トピックス
ハンノキ花粉症とPFAS(花粉・食物アレルギー症候群)|子どもの症状と対処法
この記事を監修した医師
もくじ

冬の終わりにくしゃみや鼻水が出ると、「スギ花粉が始まったかな」と思ってしまいがちですよね。 寒い時期のくしゃみや鼻水は、スギより早く、1月下旬から飛散するハンノキ花粉症が原因かもしれません。
特に注意したい点が、特定の食べ物との関係です。もし「リンゴを食べると口がイガイガする」などの経験があれば、ハンノキ花粉症のおそれがあります。
この記事では、見過ごされがちなハンノキ花粉症の正体と、食物アレルギーとの意外なつながり、適切な対処法まで詳しく解説します。
ハンノキ花粉症とは?

ハンノキ花粉症は、カバノキ科ハンノキ属の樹木の花粉が原因で起こるアレルギー疾患です。
ハンノキは、川辺や湿地などに生育する樹木で、早春(1〜4月頃)にスギよりも早く花粉を飛ばすことが特徴です。普段の生活の中では目にする機会が少ないため、スギやヒノキほど知られていませんが、実は花粉症の原因植物のひとつとされています。
ハンノキ花粉症では、体にある免疫システムが、ハンノキの花粉を異物として認識し、過剰に反応してしまうことで、アレルギー症状を引き起こします。
ハンノキ花粉症の特徴は、花粉‐食物アレルギー症候群(PFAS:Pollen-Food Allergy Syndrome) を起こしやすい点です。PFASとは、花粉と構造が似たタンパク質を含む果物や野菜を食べた際に、体の免疫が誤って反応し、皮膚や消化器、口の中などにもアレルギー症状が現れる状態を指します。
特にハンノキ花粉症では、口や喉にかゆみ・違和感が出る形のPFAS(口腔アレルギー症候群=OASの代表的なもの)が起きやすいとされています。
もし花粉症の症状に加え、食事中のかゆみも経験しているなら、ハンノキ花粉症を疑うサインかもしれません。
ここでは飛散時期やスギ・ヒノキ花粉との違いを解説します。
飛散時期は1~4月
ハンノキ花粉の飛散時期は、スギ花粉よりも早く始まることが特徴です。
関東地方では1月下旬から2月上旬にかけて飛散が始まり、春本番を迎える前から症状が出る方も少なくありません。まだ寒さが残る時期のため、花粉症とは気づかずに「風邪が長引いている」と思い込んでしまうケースもあります。特に1〜2月は花粉対策を意識しづらい時期ですが、この時期からすでにハンノキ花粉が飛び始めていることを知っておくことが大切です。
花粉症環境保護マニュアル2022によると、関東の飛散スケジュールは以下のとおりです。(※1)
- 飛散開始:1月下旬~2月上旬
- ピーク:3~4月
- 飛散終了:5月
ただし、北海道や東北地方では、ハンノキの近縁種であるシラカバの花粉が4月以降にピークを迎えます。ハンノキ花粉症の方は、シラカバの花粉にもアレルギー反応を起こしやすいため、引き続き注意が必要です。
スギ・ヒノキ花粉との違い
春の花粉症の代表格であるスギやヒノキは、以下の表に示すようにハンノキ花粉症と違いがあります。

ハンノキの花粉に含まれるアレルギー原因物質は、リンゴやモモ、豆乳などに含まれるタンパク質と構造がよく似ています。「リンゴを食べると口の中がイガイガする」などの症状は、ハンノキ花粉症の可能性を示す重要なサインです。
スギとハンノキは飛散時期が重なるため、両方の花粉症を発症している方も少なくありません。自己判断は難しいので、気になる症状があれば専門の医療機関に相談しましょう。
ハンノキ花粉症の主な症状

ハンノキ花粉症の主な症状には、以下の5つがあります。
①鼻水・くしゃみ
②目のかゆみ
③咳
④喉の違和感
⑤皮膚のかゆみ
①鼻水・くしゃみ
ハンノキ花粉症でも、スギ花粉症などと同様に鼻に強いアレルギー症状が現れます。代表的な症状は以下のとおりです。
- 鼻水:無色透明でサラサラしている
- くしゃみ:発作のように連続して何度も出る
- 鼻づまり:特に夜間に悪化しやすい
特に鼻水・くしゃみ・鼻づまりは風邪の症状とよく似ていますが、2週間以上続く場合は、花粉症の可能性が考えられます。
②目のかゆみ
目のかゆみも、ハンノキ花粉症で現れる主な症状の一つです。強いかゆみや目の充血、涙が止まらないなどの症状が見られる場合は、ハンノキ花粉症かもしれません。目に現れる症状は、花粉が目に入り、炎症を起こしているサインです。
ハンノキ花粉症では、起床したときから目のかゆみが止まらなかったり、異物感があったりします。
③咳
ハンノキ花粉症は、鼻や目だけにとどまらず、気管支にまで症状が及ぶことがあります。以下の症状が現れている場合、お子さんにハンノキ花粉症の可能性があるかを判断するための重要なヒントとなるでしょう。
- しつこい咳が出る
- 息をするときに胸から笛のような音が鳴る
- 呼吸が苦しくなる
ハンノキ花粉症の咳は、花粉が気管支を刺激して炎症を起こすことが原因です。乾いた咳が長引く場合は、気管支喘息に進むこともあるため注意しましょう。
④喉の違和感
喉の違和感も、ハンノキ花粉症の代表的な症状の一つです。花粉が喉の粘膜に付着したり、鼻水が喉へ流れ落ちたりすることで、喉のイガイガやしつこい痰、声のかすれなどが起こります。
風邪は発熱や鼻水などの症状をともなうことが多いのに対し、ハンノキ花粉症の症状は喉が中心です。多くの風邪は1週間程度で治るので、花粉が飛散している時期に症状がずっと続く場合はハンノキ花粉症の可能性があります。
⑤皮膚のかゆみ
ハンノキ花粉症になると、皮膚のかゆみも症状として現れる傾向があります。まぶたや目の周り・頬やあご・首など、衣服で覆われていない部分に症状が出やすいことが、ハンノキ花粉症の特徴です。
皮膚のかゆみがある部分は、花粉が直接肌に付着し、炎症を起こしています。もともとアトピー性皮膚炎を持っていたり、乾燥肌であったりするお子さんは、皮膚のバリア機能が低下しているため、花粉皮膚炎の症状が悪化しやすい傾向があります。
ハンノキ花粉症とPFAS(花粉-食物アレルギー症候群)・口腔アレルギー症候群(OAS)との関係

ハンノキ花粉症の方は、花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)や口腔アレルギー症候群(OAS)を起こしやすいといわれています。(※2)
PFAS(Pollen-Food Allergy Syndrome:花粉‐食物アレルギー症候群)とは、花粉アレルギーを持つ人が、特定の果物や野菜・ナッツなどを食べた際に起こるアレルギー反応のことを指します。
花粉に含まれるアレルゲン(アレルギーの原因となるタンパク質)と、食べ物に含まれるタンパク質の構造が似ているため、免疫が誤って反応してしまうことで発症します。
症状は多くの場合、口の中のかゆみや喉の違和感などの軽度なものですが、まれにじんましん、腹痛、息苦しさ、アナフィラキシーなど全身に及ぶこともあります。
OAS(Oral Allergy Syndrome:口腔アレルギー症候群)は、口や喉に症状が現れる食物アレルギーを指す言葉で、その代表的なものがPFASです。
アレルギーの原因となる生の果物や野菜、ナッツなどを食べた直後から、およそ数分以内に口の中・周りに症状が現れる病気です。
主な症状は、口の中や喉のかゆみ、唇・舌・口内の腫れ、喉の閉塞感などがあります。多くの場合、症状は口の周りだけに現れ、しばらくすると自然に治まりますが、まれに全身に及ぶことがあります。
OASの症状を感じた場合は、原因となる食べ物を摂取した2時間以内に運動・入浴・飲酒を行うと、血行が促進されて症状が悪化する可能性があります。そのため、これらの行動は控えるようにしましょう。
また、果物を使った生のジュースは症状を強めることがあるため、摂取はなるべく控えてください。
ハンノキ花粉症の人はPFASが起こりやすい
さまざまな花粉症のなかでも、ハンノキ花粉症の方はPFASを併発しやすいと報告されています。(※2)
併発しやすい理由は、ハンノキ花粉の主要なアレルギー物質(アレルゲン)となるタンパク質が、リンゴやモモなどに含まれるタンパク質の構造と似ているためです。ハンノキアレルギーの方がリンゴなどを食べると、体がハンノキ花粉と勘違いをして、アレルギー反応を引き起こします。
PFASを起こしやすい食べ物
ハンノキ花粉症の方がPFASを引き起こしやすい食べ物は、以下の表のとおりです。

PFASの症状はほとんどが軽度ですが、ジュースのように一度に多くの果物を摂ると、アナフィラキシーを起こしやすいことがわかっています。
特に注意が必要なのが豆乳です。PFASの原因になる大豆のたんぱく質(Gly m 4など)は熱や発酵に弱いため、豆腐や納豆、味噌などは食べられることが多いですが、製造過程で加熱が少ない豆乳では症状が出やすく、重い症状につながることがあります。なお、PFASではない「大豆そのものの食物アレルギー」では原因となるたんぱく質が異なり、熱に強いものもあります。そのため、加熱した大豆製品でも症状が出ることがあります。(※3)
ほかの果物や野菜では、加熱すると症状が出にくくなるものもあります。例えば、生のリンゴでは口がかゆくても、アップルパイやジャムなら食べられることがあります。ただし、すべての食品が加熱で大丈夫になるわけではないため、「加熱したから大丈夫」と自己判断せず、食べられるかどうかは主治医と相談して決めましょう。
原因になりやすい花粉と食べ物
ハンノキ以外の花粉も含めて、交差反応を起こしやすい花粉と食品の組み合わせを、次の表にまとめています。

子どもで注意したいサイン
小さなお子さんは、口の中のかゆみや違和感をうまく説明できないことがあります。次のような様子がないか注意してみてください。
- 食事中に急に不機嫌になる、食べる手が急に止まる
- 口の周りを何度も触る、舌を出す
- のどを気にするしぐさをする
- 「からい」「いたい」と違う言い方をする
- 急に水を欲しがる
- いつもと違う咳やむせ込み、突然の嘔吐
- 顔色が悪く元気がない
症状が出たときの対処法
まず、その食品をそれ以上食べないことが大切です。口やのどの違和感だけで症状が広がらない場合は、安静にして様子を見ます。抗ヒスタミン薬を処方されている場合は、医師の指示どおり使用します。症状が強くなる、繰り返す場合は、早めに医療機関を受診してください。
次のような症状が1つでもあれば、アナフィラキシーの可能性があります。ためらわずに救急車を呼んでください。
- 全身にじんましんが広がる
- 咳き込み、ゼーゼー、息苦しさ
- 繰り返す嘔吐、強い腹痛
- 声がかすれる
- ぐったりして元気がない、意識がぼんやりする
エピペン®を処方されている場合は、医師の指示どおりすぐに太ももへ注射します。エピペンは症状の進行を一時的に抑える薬のため、使用後も必ず医療機関を受診してください。
受診のときに伝えてほしいこと
- 何を食べたか(生か加熱か、ジュースか)
- どれくらい食べたか
- 食べてから何分後に症状が出たか
- 口だけの症状か、じんましん・咳・嘔吐まであったか
- その時期に花粉症の症状があったか
- 以前にも同じ食品で症状が出たか
- 食後に運動したか、薬を飲んでいたか
可能であれば、唇の腫れやじんましんの写真も役立ちます。
ハンノキ花粉症の診断方法

ハンノキ花粉症かどうかは自己判断が難しいため、正確な診断は医療機関で受けることが大切です。
医療機関では、以下の診察や検査を行います。

アレルギー検査の結果と、症状の経過やOASの有無などを総合的に評価することで、ハンノキ花粉症の診断が確定します。
ハンノキ花粉症のセルフケアと治療法

ハンノキ花粉によるくしゃみや目のかゆみは、本当につらそうですよね。
しかし、適切な対策を行えば、症状を和らげることが期待できます。
ここでは、花粉症対策と日常生活での対策、治療法をご紹介します。
花粉症対策
花粉症対策の基本は、アレルギーの原因である花粉を吸わない・持ち込まない・付着させないことです。
外出時・帰宅時・室内でできる工夫は、以下を参考にしてください。

日々の生活で少し意識するだけで、体に入る花粉の量を減らし、症状の悪化を防げるでしょう。
日常生活での対策
花粉症の症状は、血流の変化や体の疲労によって悪化することがあります。
飲酒をすると血管が拡張し、鼻の粘膜が腫れて鼻づまりが強まるほか、アルコールの代謝によって炎症がさらに強まることもあります。
熱すぎるお湯での入浴も体温を急激に上げ、鼻づまりや目の充血を悪化させる原因です。
また、花粉症対策として運動を取り入れるのは良いことですが、やりすぎは逆効果です。長時間の運動や激しい運動は体力を消耗し、免疫バランスを乱して症状を悪化させることがあります。
くしゃみや鼻みず、目のかゆみといったアレルギー反応が強まることもあるため、無理のない範囲で行うことが大切です。
治療法
ハンノキ花粉症治療の基本は、先述した花粉そのものに対する対策と、症状を引き起こす物質の働きを抑える薬物療法です。
花粉症の治療では、症状を抑えるために以下のような薬が使われます。

ハンノキ花粉が飛び始める2週間ほど前から抗アレルギー薬の服用を開始することで、シーズン中の症状を軽く抑える効果が期待できます。
PFASがあるお子さんの日常生活での注意
症状が出ていない食品まで、自己判断で全部やめる必要はありません。実際に症状が出る食品は人によって異なり、一律に除去すると食生活が必要以上に狭くなってしまいます。まずは「どの食品で、どんな症状が出たか」を整理しましょう。
外食や市販の加工食品にも、原因となる果物や野菜が含まれていることがあります(スムージーやフレッシュジュース、果物入りドレッシング、生の果物を使ったケーキやパフェ、ソースに使われた果物のピューレなど)。外食のときは事前にアレルギーがあることを伝え、加工食品は原材料表示を確認しましょう。
学校・保育園と事前に情報を共有しましょう。
- どの食べ物で症状が出るか
- 食べた量や症状が出るまでの時間
- 給食での調整が必要なメニューや、加熱すれば食べられるか
- 症状が出たときの対応(うがい、内服薬の要否、安静など)
- アナフィラキシーのときの緊急連絡先、エピペン®の要否と保管場所・使い方
学校で配慮が必要な場合は、医師が記入する「学校生活管理指導表」をもとに、保護者・学校・主治医で情報を共有するのが基本です。園では施設ごとに書式や対応が異なるため、事前に確認しておきましょう。
まとめ
スギ花粉より早く始まる鼻の症状や、果物などを口にした際の喉のイガイガなどの症状は、ハンノキ花粉症の可能性があります。つらい症状は、アレルギーの原因を正しく突き止め、適切な治療やセルフケアを行いましょう。
日常生活のケアや医療機関への受診により症状の緩和が期待できます。
症状がつらいときは我慢せず、ぜひベスタこどもとアレルギーのクリニックにご相談ください。
https://www.besta-kids.jp/hay-fever-and-ar/
参考文献
- 環境省:「花粉症環境保護マニュアル2022」P16.
- Yukinori Kato, Taiyo Morikawa, Shigeharu Fujieda.Comprehensive review of pollen-food allergy syndrome: Pathogenesis, epidemiology, and treatment approaches.Allergol Int,2025,74,1,42-50.
- Dos Santos AL, Dos Santos PPB, Amaral GA, Soares EC, E Silva CAO, de Souza SVC.Effect of thermal processing on the antigenicity of allergenic milk, egg and soy proteins.J Food Sci Technol,2022,59,7,p.2617-2628.
- 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会「口腔アレルギー症候群診療ガイドライン」2025
- 日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2021 ダイジェスト版 第14章」
- アレルギーポータル「花粉症」「食物アレルギー」
- 文部科学省「学校給食における食物アレルギー対応指針」
- 文部科学省・日本学校保健会「学校におけるアレルギー疾患対応の基本的な考え方」
- 厚生労働省「学校生活管理指導表」
ベスタクリニックの公式LINEでは、離乳食のポイントやアレルギーに関する最新情報、練馬区周辺の小児医療情報などを配信中です。ぜひお友だち登録して、子育てにお役立てください!LINEからの予約も可能です。

QRコードでLINEの友だちを追加
LINEアプリの友だちタブを開き、画面右上にある友だち追加ボタン>[QRコード]を
タップして、コードリーダーでスキャンしてください。
監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
医療上の免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の赤ちゃんの状態や健康に関する問題については、必ず医師の診察を受けてください。この記事の情報だけで判断せず、ご心配な点はかかりつけ医にご相談ください。
この記事を監修した医師
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属

