依頼する/電話する
・迷ったら #8000 などの相談窓口を使う
「泣き止ませなきゃ」と思うほど苦しくなります。まずは安全を最優先にしましょう。
まとめ
揺さぶられっ子症候群は、良かれと思ったあやし方や育児中の何気ない行動が、赤ちゃんの脳にダメージを与える可能性があります。外傷がないため、けいれんや嘔吐などの、いつもと違う赤ちゃんのサインに気づくことが大切です。
ベスタこどもとアレルギークリニックでは、赤ちゃんの「いつもと違う様子」についてのご相談を受け付けています。必要に応じて、連携する医療機関での検査(画像検査・眼科での検査など)をご案内します。
少しでも不安があれば、早めにご相談ください。
参考文献
- 厚生労働省:「健康用語辞典 乳幼児突然死症候群/SIDS」
- 日本眼科学会:「乳幼児の虐待による頭部傷害(abusive head trauma:AHT)の手引き」
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こどもの病気コラムの一覧です。
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監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
医療上の免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の赤ちゃんの状態や健康に関する問題については、必ず医師の診察を受けてください。この記事の情報だけで判断せず、ご心配な点はかかりつけ医にご相談ください。
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
