トピックス
子どものマイコプラズマ感染症|症状・検査・治療・登校の目安を解説

「風邪だと思っていたのに、子どもの咳がなかなか治まらない」、そんな不安を抱えていませんか?
熱が下がっても、数週間にわたりしつこい咳が続く場合は「マイコプラズマ感染症」の可能性があります。初期症状が風邪と似ているため見過ごされやすく、合併症を起こすこともあるため注意が必要です。
この記事では、マイコプラズマ感染症の症状や検査方法、治療の流れをわかりやすく解説します。多くの保護者が悩む「登園・登校の再開時期」の目安も解説しています。正しい知識を持つことで、お子さんの回復を安心してサポートできるようになります。
もくじ
子どものマイコプラズマ感染症の主な症状

マイコプラズマ感染症にはいくつかの特徴があり、特に肺炎を呈した場合は「しつこい咳」が重要なサインになります。マイコプラズマ肺炎でみられる主な症状として、以下の3つを解説します。
- 発熱・だるさ・頭痛・喉の痛みなどの初期症状
- 咳が長引く
- 中耳炎・胸膜炎・心筋炎・髄膜炎などの合併症
発熱・だるさ・頭痛・喉の痛みなどの初期症状
マイコプラズマ肺炎の初期症状は風邪とよく似ており、早期に見分けるのは難しいのが特徴です。潜伏期間は2〜3週間と長く、症状はじわじわと現れるため注意が必要です。
以下のような症状が見られる時は、マイコプラズマ肺炎の可能性も考えて観察しましょう。
- 発熱:高熱のこともあれば微熱が続く場合もある
- 全身のだるさ:倦怠感が強く元気がなくなる
- 頭痛:特に発熱時に強く訴えることが多い
- 喉の痛み:イガイガ感や嚥下時の痛み
熱が下がった後も咳が悪化し長引く場合は、マイコプラズマ肺炎を疑いましょう。初期段階で気づくのは難しいものの、こうした経過を知っておくことで受診の判断がしやすくなります。
咳が長引く
マイコプラズマ肺炎で特徴的なのは、解熱後も続くしつこい咳です。発熱や倦怠感が治まっても、咳だけが3〜4週間、場合によっては1か月以上続くことがあります。咳は以下のような経過をたどる傾向です。

しつこい咳は、マイコプラズマが気道の粘膜に付着し、有害物質を放出して細胞を傷つけることが原因とされています。夜布団に入った時や朝起きた時、体を動かしたあと、冷たい空気を吸い込んだ時などに悪化しやすい傾向があります。
眠れないほどの咳が2週間以上続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
中耳炎・胸膜炎・心筋炎・髄膜炎などの合併症
マイコプラズマ肺炎は多くの場合は自然に回復しますが、まれに肺以外の臓器へ影響が及ぶ「肺外合併症」を起こすことがあります。
代表的な合併症を以下の表にまとめています。

こうした合併症は、マイコプラズマが血流に乗って全身に広がることや、免疫反応の過剰によって起こると考えられています。次のような症状が出た場合は、重い合併症の可能性があるため、夜間や休日でも速やかに医療機関を受診してください。
- 息が苦しそうで肩で息をしている、呼吸のたびに胸が大きくへこむ
- 胸の痛みを強く訴える
- 顔色や唇が青白い、紫色になっている
- ぐったりして意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しない
- けいれんが起こる
- 強い頭痛や繰り返す嘔吐がある
上記の症状は体が発するSOSです。普段と違うお子さんの様子に気づいたら、迷わず受診することが早期対応につながります。
マイコプラズマ感染症の検査方法

クリニックや病院で行われる主な検査は以下の5つです。
- 迅速検査
- 血液検査
- PCR検査
- LAMP検査
- 画像検査(胸部レントゲン)
迅速検査
迅速検査は、インフルエンザ検査と同じように喉や鼻の奥を綿棒でこすり、採取した検体をその場で調べる方法です。マイコプラズマ菌が持つ特有のタンパク質(抗原)の有無を確認でき、結果は15分ほどでわかります。
診察中に感染の可能性を推測できる点が大きなメリットであり、早めの治療開始につながる手がかりとなります。ただし、検査の精度には限界があり、迅速検査だけで診断を確定することはできません。症状の経過や他の検査所見とあわせて、総合的に判断されます。検査方法が簡便であり、すぐに結果がわかるというメリットがありますが、精度はいまひとつであり、陰性となった場合もマイコプラズマ感染症の可能性は少なからず残ってしまうのがデメリットです。
血液検査
血液検査は、体内の炎症の程度を数値で把握できる検査です。診断を確定するものではありませんが、治療方針を判断するうえで欠かせない情報を与えてくれます。
具体的には、以下のような項目を調べることで病気の特徴を把握します。

一般的な抗菌薬は効きにくい特性があるため、早期に適切な診断を行い、治療につなげることが重要です。
PCR検査・LAMP検査
PCR検査は、マイコプラズマ菌が持つ特有の遺伝子を増幅して検出する方法です。喉の粘液などを採取して行う点は迅速検査と同じですが、精度の高さは大きく異なります。
PCR検査は、ごく少量の菌でも検出できるほど感度が高く、現在マイコプラズマ感染症の確定診断において信頼性の高い検査とされています。迅速検査で陰性だった場合や、診断をより確実にしたい場合に用いられます。
結果が出るまでに数日を要することや、対応できる医療機関が限られる点はデメリットです。
近年では、PCRと同じように遺伝子を増幅して調べる方法としてLAMP検査も使われています。LAMP検査は等温でDNAを増幅できるため、PCRよりも短時間で結果が得られるのが特長です。
画像検査(胸部レントゲン)
胸部レントゲン検査は、肺の中で炎症が起きているかを確認するために欠かせない検査です。肺炎の有無や炎症の広がりを直接把握でき、診断や治療方針を決めるうえで大きな役割を果たします。
マイコプラズマ肺炎の場合、症状が強いわりに画像の影は比較的薄く、すりガラスのように淡く映るのが特徴です。症状と画像所見のギャップが、診断のヒントになることもあります。
放射線の影響を心配される保護者の方もいますが、胸部レントゲン1回あたりの被ばく量はわずかで、安全性は十分に配慮されています。
検査結果が陰性でも安心しないことが大切
マイコプラズマ感染症の検査は、画像検査や血液検査、迅速検査、PCR検査など種類によって精度が異なります。特に迅速検査は偽陰性(実際に感染していても陰性と出てしまうこと)が多く、参考程度にしかならないケースもあります。
「検査結果が陰性だから安心」と自己判断せず、咳や発熱、体調不良などの症状が続く場合は、医師に経過観察してもらうことが大切です。
症状が長引いたり、熱がぶり返したりする場合には、ためらわず再受診して診断や治療方針を適宜見直してもらいましょう。どの検査を行うか、最終的にどのように判断するかは、お子さんの症状や流行状況を踏まえて医師が決めます。
マイコプラズマ感染症の治療法

マイコプラズマ感染症の治療法として、以下の3つを解説します。
①抗菌薬治療
②対症療法
③入院を伴う治療(ステロイド薬や酸素を投与)
①抗菌薬治療
マイコプラズマ感染症の治療の中心は抗菌薬(抗生物質)の内服です。
原因となるマイコプラズマ菌は「細胞壁」を持たない特殊な構造をしており、一般的な肺炎に使われる抗菌薬は効きません。そのため、細胞壁以外の仕組みに作用する薬が必要になり、以下のような薬が使用されます。

処方された薬は、症状が軽くなっても自己判断で中断してはいけません。途中でやめると菌が再び増え、薬が効かない耐性菌を生む原因にもなり得ます。
医師の指示に従い、最後まできちんと飲み切ることが大切です。
②対症療法
マイコプラズマ感染症では、抗菌薬が効果を発揮するまでに時間がかかるため、その間は「対症療法」で症状を和らげます。咳が強い時は、鎮咳薬や去痰薬で夜間の眠りを妨げないようにすることもあります。
ご家庭で心がけたいケアは以下の3つです。
- 水分補給:麦茶や経口補水液を少しずつ飲ませる
- 十分な休養:静かな環境でしっかり休ませる
- 消化の良い食事:おかゆやスープなどを少量ずつ与える
薬と家庭での工夫を組み合わせ、安心して体を休められる環境を整えることが大切です。
③入院を伴う治療(ステロイド薬や酸素を投与)
マイコプラズマ感染症の多くは通院で回復しますが、症状が悪化すると入院が必要になることがあります。ご家庭で観察する際に、以下のような「普段と違う」と感じるサインを見逃さないことが大切です。
【入院を検討すべきサイン】
- 呼吸が苦しく肩を上下させて息をしている
- 呼吸のたびに胸がペコペコへこむ
- 顔色や唇が青白い、紫色になっている
- 水分や食事がとれずぐったりしている
- おしっこの量が極端に少ない
- 呼びかけに反応せず意識がはっきりしない
入院すると、点滴で抗菌薬や水分を補給し、必要に応じて酸素投与で呼吸を助けます。炎症が強い場合は、免疫反応を抑える目的でステロイド薬を点滴することもあります。
入院治療は、24時間体制で安全を守る大切な手段です。不安なサインが見られる場合は医療機関を受診しましょう。
登校・登園再開の目安

マイコプラズマ感染症は、他の感染症と比べて登校・登園の判断が難しいのが特徴です。症状が激しい急性期は出席停止となりますが、法律で定められた明確な出席停止期間はありません。(※2)
安全に集団生活へ復帰するための目安として、以下を参考にしてください。

家庭で確認できる目安は参考になりますが、登校・登園の最終判断はかかりつけ医が行います。診察を受け、許可を得たうえで復帰させることが大切です。
マイコプラズマ感染症は子どもから大人にもうつる病気
マイコプラズマ感染症は子どもに多く見られる感染症ですが、家族内で広がりやすく、大人にもうつることがあります。
特に家庭内では咳やくしゃみを介した飛沫感染や、接触感染によって感染が拡大しやすくなります。大人が感染すると、咳が長引き、仕事や日常生活に支障をきたすこともあります。
現時点では、マイコプラズマ感染症に有効なワクチンはありません。
予防のためには、咳エチケットを守り、マスクの着用やこまめな手洗いを徹底することが重要です。タオルや食器の共有を避ける、部屋の換気を行うなど、家族全員が基本的な感染対策を意識することで家庭内感染のリスクを軽減できます。
まとめ
マイコプラズマ感染症は、風邪と見分けがつきにくいですが、大きな特徴は熱が下がった後もしつこく続く頑固な咳です。治療には専用の抗菌薬が必要となり、登園・登校のタイミングも咳が長引くため、判断に迷いやすいです。
お子さんの咳が2週間以上続く、夜も眠れないほど咳き込むなど、「ただの風邪じゃないかも?」と感じたら、受診を考えるサインとなります。自己判断で様子を見ずに、まずはかかりつけの小児科へ相談しましょう。
早期に適切な診断と治療を受けることが、お子さんのつらい症状を和らげ、回復への近道になります。
ベスタ子どもとアレルギーのクリニックでは、マイコプラズマ感染症の検査を実施しています。お子さんの症状に不安を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
https://www.besta-kids.jp/pediatrics/
参考文献
- Sandra Viz-Lasheras, Alberto Gómez-Carballa, Xabier Bello, Irene Rivero-Calle, Ana Isabel Dacosta, Myrsini Kaforou, Dominic Habgood-Coote, Aubrey J Cunnington, Marieke Emonts, Jethro A Herberg, Victoria J Wright, Enitan D Carrol, Stephane C Paulus, Werner Zenz, Daniela S Kohlfürst, Nina Schweintzger, Michiel Van der Flier, Ronald de Groot, Luregn J Schlapbach, Philipp Agyeman, Andrew J Pollard, Colin Fink, Taco T Kuijpers, Suzanne Anderson, Ulrich Von Both, Marko Pokorn, Dace Zavadska, María Tsolia, Henriëtte A Moll, Clementien Vermont, Michael Levin, Federico Martinón-Torres, Antonio Salas. A diagnostic host-specific transcriptome response for Mycoplasma pneumoniae pneumonia to guide pediatric patient treatment. Nat Commun, 2025, 16(1), p.673.
- 厚生労働省.「マイコプラズマ肺炎増加に関する学会からの提言について(周知)」
ベスタクリニックの公式LINEでは、離乳食のポイントやアレルギーに関する最新情報、練馬区周辺の小児医療情報などを配信中です。ぜひお友だち登録して、子育てにお役立てください!LINEからの予約も可能です。

QRコードでLINEの友だちを追加
LINEアプリの友だちタブを開き、画面右上にある友だち追加ボタン>[QRコード]を
タップして、コードリーダーでスキャンしてください。
こどもの病気コラムの一覧です。
https://www.besta-kids.jp/2024/06/14/942/
監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
医療上の免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の赤ちゃんの状態や健康に関する問題については、必ず医師の診察を受けてください。この記事の情報だけで判断せず、ご心配な点はかかりつけ医にご相談ください。

初めまして。
当院のホームページをご覧くださりありがとうございます。
私は小児科の中でも特にアレルギーと呼吸器を専門にしていますが、赤ちゃんの体重が増えない、おねしょが無くならない、ニキビが気になる、便秘気味など少しでも心配なことや不安に感じることがあれば、何でもご相談していただければと思います。
こどもたちがなるべく制限を受けることなく笑顔で日々を過ごし、自分らしく元気に成長できるよう、ご家族の不安を取り除けるよう、「優しさ」を持ったクリニックを目指して、地域の子育てに貢献できるよう頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
