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「百日咳」と診断された方へ。小児科医が解説する症状とホームケア
お子さんが百日咳と診断され、ご心配のことと思います。
いつまでもコンコンと辛そうな咳が続いている様子を見ていると、どうにかならないだろうか、と胸が痛みます。
最初は風邪のように見えても、長引く特有の咳に変わっていくのがこの病気の特徴です。
百日咳はお子さんの年齢によって、気をつけるポイントが大きく変わります。 ご自宅で落ち着いて見守れるよう、具体的な症状やケアの方法を一緒に確認していきましょう。
もくじ
百日咳とは?

長引く特有の咳が特徴の感染症です
百日咳は、百日咳菌という細菌がのどや気道に感染することで起こります。
最初は普通の鼻水や軽い咳から始まりますが、1〜2週間ほど経つと症状が変化してきます。
短い咳が連続して「コンコンコンコン」と出て、息を吸うときに「ヒューッ」と音が鳴る特有の咳に変わっていきます。
治療について:お薬で周りへの感染を防ぎます
百日咳の治療には、主にマクロライド系と呼ばれる抗菌薬を使用します。 お薬を飲み始めてから約5日間で菌が減り、周りへの感染力はほぼなくなるとされています。
ただし、お薬を飲んでも翌日にピタリと咳が止まるわけではありません。すでに傷ついてしまった気道の炎症が治るまでには時間がかかるためです。
咳は少しずつ和らいでいくものだと考えて、焦らずに見守ってあげてください。
ご年齢で変わる2つの対応パターン

ここからは、お子さんのご年齢に合わせて2つのパターンに分けて対応をご説明します。
- 生後半年~一年以内の「特に注意深く見守る時期」の赤ちゃん
- 重症化の心配は少なくても「激しい咳でお困りの患児」
の2ケースです。
【生後半年~一年以内の赤ちゃん】特に注意深く見守る時期です

まだワクチンを打っていない生後2か月以内の赤ちゃは、重症化しやすいため注意深く見守る必要があります。
最初は普通の風邪のように落ち着いて見えても、1〜2週間ほどかけて徐々に悪化していくことに注意しましょう。
咳の代わりに「息が止まる」サインに注意を
赤ちゃんは気道が細く体力もないため、大人が想像するような激しい咳ができないことがあります。コンコンという咳が出ない代わりに、突然息を詰まらせてしまうことがあるのです。
顔を真っ赤にしていきむような表情をした後、呼吸が浅くなり、一時的に息が止まってしまう「無呼吸発作」を起こすのが注意したい症状です。
呼吸がうまくできないと唇や顔色が青紫色になり、体への負担が大きくなってしまいます。
夜間や休日でも受診してほしい目安
生後半年以内の赤ちゃんで、以下の様子が1つでも見られる場合は、夜間や休日であっても救急外来を受診してください。
- 息が10秒以上止まることがある
- 咳き込んだ後に顔色や唇の色が青白く、または紫色になっている
- ミルクや母乳を普段の半分も飲めず、ぐったりしている
【激しい咳でお困りの患児】

ご家庭でできるホームケア
1歳以上で予防接種も済ませ、重症化の心配が少なくなっても、激しい咳が続いて辛い思いをしているお子さんのためのケア方法です。 夜も眠れず、見守るご家族も大変な時期を乗り切るための工夫をお伝えします。
咳を少しでも和らげる生活の工夫と食事
お部屋の空気が乾燥していると、気道の粘膜が刺激されて咳が出やすくなります。
- 加湿器などを使って、室内の湿度を50〜60%に保つようにしてみてください。
- 寝る時は、背中にクッションなどを当てて少し上体を起こしてあげると、呼吸が楽になることが多いです。
また、激しく咳き込んだ拍子に嘔吐してしまうことがよくあります。
- 食事や水分は一度にたくさん摂らず、消化の良いものを少量ずつ、こまめに分けて与えてあげるのがコツです。
お風呂は入っても大丈夫?
37.5度以上の発熱がなく、普段通り食事がとれていて機嫌が良ければ、お風呂に入っても構いません。
お風呂の湯気は適度な加湿になり、一時的に咳が和らぐこともあります。
家族にうつさないための家庭内対策

百日咳はたいへん感染力が強い病気です。 特に、ただの風邪に見える初期の段階が一番うつりやすいため、気づかないうちに家族内で広がってしまうことがあります。
赤ちゃんを守るために家族ができること
ごきょうだいが百日咳になり、下にお生まれになったばかりの赤ちゃんがいるご家庭は注意が必要です。
- 咳をしているお子さんはできるだけ別の部屋で過ごしましょう。食事も別にしましょう。
- マスクができる年齢であれば室内でもマスクを着用しましょう。
- 食器やタオルの共有を避け、ご家族全員でこまめに手洗いを行いましょう。
- 換気も大切です。
- 感染期間(咳が消失するまで、又は5日間の適正な抗菌薬治療が終わるまで)を過ぎても、多少は菌を排出しているので、油断は禁物です。
赤ちゃんを守る母子免疫
赤ちゃんを百日咳から守る一番の方法は、生後2か月から始まるワクチンの定期接種です。 お母さんからの免疫(母子免疫)では百日咳を十分に防ぐことができないため、決められたスケジュールで予防接種を進めることがお子さんを守る盾になります。 詳しくは当院の別記事「赤ちゃんを守る母子免疫」や「長引く咳から子どもを守る百日咳ワクチン」もあわせてご覧ください。
赤ちゃんをRSウイルス・百日咳から守る「母子免疫」【妊娠中のワクチン】
登園・登校の再開はいつから?

百日咳は学校感染症に指定されています。 登園や登校の再開目安は、
「特有の咳が消失するまで、又は5日間の適正な抗菌薬による治療が終了するまで」と定められています。
抗菌薬を5日間飲み切れば周りへの感染力はほぼなくなりますが、体力が落ちている場合は無理をせず、かかりつけの医師に相談して決めていきましょう。
気になる質問

処方されたお薬を飲んでも咳がすぐには止まりません。
抗菌薬は、体内にある百日咳菌を減らして周りの人への感染力をなくすためのものです。すでに菌によって傷ついてしまった気道の炎症が治まるまでには時間がかかるため、薬を飲み始めてからも咳はしばらく続くのが一般的です。焦らずに見守ってあげてくださいね。
大人も百日咳に感染しますか?
はい、大人も感染します。子どもの頃に打ったワクチンの効果は年齢とともに少しずつ薄れていくためです。大人は風邪の後に咳だけが長引いている程度で済むことが多いですが、知らないうちに抵抗力のない赤ちゃんにうつしてしまうことがあるため注意が必要です。
咳き込んで吐いてしまうことが多いのですが、食事はどうすればいいですか?
激しい咳の刺激で吐いてしまうのは、百日咳によく見られる症状です。一度にたくさん食べたり飲んだりすると吐きやすくなるため、食事や水分は1口、2口といった少量を、回数を増やしてこまめに与えるように工夫してみてください。
夜間や休日に赤ちゃんの様子がおかしい時、練馬区内ではどこに相談すればいいですか?
生後半年以内の赤ちゃんで、息が止まる、唇が紫色になるなどの症状が出た場合は、迷わず救急車(119番)を呼んでください。受診すべきか迷う場合は、こども医療電話相談(#8000)や地域の救急相談センター(#7119)に連絡し、専門家の指示を仰ぎましょう。
中村橋駅すぐの当院からのお願い

百日咳は、お薬を飲んでもすぐには咳が止まらず、ご家族も不安が募る病気です。 しかし、適切な時期の受診とご自宅でのケアで、少しずつ良くなっていきます。
当院でも、お子さんのご年齢や症状の程度に合わせた診療とサポートを行っております。 おうちでのケアで迷うことや、赤ちゃんの呼吸で気になることがあれば、いつでもご相談にお越しください。
医療上の免責事項
本記事は一般的な医学的情報を提供するものであり、個別の診断や治療に代わるものではありません。お子さんの症状で不安なことがある場合は、直接医療機関を受診して医師の判断を仰いでください。
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
