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フルミストと注射インフルワクチンの上手な選び方
この記事を監修した医師

小児科専門医/院長
濵野 翔
「インフルエンザの注射を毎回嫌がって大暴れします。」
「今年は痛くない鼻スプレーのフルミストを考えています。」
「でも、生ワクチンだから熱が出やすいとか、アレルギーとか心配です。」
「結局、鼻スプレーと注射のどちらがいいのでしょうか?」
このようなご相談を外来でよくいただきます。
注射の痛みがなく、鼻にスプレーするだけで済むフルミストは、非常に魅力的ですが、新しい生ワクチンであるため、副反応や持病への影響など、疑問も多いことでしょう。
ここでは、フルミストと従来の注射ワクチンの違いについて、最新の医学データをもとにわかりやすく解説します。
もくじ
フルミストと注射のどちらを選ぶべきか
当院で作成した「フルミストと従来注射ワクチンの比較表」を参考にしてください。

どちらのワクチンも良い選択肢であり、日本小児科学会の指針でも、フルミストと注射ワクチンの効果に明確な優劣はないとされています。 そのため、どちらが優れているかという視点ではなく、お子さんの体質や注射への恐怖心に合わせて選ぶことが大切です。
大きな違いとして、フルミストの対象は「2歳以上、19歳未満」で、接種回数は「1シーズンに1回のみ」で完了します。効果の持続期間は約6ヶ月から12ヶ月と比較的長いのが特徴です。
一方、従来の皮下注射ワクチンは「生後6ヶ月以上(全年齢)」が対象となり、12歳以下のお子さんは「原則2回(13歳以上は1回)」の接種が必要です。こちらの効果の持続期間は約4ヶ月から6ヶ月とされています。
このように、13歳未満のお子さんにとって、フルミストは通院回数や注射の負担を1回で済ませられる大きなメリットがあります。
ただし、フルミストは生ワクチンなので、弱いインフルエンザウイルスの感染が鼻腔で起こっているような状態です。そのため、咳や鼻汁、発熱などの症状がでたり、症状が続いたり、稀ですが他の人にうつしてしまうようなケースもあります。
また、フルミストの前後で、タミフルなどの抗インフルエンザ薬を使用すると、ワクチンの効果が弱まることもあり、従来の注射ワクチンよりも取り扱いが少し難しい点も考えなければいけません。
フルミストを接種すると熱が出る頻度はどのくらいか?
国の承認にあたって行われた国内第3相試験データによると、接種後14日間の38度以上の発熱頻度は以下の通りです。
風邪など別の原因を含めた接種後の発熱全体は「約9.9%」でした。 そのうち、医師がワクチンと関連があると判断した副反応としての発熱は「約6%(5.9%)」にとどまっています。 つまり、接種したお子さんのうち、ワクチンが原因で熱が出るのは100人中6人程度ということになります。
この発熱の多くは一時的なもので、接種後2日から4日の間にみられ、数日で自然に下がることがわかっています。
てんかん、気管支喘息、ゼラチンアレルギーではフルミストを受けられない?
気管支喘息、てんかんは要注意
まず、「コントロール不良の喘息」がある場合は、フルミストの接種は推奨されません。薬により発作が落ち着いていれば、接種可能です。
「てんかんの発作が十分にコントロールされていない」場合も、従来の注射ワクチンを優先します。
判断に迷う場合は、必ず事前に主治医やかかりつけ医にご相談ください。
熱性けいれんは?
熱性けいれんの既往がある場合、フルミストは「重要な潜在的リスク(接種要注意者)」に指定されています。 国内の臨床試験では報告されていませんが、海外での使用後において、一時的な発熱に伴う熱性けいれんの報告があるためです。
しかし、最後の発作から十分に期間があいている場合(1‐2ヶ月以上)は、フルミストの接種は可能と判断されます。
特にお子さんが注射を極めて強く怖がり、1回で済ませるメリットが大きい場合は良い選択肢となります。
主治医やかかりつけ医にご相談ください。
ゼラチンアレルギーがあると鼻スプレーは受けられない?
フルミストには、ワクチンの状態を安定させるための成分として「精製ゼラチン」が含まれています。
そのため、ゼラチンアレルギーがある場合は、フルミストを接種することはできません。
ゼラチンが入った食品や薬で、蕁麻疹や呼吸困難などのアレルギー反応を起こしたことがあるお子さんは避けてください。
日本小児科学会でも、ゼラチンアレルギーのあるお子さんには、従来の不活化ワクチン(皮下注射)を強く推奨しています。
日本小児科学会:経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方
フルミスト(鼻スプレー)の後にインフルエンザ検査を受けると「陽性」になる?

フルミストを接種した後に、万が一熱や鼻水が出てインフルエンザの迅速抗原検査を受けると、陽性になることがあります。
鼻の粘膜に弱毒化したウイルスをスプレーするため、接種後しばらくは鼻の中にワクチンのウイルスが残るからです。
添付文書には、接種後4週間以内はワクチン由来のウイルスが残存している可能性があると明記されています。
海外の研究では、接種後2日から8日の間に簡易検査を受けた場合、ワクチンのウイルスに反応して「偽の陽性」が出やすいことがわかっています。 一方で、接種後12日目から13日目には、簡易検査での陽性反応はほぼ完全に消失したと報告されています。
もし接種後に発熱や風邪症状で医療機関を受診する際は、必ず「何月何日にフルミストを受けた」ということを医師に伝えるようにしてください。
フルミスト接種の前後にタミフルなどの抗インフルエンザ薬を飲んではいけない?

フルミストは、鼻の粘膜でウイルスが一時的に増殖することで免疫を作ります。
そのため、接種の前後にタミフルなどの抗インフルエンザ薬を使用すると、ワクチンのウイルスが退治されてしまい、効果が得られなくなります。
米国疾病予防管理センター(CDC)の実務基準では、薬を服用した後にフルミストを受ける場合、以下の期間を空けることが求められています。
- タミフル(オセルタミビル)やリレンザ(ザナミビル)を最後に服用してから「48時間」
- ゾフルーザ(バロキサビル)を最後に服用してから「17日間」
また、フルミスト接種後「2週間以内」に抗インフルエンザ薬を服用してしまった場合は、ワクチンの効果が失われる可能性があります。 その際は、注射型のワクチンを改めて接種し直することを検討する必要があります。米国CDC:インフルエンザ生ワクチン実務基準
フルミストって海外ではいつから使われている?日本人に特有の副作用や重大な問題はある?
フルミストは、もともと海外では2003年に米国で初めて承認されて以来、20年以上の豊富な使用実績があり、十分な安全性が認められているワクチンです 。
日本国内においても、2024年の本格的な販売開始や、約100万人が接種した2025/26シーズンにかけての厚生労働省の審議会等による厳格な国内市販後監視を経て、日本人特有の新たな重大な安全性懸念(副反応の問題など)はないと評価されています。
第一三共:フルミスト点鼻液 添付文書(2026年8月改訂版)
ただし、”熱が出たらすぐにクリニックで超高感度な迅速キット検査を行って、陽性がでたら抗インフルエンザ薬を飲む”というのが、日本のインフルエンザの治療文化です。
そのような治療文化からすると、残存ウイルスによる偽陽性判定や、抗インフルエンザ薬の使用判断を難しくさせるフルミストワクチンは、少し相性が悪いと言えるかもしれませんね。
ベスタこどもとアレルギーのクリニックでできること

ベスタこどもとアレルギーのクリニックは、中村橋駅から徒歩1分の場所にあります。
フルミスト点鼻液と従来の注射ワクチンの両方を取り扱っています。
どちらのワクチンにするか迷われている保護者の方は、どうぞお気軽に一般外来にてご相談ください。
よくある質問(FAQ)

Q1. フルミストは何歳から受けられますか?
A1. 日本国内で承認されている対象年齢は「2歳以上19歳未満(18歳以下)」です。2歳未満の乳幼児は、海外の臨床試験で入院や喘鳴(ゼーゼーする呼吸)のリスクが高まることが報告されているため接種できません。従来の注射は生後6ヶ月以上から接種可能です。
Q2. 熱性けいれんを起こしたばかりですが、いつから接種できますか?
A2. 熱性けいれんを起こした後は、安全のため通常は1ヶ月から2ヶ月程度の間隔をあけて、全身状態が落ち着いていることを確認してから接種します。必ず主治医に相談の上でスケジュールを決定してください。
Q3. 家族に妊婦や乳児がいても、子どもにフルミストを接種して大丈夫ですか?
A3. 健康な妊婦さんや乳児が同居している場合でも、お子さんへの接種は原則として問題ありません。ただし、フルミストは生ワクチンのため、接種後1〜2週間はごく稀に周囲へウイルスがうつる「水平伝播」の可能性が指摘されています。そのため、接種後しばらくは手洗いを徹底し、コップの共用を避けるなど、一般的な衛生対策を心がけることが望ましいです。
なお、同居家族にがん治療中などで重度の免疫不全の方がいる場合は、注射ワクチンの使用を優先してください。
Q4. フルミストの副反応による鼻水や咳はどのくらい続きますか?
A4. 国内第3相試験では、鼻水や鼻づまりが約6割(59.2%)、軽い咳が27.8%のお子さんにみられました。これらの症状はワクチンが鼻の粘膜で免疫を作っている正常な反応です。多くは接種翌日から4日目頃に現れますが、数日以内に自然に軽快します。症状が長引いたり高熱が出たりする場合は、一般の風邪や野生のウイルス感染の可能性があるため受診してください。
Q5. 費用はどのくらいかかりますか?また、何回接種が必要ですか?
A5. 東京都練馬区貫井にある当院を含む多くのクリニックでは、フルミストは1回7,000円から10,000円程度に設定されています。一方、従来の注射は1回 3,000円から5,000円程度ですが、12歳以下は原則2回の接種が必要となります。フルミストは1シーズンに1回のみで完了するため、通院回数や手間を抑えられます。
本記事に掲載されている情報は、執筆時点における医学的エビデンスに基づいています。個々のお子さんの健康状態や体質により適格性は異なりますので、実際の接種にあたっては主治医の判断を優先してください。
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
