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子宮頸がんワクチンは受けるべきか?メリット・デメリットと再開の背景を解説

子宮頸がんは、原因の95%以上がウイルス感染であり、ワクチンで予防できる可能性がある数少ないがんです。(※1)最新のワクチンでは、原因の80-90%以上を防ぐ効果が期待されています。(※1)
日本では2013年6月から、HPVワクチンの積極的勧奨が一時的に差し控えられていました。その後、国内外の有効性・安全性のデータが評価され、2021年11月に専門家会議で差し控え終了が妥当と判断され、2022年4月から個別の勧奨が再開されました。
この記事では、ワクチンのメリットやデメリットから再開の背景までを解説します。
接種をすべきかどうか判断するための正しい知識を、お子さんと一緒に身に着けていきましょう。
もくじ
子宮頸がんワクチンの基礎知識

まずは、子宮頸がんワクチンの基本知識について見ていきましょう。
HPVとは子宮頸がんの主な原因ウイルス
子宮頸がんの原因の95%以上は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によるものです。(※1)HPVは珍しいウイルスではなく、性交渉の経験があれば、多くの人が生涯に一度は感染するといわれています。
HPVには200種類以上の型がありますが、がんの原因となるのは一部の高リスク型です。ほとんどの場合、HPVに感染しても免疫によってウイルスは自然に排除されます。しかし、高リスク型のHPVが長期間感染し続ける持続感染と呼ばれる状態になると、一部の細胞ががん化し、子宮頸がんを発症するケースがあります。
HPVワクチンの種類(2価・4価・9価)と違い
現在、日本で公費により接種できるHPVワクチンは、「2価」「4価」「9価」の3種類です。「価」の数字は予防できるHPVの型の数を表し、数字が大きいほど多くの種類を防げます。
いずれのワクチンも、子宮頸がんの主な原因となるHPV16型と18型の感染予防に効果が期待できます。各ワクチンの特徴を以下の表にまとめたので参考にしてください。

2023年4月からは、より多くのHPV型をカバーする9価ワクチン(シルガード9)も公費で接種できるようになりました。現場では、9価ワクチンの接種が標準的です。ただし、ワクチンですべてのHPVの型を予防できるわけではありません。ワクチン接種後も、定期的な子宮頸がん検診をあわせて受けることが重要です。
子宮頸がんワクチンの積極的勧奨が再開された理由
日本では2013年にHPVワクチンが定期接種化されました。しかし、直後に接種後の有害反応がメディアで報道され、厚生労働省は積極的勧奨を一時的に差し控えることになりました。
接種後の激しい疼痛、運動障害、自律神経障害などの有害事象が続いているといった症状を訴える少女たちの姿がメディアで大きく取り上げられ、ワクチンの安全性に対する不安が急速に高まりました。
当時は、これらの症状とHPVワクチン接種との「因果関係」が明確に証明も否定もできなかったため、厚生労働省は「国民に適切な情報提供ができるまでの間、積極的な勧奨を一時的に差し控える」という判断を下し、実態調査を行いました。
そのあとの約9年間以上にわたる調査で、HPVワクチンの有効性と安全性が確認されました。接種後に報告された痛みやしびれ、動かしにくさなどの「多様な症状」については、同様の症状を接種歴のない人にも一定数認めることがわかっています。現在までの調査で、ワクチン接種との因果関係は証明されていません。(※1)
世界保健機関(WHO)も接種を推奨するなどの状況から、国は2022年4月より積極的勧奨を再開しています。(※1)現在の推奨は、世界中の最新の知見に基づいた判断であることをご理解ください。
HPVワクチン接種のメリットや副反応への対応

ここでは、HPVワクチン接種の主なメリットと、副反応が起きた場合の対応などを解説していきます。自分やご家族が判断する際の参考にしてください。
子宮頸がん予防における主なメリット
HPVワクチン接種のメリットは、HPVの感染を防ぎ、将来のがんリスクを大きく減らせる点です。特に、9価ワクチン(シルガード9)は、子宮頸がんの原因の90%以上を予防する効果が期待できます。(※1)加えて、世界中の約20年間にわたる使用実績で有効性が証明されています。
子宮頸がんだけでなく、外陰がんや肛門がん、中咽頭がん、尖圭コンジローマなど性別に関わらずさまざまな病気の予防につながることもわかっています。
ワクチン接種と定期検診を組み合わせることで、予防につながることが期待されます。
副反応の症状と発生頻度
ワクチン接種後は、免疫がウイルスへの準備をする過程で、一時的に副反応が起こる場合があります。多くは数日以内におさまる軽度なものです。

※接種部位の痛みは50%以上でみられますが、多くは数日以内におさまります。
なお、注射への強い緊張や痛みから、血圧が下がり失神してしまう血管迷走神経反射を起こすことがあります。これはワクチンの成分ではなく、注射そのものに対する体の反応です。接種後に15〜30分ほど安静にすると予防できます。
副反応発生時の相談先と救済制度
ワクチン接種後に気になる症状が現れたときは、接種を受けた医療機関やかかりつけ医に相談してください。専門的な対応が必要な場合は、各都道府県の「HPVワクチン接種後に生じた症状の診療に係る協力医療機関」で診察を受けられます。
万が一、予防接種で重い健康被害が生じた際には、国による公的な救済制度が利用できます。安心して接種を検討できる体制が整っているといえるでしょう。主な相談窓口は、接種を受けた医療機関や市区町村の予防接種担当課、厚生労働省の感染症・予防接種相談窓口が挙げられます。
定期接種を対象とした「予防接種健康被害救済制度」では、国に因果関係が認定されると医療費や障害年金などが給付されます。まずは身近な医療機関や公的な窓口に連絡することが大切です。
年齢・性交渉経験による効果の違い
性交渉の経験があるとワクチンは手遅れではないか、との質問をいただきますがそんなことはありません。たしかにHPVワクチンは感染前の接種が推奨されています。HPVは主に性交渉で感染するため、初体験前の10代前半での接種でより効果が期待できるからです。
しかし、すでに性交渉の経験があっても、ワクチン接種には大きな意義があるといえます。HPVには200種類以上の型があります。そのため性交渉にて特定の型にすでに感染していても、ワクチンを接種すれば未感染の型への感染を防ぐ効果が期待できます。
定期接種の対象年齢を過ぎていても、任意接種(自費)としてワクチンを受けることはできます。だし、HPVワクチンは感染前の接種ほど効果が高いため、対象年齢のうちに受けることが最も勧められます。対象年齢外での接種を考える場合は、年齢や既往、費用も含めて医師と相談しましょう。
HPVワクチンの接種対象とスケジュール

これから、HPVワクチンの接種対象やスケジュールなどを解説します。自分の状況と照らし合わせながら、一緒に確認していきましょう。
公費接種の対象年齢と費用
HPVワクチンは、子宮頸がん予防に高い効果が期待できるワクチンであるため、国は対象年齢の人に公費での接種(定期接種)を推奨しています。対象は小学校6年生〜高校1年生に相当する女性です。具体的な期間は、12歳になる年度の4月1日〜16歳になる年度の3月31日までです。費用は無料で自己負担はありません。
対象者には、市区町村から接種券が郵送されるのが一般的です。通知が届かない場合やご不明な点があれば、予防接種担当課へお問い合わせください。
男性接種のメリットと集団免疫への影響
HPVは女性特有のウイルスではなく、男性にも感染してがんやほかの病気の原因となります。
男性自身を守るメリットとして、中咽頭がんや肛門がん、陰茎がんなどの予防が挙げられます。性感染症の尖圭コンジローマの発症を防ぐ効果も期待できます。
パートナーを守る点では、自分がHPVに感染しないことが大切です。感染を断ち切り、パートナーへの感染を防げば、子宮頸がんになるリスクを減らせます。さらに、接種する人が増えると、社会全体のHPVの流行が抑えられ、ワクチンを接種できない人たちを守ることにも役立つはずです。
現在、男性の接種は原則として任意接種(自費)です。しかし、独自に費用助成を行う自治体も増えてきています。お住まいの市区町村のウェブサイトなどで情報を確認してみてください。
接種回数と接種間隔の目安
HPVワクチンで予防効果を得るためには、決められた回数を適切な間隔で接種し終えることが重要です。接種スケジュールは、使用するワクチンの種類と、1回目の接種を開始する年齢によって異なります。現在、公費接種では主に9価ワクチン(シルガード9)が使用されています。
以下の表では、使用される可能性が高いと考えられる9価ワクチンと4価ワクチンの情報を記載しています。

決められた間隔で接種できなかった場合も、最初からやり直す必要はありません。接種を予定している医療機関に連絡し、その後のスケジュールを相談してください。
まとめ
HPVワクチンは、長年の研究や世界中の接種実績から、子宮頸がんの主な原因となるウイルスの感染を高い確率で防げる根拠に基づいた有効な予防法といえます。
接種について少しでも不安や疑問があれば、一人で抱え込まず、かかりつけ医や産婦人科へ気軽に相談してください。ベスタこどもとアレルギーのクリニックでもHPVワクチンの相談を受け付けています。この記事が、HPVワクチンを検討するきっかけになれば幸いです。
参考文献
- 日本産科婦人科学会:「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」
- 厚生労働省:「HPVワクチンについて知って下さい」
- 日本対がん協会:「子宮頸がんの予防のために」
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監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
医療上の免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の赤ちゃんの状態や健康に関する問題については、必ず医師の診察を受けてください。この記事の情報だけで判断せず、ご心配な点はかかりつけ医にご相談ください。
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
