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子供の破傷風はどんな症状?注意すべきサインと早期受診の重要性

もくじ
注意すべきサインと早期受診の重要性
公園で転んだ擦り傷や、道端でつまずいた小さな切り傷。子どもにはよくある日常の出来事ですよね。
しかし実は命を脅かす「破傷風」のきっかけになることがあります。
破傷風は潜伏期間が3日から3週間と長く、怪我のことを忘れかけた頃に、口が開きにくい・顔がひきつるといったサインが出てきます。初めは風邪や疲れと勘違いしてしまうこともあり、見過ごされやすいのがとても怖いところです。
この記事では、そんな破傷風の危険なサインを見逃さないために、保護者の方が知っておくべき症状と、ためらわずに病院を受診すべきタイミングについて、詳しく解説します。
子どもの破傷風で注意すべき症状

子どもの破傷風で注意すべき症状には、以下があります。
①口が開きにくい(開口障害)
②首や背中の硬直や反り返り
③刺激で起こる全身けいれん
④新生児に多い哺乳障害・不機嫌
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①口が開きにくい(開口障害)
破傷風の初期に多いのが、口が開きにくくなる症状です。専門的には開口障害(かいこうしょうがい)と呼ばれ、あごや顔の筋肉がこわばるために起こります。
最初はあごがだるい、口元が硬いといった違和感から始まり、数日で口を大きく開けられなくなることがあります。さらに進むと、笑っていないのに顔が引きつる痙笑(けいしょう)という表情が見られることもあります。
お子さんの口をそっと開けてみて、指が1〜2本しか入らないようなら、早めに受診してください。
②首や背中の硬直や反り返り
破傷風の毒素が全身に広がると、首や肩、背中など大きな筋肉が自分の意思とは関係なく硬くなっていきます。
初めは首が張る、肩が凝るといった感覚に似ていますが、次第に体全体が強い緊張状態となり、悪化すると体が大きく反り返る後弓反張(こうきゅうはんちょう)という状態が見られることがあります。
このときは背中が浮くほど反り返り、手足も突っ張って強い痛みを伴います。さらに胸や横隔膜まで硬くなると、呼吸が苦しくなる危険もあります。
命に関わるサインですので、少しでも疑わしい様子があればためらわずに救急車を呼んでください。
③刺激で起こる全身けいれん
破傷風が重症化すると、神経が過敏になり、光や音、体に触れるといった小さな刺激でも全身に激しいけいれんが起こります。けいれんは突然始まり、呼吸が止まって顔色が悪くなることもあり、大変危険です。
この段階になると家庭での対応はできず、集中治療室(ICU)で静かな環境を整え、鎮静薬や人工呼吸器を使った専門的な管理が必要となります。お子さんに少しでも普段と違う様子が見られたら、大げさかなと思わずに、できるだけ早く医療機関に相談してください。
破傷風の感染原因と経路

ここでは、どのような状況で破傷風に感染しやすいのか、具体的な原因と経路を詳しく解説します。
- 土や砂に潜む菌
- 錆びた釘やガラスの傷
- 動物の咬み傷やひっかき傷
土や砂に潜む菌
破傷風菌は土の中に多く存在し、動物のフンによって広がります。
公園での擦り傷やガーデニング中の切り傷、キャンプや災害での怪我など、土や泥が入り込んだ傷は特に注意が必要です。浅い傷でも菌が侵入することがあるため、土で汚れたときは傷の大小にかかわらず、すぐにたっぷりの水で洗い流しましょう。
錆びた釘やガラスの傷
錆びた釘を踏むと破傷風になるといわれますが、実際の原因は錆ではなく、その釘やトゲがあった土の中に破傷風菌が潜んでいることです。特に釘やガラス片、木のトゲでできる細くて深い傷は要注意です。
傷口が小さくても奥まで菌が入り込み、すぐに塞がってしまうため、菌が増えやすい環境になってしまいます。木のトゲは体内に残りやすく、異物と一緒に菌がとどまることもあります。
見た目は浅い擦り傷より軽そうに見えても、こうした傷はかえって危険なことがあります。お子さんが外で遊んでいて釘やトゲ、ガラス片で怪我をしたときは、「小さい傷だから大丈夫」と自己判断せず、必ず医療機関を受診してきちんと処置を受けてください
動物の咬み傷やひっかき傷
犬や猫などの動物の口や爪には破傷風菌を含むさまざまな菌が潜んでいることがあります。咬み傷は深く刺さりやすく、血流も悪くなるため菌が増えやすい環境になりがちです。
さらにパスツレラ症など、他の感染症の心配もあります。
咬まれたりひっかかれたりしたときは、まず大量の水でしっかり洗い流すことがとても大切です。
破傷風から子どもを守る予防と治療

大切なお子さんを破傷風から守る上で、最も確実で重要なのは「予防」です。破傷風は一度発症すると、集中治療室での管理が必要になるなど治療が大変で、命に関わることもある重篤な感染症です。
幸いなことに、破傷風はワクチンで高い効果が期待できる「予防可能な病気(VPD: Vaccine Preventable Diseases)」の一つです。予防の基本は、定められたスケジュールに沿ったワクチン接種を完了させることです。
万が一、ワクチン接種が不十分な状態でお子さんが怪我をしてしまった場合や、破傷風が疑われる症状が出た場合にも、発症を防いだり、重症化を抑えたりするための治療法があります。
ここでは、破傷風の予防と治療の具体的な方法について詳しく解説します。
五種混合ワクチンの重要性
お子さんを破傷風から守る最も確実な方法は、定期接種の五種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)です。(※1)破傷風だけでなく、以下の病気を同時に予防できる、とても大切なワクチンです。
- ジフテリア:のどに膜ができて窒息や心筋障害を起こすことがある
- 百日せき:激しい咳が長く続き、乳児では呼吸停止の危険がある
- ポリオ:手足に麻痺が残る可能性がある
- Hib感染症:細菌性髄膜炎など重い感染症を起こす
このワクチンは毒素の毒性だけをなくした「トキソイド」を使っており、体に抗体を作らせる練習をしてくれます。そのため、もし菌が入っても体がすぐに防御できるようになります。
接種の対象者とスケジュール
2024年度からは、五種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)が使われています。接種スケジュールは以下の通りです。
- 初回接種:生後2~7か月に開始し、20日以上の間隔で3回
- 追加接種:初回終了から6か月以上あけて1回(6~18か月が標準)
また、不活化ワクチンでは時間の経過とともに抗体価が低下しやすいため、小学校入学前後で以下のワクチン接種も推奨されています。
- 小学校入学前:ジフテリア・百日せき・破傷風の3種混合ワクチン(DPT)+ポリオ
- 小学校入学後:ジフテリア・百日せき・破傷風の3種混合ワクチン(DPT)
海外ではDTaPというワクチンが使用されていますが、日本では導入されていません。そのため代替としてDTPを使用します。ただし、DTPは抗原量がやや多く、接種部位の腫れや発熱などの副反応がやや強く出る可能性があります。
怪我後のトキソイド接種
ワクチン接種をきちんと完了していても、状況によっては追加の対応が必要になることがあります。これは「曝露後予防(ばくろごよぼう)」と呼ばれ、菌に感染した可能性が高い状況で、発症を防ぐために行われる緊急措置です。
特に、土や泥でひどく汚れた傷や、錆びた釘を踏み抜いたような深い傷など、破傷風の発症リスクが極めて高い怪我をした場合は、予防的に「破傷風トキソイド」ワクチンを緊急で接種することがあります。
抗菌薬と免疫グロブリン治療
万が一、破傷風を発症してしまった場合には、すぐに入院して集中治療を受ける必要があります。
治療の中心は、菌を攻撃して新たな毒素が作られるのを防ぐ抗菌薬と、すでに体に広がった毒素を中和する抗破傷風ヒト免疫グロブリン(TIG:商品名テタノプリン)の投与です。これらを同時に行うことで、病気の進行を抑えます。
さらに、強いけいれんを抑えるための鎮静薬や、呼吸を助ける人工呼吸器など、お子さんの体を守るために多くのサポートが必要になります。
とても大きな負担を伴う治療となるため、やはり一番大切なのは発症を防ぐことです。ワクチンでしっかり予防してあげましょう。
まとめ
破傷風は、公園での擦り傷や錆びた釘など、日常のささいな怪我が原因で命を脅かすこともある恐ろしい病気です。だからこそ、最も重要なのはワクチンによって確実に予防することです。
お子さんの母子健康手帳を確認し、定められたスケジュール通りに予防接種が完了しているかを今一度確かめてください。接種の遅れや抜け漏れがあれば、早めに医療機関で相談することが大切です。
ベスタこどもとアレルギーのクリニックでは、破傷風ワクチンの定期接種を受け付けているので、ぜひお気軽にご相談ください。
https://www.besta-kids.jp/vpd/tetanus/
参考文献
- 厚生労働省.「5種混合ワクチン」
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監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
医療上の免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の赤ちゃんの状態や健康に関する問題については、必ず医師の診察を受けてください。この記事の情報だけで判断せず、ご心配な点はかかりつけ医にご相談ください。

初めまして。
当院のホームページをご覧くださりありがとうございます。
私は小児科の中でも特にアレルギーと呼吸器を専門にしていますが、赤ちゃんの体重が増えない、おねしょが無くならない、ニキビが気になる、便秘気味など少しでも心配なことや不安に感じることがあれば、何でもご相談していただければと思います。
こどもたちがなるべく制限を受けることなく笑顔で日々を過ごし、自分らしく元気に成長できるよう、ご家族の不安を取り除けるよう、「優しさ」を持ったクリニックを目指して、地域の子育てに貢献できるよう頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
