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チック症の治し方と対処法|子どもへの接し方と受診の目安を解説

お子さんの頻繁なまばたきや、意味のない咳払い。「ただの癖かな?」と気になりつつも、どう対応すれば良いかわからず悩んでいませんか?
もしかしたら、本人の意思とは関係なく体が動いたり声が出たりする「チック症」かもしれません。チック症は、4〜11歳ごろの子どもに多く見られ、決してしつけや育て方の問題ではありません。成長とともに自然に改善し、完治することも多いです。
この記事では、チック症の正しい知識と具体的な治療法、そしてご家庭や学校でできる「症状を和らげる接し方」を詳しく解説します。正しい理解で、お子さんが安心して過ごせる環境づくりの第一歩を踏み出しましょう。
もくじ
チック症とは?意思と関係なく体が動く・声が出る状態

チック症とは、本人の意思とは関係なく体が動いたり、声が出たりする症状が、繰り返し起こる状態のことです。これは神経発達症の一つで、脳の神経の働きが関係します。神経発達症は先天的な脳の働きの偏りにより、物事の捉え方や行動パターンなどに違いがある病気であり、わざとやっているわけでも、しつけの問題でもありません。
近年の研究では、脳内の神経伝達物質(ドーパミンなど)のバランスが崩れることで、脳の動きを調整するスイッチが敏感になり、チック症が発症していると考えられています。(※1)
多くは4〜11歳ごろに始まり、症状は数週間〜数か月で自然に消えることも多いですが、1年以上続いたり、大人になるまで続いたりします。
チック症は「変な癖」や「ふざけている」ように見え、本人やご家族が周囲から誤解され悩むことも少なくありません。まずはチック症を正しく知り、適切に対応することが、本人の安心した生活につながる第一歩です。
チック症は成長とともに治ることが多い病気
チック症は4〜11歳ごろの子どもに見られ、成長とともに自然に消えることが多いです。成長に伴い脳の神経が発達し、神経伝達物質のバランスが安定化することが要因として考えられています。運動や衝動の抑制機能が向上し、自然に症状が改善・消失しやすくなります。
多くのケースでは、思春期以降に症状が治るでしょう。ただし、成人期まで症状が残る場合や、精神的ストレスなどで再発することがあるため、経過観察が重要です。個人差が大きいため、医療機関での経過観察をおすすめします。
チック症の種類

チック症は、ごく短い単純なものから、複数の動作が組み合わさった複雑なものまでさまざまです。現れ方によって大きく2種類に分けられます。体が動く「運動チック」と、声や音が出る「音声チック」について解説します。
運動チック
運動チックは、本人の意思とは関係なく、体の一部が突然、素早く、繰り返し動いてしまう症状です。動きの複雑さによって「単純運動チック」と「複雑運動チック」に分けられます。
運動チックの種類と具体例を以下の表にまとめています。

多くの場合、症状は顔や首の周りに出やすく、まばたきなどの単純運動チックから始まります。これらの動きは、自分でコントロールすることが難しいものです。
複雑運動チックは、一見すると意図的な行動に見えるため、周囲から「ふざけている」と誤解されやすいのが特徴です。ただし、これはお子さんがわざとやっているわけではなく、本人の意思とは関係なく起こる症状です。保護者の方も理由が分からず不安に感じるかもしれませんが、まずは責めずに見守ることが大切です。
音声チック
音声チックは、運動チックと同じく意思とは無関係に、突然声や音が出てしまう症状を指します。風邪でもないのに咳払いが続く場合は、音声チックの可能性があります。
単純な音から意味のある言葉まで症状は多様で、以下のように「単純音声チック」と「複雑音声チック」に分類されます。

特に、汚言症(おげんしょう)は本人に全く悪気がないにも関わらず、周囲に大きな誤解や衝撃を与えてしまうことがあります。意図せず発せられていることを、家族や学校の先生など、周囲の大人が正しく理解し、本人が安心して過ごせる環境を整えることが大切です。
チック症が疑われる場合の受診の目安

お子さんのチックのような症状に気づいたとき、次のようなサインが見られる場合は、専門医への相談をおすすめします。
- チック症で首が痛む
- チック症で勉強に集中ができない
- 落ち着きがない、忘れ物が多い
- 何度も手を洗う、ものの配置に強くこだわる
これらの項目に1つでもあてはまる場合は、まずはかかりつけの小児科や、児童精神科、心療内科に相談してみましょう。
チック症は神経発達症に含まれ、ADHDや自閉スペクトラム症、強迫症などが併存することもあります。てんかんとは異なり、チックが出ている最中も意識は保たれます。
チック症の治療法

チック症は「完全に治らない病気」ではありませんが、根本的な治療法はまだ確立されておらず、経過は人によって異なります。そのため、生活に支障がない場合には、必ずしも治療を行う必要はありません。
チック症の症状の程度や本人の年齢、生活への影響などを総合的に考えて、一人ひとりに合った治療法を選びます。ここでは、主な治療の柱である「行動療法」と「薬物療法」を解説します。
行動療法(ハビットリバーサル訓練・CBIT)
薬を使わない治療法として、まず考えられるのが「行動療法」です。
チック症に対しては「ハビットリバーサル訓練」や、それを発展させた「CBIT(包括的行動的介入法)」という方法が行われています。これは、本人が自分の意思でチックをコントロールする技術を、練習によって身につけていくトレーニングです。
以下の3つの段階を踏んで進められます。
- チックの感覚に気づく練習
- チックを別の動きに置き換える練習
(例)首を振る→肩甲骨を寄せて5秒キープ、咳払い→口を閉じて鼻で3呼吸など - チックが出やすい状況への工夫
この治療法は、本人の「治したい」という気持ちと練習への協力が不可欠なため、一般的には小学校高学年くらいからが対象です。専門家と一緒に、根気強く取り組んでいくことが大切になります。
薬物療法
行動療法だけでは改善が難しい場合や、チックの症状が強く、本人の心身に大きな負担がかかっている場合には、薬物療法を検討します。
薬物療法が考えられるのは、以下のようなケースです。
- 首を激しく振るチックで、首や肩に痛みが出ている
- チックが気になって授業や仕事に集中できない
- チックが原因で、お友達との関係に悩んでいる
- 本人が症状をつらく感じ、苦しんでいる
症状の強さや回数を抑え、日常生活への影響を減らすことが治療の目的です。ある研究では、症状が25%程度軽減するだけでも、生活の質が大きく向上する可能性があると報告されています。(※2)
チック症の治療では、ドパミンという神経伝達物質の働きを調整する薬(ドパミン受容体拮抗薬など)が使われることがあります。治療効果や副作用には個人差があるため、ごく少量から始め、本人の様子を見ながら慎重に調整していくことが大切です。
副作用として眠気や体重の増加がみられることもあります。保護者の方が少しでも気になる変化を感じたら、遠慮なくすぐに医師に相談してください。自己判断で薬の量を変えたり、中止したりせず、医師と一緒に様子を見守っていきましょう。
薬物療法における目標はチックをゼロにするのではなく、チックによる困りごとを減らすことです。
日常生活でのチック症への対処法

チック症の治療では、行動療法と薬物療法だけでなく、以下のような日常生活でできる対処法も大切です。
自然に受け止める姿勢
チック症は、本人がわざとやっているのではなく、自分の意思ではコントロールできない動きや発声です。「やめなさい」「またやってるの?」などと注意すると、かえって不安や緊張を高めます。チックの動きをからかったりすることは避けましょう。
大切なのは、チック症が出ても過剰に反応しないことです。症状よりも、本人の気持ちに目を向けましょう。ご家庭で心がけたい関わり方の3つのポイントは以下のとおりです。
- 症状を指摘せず、普段通りに接する
- 症状を自然に受け流す
- 不安な気持ちに寄り添う
周囲が「このくらい大丈夫」と受け止める姿勢こそが、本人にとっての心の支えになります。
ストレスを減らす
チック症は、心と体の状態を映し出す鏡のような側面があります。精神的なストレスや身体的な疲労は、症状を悪化させる大きな引き金になることが、多くの研究で知られています。(※3)日常生活の中で、ストレスを上手に管理していくことが重要です。
近年の研究では、チック症のある方は目に見える症状だけでなく、不安感や睡眠の問題、気分の落ち込みなどの「非運動症状」を併せ持つことも少なくないと報告されています。(※4)
目に見えないつらさも、本人にとっては大きなストレスです。ストレスの軽減には、十分な睡眠と休息を確保することが大切です。リラックスできる時間を意識的に持つことや、体を適度に動かす習慣を取り入れることも意識してみましょう。
こうした日常の積み重ねが、チック症の緩和にもつながっていきます。
安心できる環境を作る
チック症のあるお子さんが安心して過ごせる環境を整えるためには、まず家庭での雰囲気づくりが何より大切です。チック症を指摘したり注意したりせず、自然に受け入れることでお子さんの心は落ち着きやすくなります。
焦らず、できたことや頑張ったことを認めてあげる姿勢を意識しましょう。安心感が得られると、チック症への意識が和らぎ、症状が落ち着くこともあります。家庭でできる工夫としては以下のようなことがあります。
- チック症を注意せず見守る
- できたことを積極的に褒める
- リラックスできる時間をつくる
家庭で安心して過ごせる時間が増えることが、チック症とうまく付き合うための第一歩となります。
子どもへの接し方で家庭と学校でできること

チック症のお子さんを支えるうえで大切なのは、ご家庭と学校が協力し、お子さん自身が「ありのままで大丈夫だ」と感じられる環境を整えることです。
家庭と学校でできることとして、以下の4つを解説します。
- 家庭での接し方とNG対応
- 学校や園との連携方法
- 周囲への説明と理解の促し方
- 自己肯定感を育むための声かけ
家庭での接し方とNG対応
ご家庭は、お子さんにとって何よりも安心できる場所であるべきです。チック症は、不安や緊張、身体的な疲れによって悪化しやすい特徴があるため、ご家庭ではできる限りリラックスできる環境づくりを心がけましょう。
ご家庭で心がけたい接し方は以下のとおりです。
- 症状は気にせず、自然に受け流す
- 安心できる言葉をかける
- 十分な休息を心がける
- 好きなことに打ち込む時間を大切にする
反対に、叱る・注意する他、早急な改善を求めたり、他の子と比較したりするのはやめましょう。
保護者の方の不安な気持ちはお子さんにも伝わります。「このくらい大丈夫」と見守る姿勢が何よりの安心材料になります。
学校や園との連携方法
お子さんが一日の多くの時間を過ごす学校や園との連携は重要です。先生方にチック症を正しく理解してもらい、協力を得ることで、お子さんの学校生活における心理的な負担を大きく減らすことができます。
担任の先生や養護教諭(保健室の先生)に相談の時間を設けてもらいましょう。すでに先生から注意されたり、からかわれていたりするケースもあるので、お子さんの様子を見ながら事前に相談してください。先生に伝える内容は以下のとおりです。
- チック症という医学的な状態であること
- 具体的な症状と出やすい状況
- 家庭での対応方針
- 学校へのお願い
医師からの説明が書かれた手紙や、チック症に関するパンフレットなどを持参すると、より理解を得やすくなるためおすすめです。
周囲への説明と理解の促し方
クラスメイトや親戚、習い事の先生など、周囲の人たちにどう説明すれば良いか悩むこともあるでしょう。説明をする場合は、相手がわかりやすいように、簡単な言葉で伝えることを心がけます。
チック症は「変わった癖」ではなく、医学的に認められている症状であり、治療法についても研究が進められています。正しい情報を伝えることが、誤解や偏見を防ぐ第一歩になります。
説明のポイントと伝え方、学校生活で対応してもらうことの例は以下のとおりです。
- わざとではないことを強調する
- クラスメイトに具体的な症状を伝える
- テスト時間の延長や別室での受験を促す
周囲の正しい理解は、お子さんが安心して過ごせる環境に不可欠なサポートです。
自己肯定感を育むための声かけ
お子さんの自己肯定感を育むことは、チック症と向き合ううえでとても重要です。チックはその子のほんの一部分であり、性格や価値を決めるものではありません。
症状ばかりに注目するのではなく、お子さんの「できたこと」や「頑張っている姿」に目を向けましょう。たとえ小さなことでも、前向きな言葉で伝えることが自信につながります。
「あなたがいてくれるだけでうれしい」「昨日より落ち着いていたね」など、存在や努力を認める声かけを心がけます。お子さんが自分を肯定的に受け止められるようになることで、不安が減り、チック症との付き合い方も自然と前向きになります。
まとめ
チック症の治し方に「これをすれば完全に治る」という方法はありません。チックは本人の意思や育て方の問題ではなく、脳の働きやストレスの影響が関係しています。
無理に止めさせようとせず、「大丈夫だよ」と受け入れる姿勢が、お子さんの安心と回復への第一歩になります。家庭ではストレスを減らす工夫をし、学校と連携して安心できる環境を整えることが大切です。
チック症は時間とともに軽くなることも多いですが、長引く場合もあります。つらいときは一人で抱えず、専門の医療機関に相談しましょう。
参考文献
- Frey J, Malaty I. An overview of transcranial direct current stimulation for tic symptoms in Tourette’s syndrome. Expert Review of Neurotherapeutics, 2025, 25, 10, 1165-1173.
- McGuire JF, Karkanias GB, Bittman RM, Atkinson SD, Munschauer FE, Wanaski SP, Cunniff TM, Gilbert DL. Determining Clinically Meaningful Improvement in Children and Adolescents with Tourette Syndrome Receiving Pharmacotherapy. Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology, 2025, 35, 8, 447-453.
- Liu Q, Zhu Z, Luo F, Ding Y, Wang Y, Zhao C, Yuan B. Dopamine in Tourette syndrome: a 30-year bibliometric analysis of hotspot evolution. Frontiers in Neurology, 2025, 16, 1589842.
- Desjardins C, Nilles C, Gimeno H, Peall KJ, Martino D, Pringsheim T, Roze E. Nonmotor Symptom Scales in Children With Movement Disorders: A Scoping Review. Neurology, 2025, 105, 9, e214289.
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監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
医療上の免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の赤ちゃんの状態や健康に関する問題については、必ず医師の診察を受けてください。この記事の情報だけで判断せず、ご心配な点はかかりつけ医にご相談ください。
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
