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こどものしもやけ(凍瘡)について
冬の寒さが厳しい季節になると、子どもたちの小さな手足に現れる「しもやけ」。正式名称は「凍瘡(とうそう)」といい、赤く腫れたり、かゆみを伴ったりする皮膚の病気です。
実は、しもやけは、子どもだけでなく大人もなりやすく、放置すると重症化し、日常生活に支障をきたすこともあります。
この記事では、こどものしもやけについて、原因や症状、治療法、そして予防方法まで詳しく解説します。ぜひ最後まで読んで、しもやけから子どもたちを守りましょう。
しもやけ(凍瘡)とは何か?
しもやけ(凍瘡)は、冬の寒さが原因で手足の指先、耳たぶ、鼻の頭など、体の端の部分が赤く腫れたり、かゆみを伴う皮膚の病気です。特に子どもたちの小さな手足は大人よりも皮膚が薄く、冷えに対する抵抗力が低いため、しもやけになりやすいです。「しもやけ」という名前は、まるで霜に焼かれたように見えることからつけられました。医学的には「凍瘡」と呼ばれ、冬の寒い時期に多く見られます。
しもやけ(凍瘡)の原因と発症メカニズム
しもやけは、寒い環境で長時間過ごすことによって血行が悪くなるために発生します。寒い場所に長時間いると、体の体温を保とうとして、手足の指先や耳たぶなど、体の端っこの部分にある血管が縮んでしまいます。これは、まるで水道管のバルブを閉めるように、血液の流れを絞ることによって、体の熱が外に逃げないようにするためです。血管が縮むことで、その部分への血流が悪くなってしまいます。血流が悪くなると、その部分に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなり、皮膚や皮下組織がダメージを受けてしまいます。その結果、体はこのダメージを修復しようと、炎症反応を起こします。炎症反応とは、痛み、腫れ、熱感などを引き起こす体の防御反応のことです。ダメージを受けた皮膚は、赤く腫れ上がったり、かゆみを起こしたりします。これが、しもやけの症状です。
しもやけ(凍瘡)の症状
しもやけの主な症状には以下のようなものがあります
・かゆみ
しもやけになると、我慢できないほど強い「かゆみ」を感じる場合があります。特に、温かい部屋に入ったり、お風呂に入ったりして、冷えていた手足が急に温まると、かゆみが強くなることがあります。これは、温まることで血管が再び拡張し、血液の流れが急激に変化するためです。
・腫れ
指先や耳たぶなどが、ぷっくりと腫れてしまうことがあります。これは、寒さで血管が縮み、血の流れが悪くなることで、間質液がたまってしまうためです。間質液とは、血液中の成分の一部が血管から染み出したもので、細胞に栄養を供給したり、老廃物を回収したりする役割があります。
・赤みや紫色の変色
しもやけ部分は、赤や紫色に変色することがあります。これは、血行が悪くなっていることを示しています。健康な状態では、血液中の酸素が皮膚に十分に供給され、ピンク色に見えます。しかし、しもやけなどで血行が悪くなると、酸素を十分に含んだ血液が供給されなくなり、皮膚が赤や紫色に変色します。
・痛み
ひどいしもやけになると、触ると痛い、歩くのがつらいなどの「痛み」を感じる場合もあります。これは、皮膚の下にある神経が、腫れや炎症によって刺激されるためです。しもやけの痛みは、ズキズキとした痛み、ヒリヒリとした痛み、チクチクとした痛みなど、さまざまです。
・水ぶくれ
症状が悪化すると、水ぶくれができることがあります。水ぶくれは、皮膚の下に間質液がたまった状態です。しもやけで水ぶくれができる場合は、皮膚が炎症を起こして、間質液が過剰に分泌されるために起こります。水ぶくれが破れると、そこから細菌感染を起こし、皮膚が炎症を起こすことがあります。
しもやけの症状の程度は人それぞれで、軽いものから重いものまでさまざまです。一般的には1~2週間で症状が改善しますが、症状が長引く場合や悪化する場合は、早めに医師の診察を受けることが重要です。
しもやけ(凍瘡)の治療法
しもやけの治療には、基本的に以下の方法が用いられます
・保温
しもやけの部分を温めることで、血行を促進し、症状を和らげます。温かいお湯で温浴したり、カイロなどで温めるのも効果的です。ただし、熱いお湯に長時間浸かったり、カイロを直接肌に当てたりすると、逆に症状を悪化させてしまうこともあるので注意しましょう。お湯の温度は、40℃くらいが適温です。ぬるめのお湯にゆっくりと浸かるようにしましょう。また、カイロは、必ずタオルなどに包んで、間接的に温めるようにしましょう。具体的には、ウールの手袋やヒートテック素材の靴下、耳当てなどが効果的です。
・マッサージ
しもやけの部分を優しくマッサージすることで、血行を促進し、症状の改善を促します。マッサージは、心臓に向かって、優しく行うようにしましょう。心臓に向かってマッサージをすることで、血液を心臓に戻しやすくし、血行を促進することができます。例えば、指先を軽くつまんで揉みほぐす方法や、手のひらで円を描くように優しくマッサージする方法があります。
・外用薬
しもやけの症状を和らげるために、いくつかの種類の外用薬が使用されます。かゆみや炎症を抑えるステロイド外用薬、血行を促進するヘパリン類似物質外用薬、ビタミンEなどを配合した軟膏などがあります。ステロイド外用薬は、炎症を抑える効果が強い反面、副作用が出る可能性もあるため、医師の指示に従って、適切に使用することが大切です。ヘパリン類似物質外用薬は、血液を固まりにくくする働きがあり、血行を促進する効果があります。ビタミンEは、血管を拡張し、血行を良くする効果があります。
・内服薬
症状が重い場合や、外用薬だけでは効果が不十分な場合には、内服薬が処方されることがあります。血行を改善するビタミンE製剤、炎症を抑える非ステロイド性消炎鎮痛剤などが処方されます。ビタミンE製剤は、血管を拡張し、血行を良くする効果があります。非ステロイド性消炎鎮痛剤は、炎症を抑え、痛みを和らげる効果があります。
・形成外科的治療
しもやけが重症化し、通常の治療では効果が見られない場合には、形成外科的治療が適応されることがあります。例えば、血行を改善するための外科的処置や、壊疽した組織の切除などが行われます。
しもやけ(凍瘡)の予防方法
しもやけを予防するためには、日頃から体を冷やさないように工夫することが大切です
・保温
特に、手先、足先、耳など、体の末端部分は冷えやすいので、しっかりと保温しましょう。外出時は、手袋、マフラー、帽子、耳あてなどを着用し、靴下や靴も保温性の高いものを選びましょう。素材としては、ウールやフリースなど、保温性に優れた素材がおすすめです。また、締め付けのきつい服装は、血行を悪くするため、避けましょう。また、汗で蒸れた手袋や靴下はすぐに脱ぎ、取り替えるようにしましょう!
・服装
体を締め付けるような服装は、血行を悪くするため避けましょう。重ね着をして、体温調節しやすいようにしましょう。重ね着をする場合は、素材の異なる衣服を重ね着することで、より保温効果を高めることができます。例えば、肌着には吸湿発熱素材のものを着用し、その上に保温性の高いフリースやセーターなどを重ね着すると良いでしょう。
・入浴
ぬるめのお湯にゆっくりと浸かり、体を芯から温めましょう。熱いお湯は、かえって皮膚の乾燥を招き、しもやけが悪化することがあるので注意しましょう。お湯の温度は、38~40℃くらいが適温です。また、入浴剤の中には、血行促進効果のあるものもあるため、試してみるのも良いでしょう。入浴後は、しっかりと保湿をすることも大切です。
・栄養バランス
バランスの取れた食事を心がけ、体の抵抗力を高めましょう。特に、ビタミンEやビタミンCは、血行を促進する効果があるので、積極的に摂取するようにしましょう。ビタミンEは、アーモンド、ほうれん草、かぼちゃなどに多く含まれています。ビタミンCは、レモン、イチゴ、ブロッコリーなどに多く含まれています。例えば、アーモンドを使ったスナックや、ほうれん草とレモンを使ったサラダなどが簡単に作れるレシピとしておすすめです。
・適度な運動
適度な運動は、血行を促進し、冷え性を改善する効果があります。軽いストレッチやウォーキングなど、無理のない範囲で体を動かすようにしましょう。運動は、1日30分程度を目安に行うと良いでしょう。また、運動前にストレッチを行うことで、怪我の予防にもなります。
禁煙:喫煙は、血管を収縮させ、血行不良を引き起こすため、禁煙するようにしましょう。喫煙は、しもやけだけでなく、動脈硬化や心筋梗塞などの病気のリスクを高めるため、百害あって一利なしです。禁煙をすることで、しもやけの予防だけでなく、健康的な生活を送ることができます。こどもも副流煙(タバコからでてくる煙のことです)を吸ってしまうことがあるので、居宅内の喫煙は極力控えるようにしましょう。
しもやけ(凍瘡)の重症化や合併症
しもやけは、一般的には命に関わるような病気ではありません。しかし、適切な治療を行わないで放置したり、掻きむしったりすることで症状が悪化し、重症化することがあります。重症化すると、日常生活に支障をきたす場合もありますので、注意が必要です。
しもやけの合併症として、以下のようなものがあります
・皮膚の感染
しもやけの部分を掻きむしったり、水ぶくれが破れたりすることで、細菌が侵入しやすくなり、皮膚の感染症を起こすことがあります。皮膚が赤く腫れ上がり、痛みや熱感を伴うことがあります。また、膿が出てきたり、悪臭を放ったりすることもあります。皮膚の感染症を起こした場合は、抗生物質の内服や外用などの治療が必要となります。
・潰瘍
しもやけが重症化すると、皮膚に潰瘍ができることがあります。潰瘍は、皮膚や粘膜にできた傷が、なかなか治らずに、皮膚の組織が欠損した状態のことです。しもやけが原因で潰瘍ができる場合は、血行不良によって、皮膚に十分な酸素や栄養が行き届かなくなり、皮膚の組織が壊死してしまうために起こります。潰瘍は、治りにくく、跡が残ってしまうこともあります。潰瘍の治療には、薬物療法や外科的療法などがあります。
;壊疽
さらに症状が進行すると、組織が壊死し、壊疽を起こすことがあります。壊疽は、血流が極端に悪くなることで、組織が腐ってしまう状態のことです。しもやけが原因で壊疽が起こる場合は、重度の血行不良によって、皮膚や皮下組織、筋肉、骨などが壊死してしまうために起こります。壊疽は、命に関わることもあるため、早期に適切な治療が必要です。壊疽の治療には、外科的療法や抗生物質の投与などがあります。
しもやけは、早期に治療を開始すれば、比較的治りやすい病気です。しかし、重症化すると、治療が困難になる場合もありますので、注意が必要です。
しもやけ(凍瘡)と似た症状の病気
しもやけと似た症状を示す病気には、以下のようなものがあります。自己判断は避け、疑わしい場合は医師の診察を受けるようにしましょう
・凍傷
凍傷は、しもやけよりもさらに重症な状態で、皮膚が凍結し、組織が壊死してしまう病気です。しもやけと同様に、手足の先端部分に多く見られます。初期症状は、皮膚が白くなる、感覚がなくなる、痛みが生じるなどです。重症になると、水ぶくれ、皮膚の壊死、潰瘍などが生じることがあります。凍傷は、マイナス4℃以下の凍結温度の寒冷刺激曝露によって起こります。例えば、極寒の地で長時間屋外活動をする場合や、濡れた手袋や靴下を長時間着用している場合などに起こりやすくなります。
・レイノー病
レイノー病は、寒冷や精神的なストレスによって、手足の指先などの血管が過剰に収縮し、血行不良を起こす病気です。症状としては、しもやけと同様に、指先の色が白くなったり、青くなったり、赤くなったりします。また、しびれや痛みを伴うこともあります。レイノー病は、原因不明の原発性レイノー病と、膠原病などの他の病気が原因で起こる二次性レイノー病に分けられます。
・膠原病
膠原病は、自己免疫疾患の一つで、自分の免疫システムが誤って自分の体の組織を攻撃してしまう病気です。膠原病の中には、しもやけと似たような皮膚症状を示すものがあります。例えば、全身性エリテマトーデスでは、顔面や手指に赤い発疹が現れることがあります。膠原病は、遺伝的な要因や環境的な要因などが複雑に絡み合って発症すると考えられていますが、はっきりとした原因は分かっていません。
・皮膚感染症
皮膚感染症の中には、しもやけと似たような症状を示すものがあります。例えば、蜂窩織炎は、皮膚の深い層に細菌が感染して炎症を起こす病気です。症状としては、皮膚の赤み、腫れ、熱感、痛みなどがみられます。蜂窩織炎は、皮膚に傷口がある場合や、免疫力が低下している場合などに、細菌が侵入することで発症します。
まとめ
しもやけ(凍瘡)は、冬場に手足の指先や耳たぶなどが赤く腫れる皮膚の病気です。寒さで血管が収縮し、血行不良が起こることが原因です。子どもや女性、冷え性の人など、体質的に冷えやすい人は注意が必要です。症状には、かゆみ、腫れ、赤みや紫色の変色、痛み、水ぶくれなどがあります。保温やマッサージなど、症状を和らげる対症療法が中心となります。重症化すると皮膚感染や潰瘍、壊疽などの合併症が起こる可能性もあります。日頃から体を冷やさないように工夫し、しもやけを予防することが大切です。