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子どもの頭痛や嘔吐が続くときは画像検査が必要?脳の病気を疑うサインとCT/MRIの違い
「お腹は痛くないのに、吐いてばかりいる」 「頭が痛いと言って、毎朝辛そうにしている」
お子さんにこうした症状が続くと、保護者の方が「もしかして脳の病気ではないか?」と心配されるのは、とても自然な親心です。
インターネットで検索すると、不安を煽るような情報も目につき、余計に怖くなってしまうことがあるかもしれません。
今回は、小児科専門医の視点から、**「画像検査(CTやMRI)を検討すべきタイミング」と「日常生活でチェックしてほしいサイン」**について、医学的な根拠に基づき、できるだけ分かりやすく解説します。
正しい知識を持つことで、漠然とした不安を「適切な行動」に変えていきましょう。

もくじ
子どもの「頭痛」のよくある原因
まず安心してください。子どもの頭痛の多くは、命に関わらない良性のものです。大きく分けて以下の3つが一般的です *1)。
- 風邪や副鼻腔炎などの感染症
最も多い原因です。発熱に伴って頭が痛くなることや、鼻詰まり(副鼻腔炎)で額や目の奥が痛くなることがあります。原因となっている病気が治れば、頭痛も自然に消えます。
- 片頭痛(へんずつう)
子どもにも片頭痛はあります。「ズキンズキン」と脈打つような痛みが特徴で、光や音に敏感になったり、動くと痛みが悪化したりします。親御さんに頭痛持ちが多いと、お子さんもなりやすい傾向があります。
- 緊張型頭痛
精神的なストレスや、ゲーム・勉強での長時間同じ姿勢が原因で、頭全体が締め付けられるように痛みます。夕方に症状が出ることが多く、肩こりを伴うこともあります。
子どもの「嘔吐」のよくある原因
次に、嘔吐の原因についてです。こちらも脳の病気であることは稀で、お腹や体質の要因がほとんどです。
- ウイルス性胃腸炎(お腹の風邪)
嘔吐の原因として圧倒的に多いのがこれです。通常は「下痢」や「腹痛」、「発熱」を伴います。周りで流行していないか、園や学校の様子も確認してみましょう。
- 周期性嘔吐症(自家中毒)
2歳〜10歳くらいのお子さんに多く見られます。疲れや感染症、緊張などのストレスがきっかけで、血液中に「ケトン体」という物質が増え、激しい嘔吐を繰り返します。点滴などで水分と糖分を補うとケロッと治ることが特徴です。
- その他の原因
激しい咳き込みで吐いてしまったり、食物アレルギーや便秘が原因で吐いたりすることもあります。
稀ですが検査が必要なケース
ごく稀にですが、以下のような「脳の器質的な病気(構造や血管の異常)」が隠れていることがあります。
- 脳腫瘍: 脳にできるデキモノ
- 水頭症: 脳脊髄液がたまって脳を圧迫する病気
- 脳血管障害: もやもや病(血管が細くなる病気)や血管の奇形など
これらを見逃さないために、私たちは問診と診察を行い、必要な場合に画像検査を提案しています。
「画像検査」を検討するべき危険なサイン(レッドフラッグ)
医学的に「これは詳しく調べたほうがよい」と判断する基準(レッドフラッグ)があります。以下のような症状が見られる場合は、早めの受診をお勧めします *2)。
- 「朝」に症状が強くなる
脳の病気で頭の圧力が上がっている場合、寝ている間に圧が高まり、早朝の起床時に最も頭痛が強くなる傾向があります。
- 寝起きに激しい頭痛を訴える
- 朝起きてすぐに吐いてしまう(その後、昼間はケロッとしていることもある)
- 時間とともに悪化している
「先週より今週」「昨日より今日」と、明らかに症状が重くなっている場合です。
- 頭痛の頻度が増えている(週1回だったのが毎日になるなど)
- 痛み止めが効きにくくなっている
- 嘔吐の仕方がいつもと違う
胃腸炎のような「気持ち悪さ(吐き気)」があまりないのに、突然「噴水のように」吐いてしまうことがあります(これを噴水状嘔吐と呼びます)。
- 下痢や発熱がないのに、嘔吐だけが続く
- 吐いた後、スッキリせずにぐったりしている

【年齢別】特に注意深く見てあげてほしいポイント
お子さんの年齢によって、現れるサインや、本人が言葉にできる範囲が異なります。
乳幼児(言葉でうまく伝えられない時期)
「頭が痛い」と言えないため、体や行動の変化に注目します。
- 頭の大きさ: 母子手帳の成長曲線から大きく外れて、急に頭囲が大きくなっている。
- 不機嫌: あやしても泣き止まない、ずっと機嫌が悪い。
- 発達の後退: できていた「お座り」ができなくなる、手足の動きがぎこちない。歩き方がおかしい。
- 視線: 黒目が下の方に沈んでいる(落陽現象)。
学童期〜思春期(言葉で伝えられる時期)
言葉以外の「神経の症状」が出ていないか確認します。
- 歩き方: まっすぐ歩けない、よく転ぶようになった。
- 手先の動き: お箸が使いにくくなった、字が下手になった。
- 視力: 「物が二重に見える」と言う、黒板の字が見えにくくなった。
- 学業: 急に成績が下がった、集中力が続かなくなった。
- 特定の動作での変化: 熱い麺類をフーフーして冷ます時や、笛を吹いた時などに、急に脱力したり意識が遠のいたりする場合(もやもや病の可能性があります)。
これらは、脳の特定の部分が圧迫されたり、血流が悪くなったりすることで起こる症状です *3)。

病院でできる検査:CTとMRIの違いとメリット・デメリット
「心配だから、とりあえず検査してほしい」というお気持ちもよく分かります。しかし、検査にはそれぞれ特徴と、子どもならではのハードルがあります。医師は以下の点を考慮して、検査の必要性を判断します *4)。
頭部CT検査(コンピュータ断層撮影)
X線を使って短時間で撮影する検査です。
- メリット: 数分で終わるため、じっとしていられない子どもでも検査しやすいです。出血や骨折、大きな腫瘍の発見に優れています。
- デメリット: 医療被ばく(放射線)があります。脳の細かい構造や、小さな病変は見つけにくいことがあります。
頭部MRI検査(磁気共鳴画像)
強い磁石の力で詳細な画像を撮る検査です。
- メリット: 被ばくがなく、脳の奥や細かい神経、**血管の状態(MRA)**まで鮮明に見えます。脳腫瘍だけでなく、血管の異常などを診断するのに最も適しています。
- デメリット: 撮影に20〜30分かかり、大きな音がします。その間、絶対に動いてはいけません。
- 子どもへの負担: 小さなお子さんの場合、長時間じっとしているのが難しいため、睡眠薬(鎮静剤)を使って眠らせてから検査を行う必要があります。鎮静には呼吸抑制などのリスクが伴うため、入院設備のある病院で行うのが一般的です。
私たちが大切にしていること

当クリニックでは、まずはお話(問診)を聞き、神経学的な評価(目の動き、手足の動き、反射などの確認)を行います。
その上で、「緊急性が高い」「詳しい検査が必要」と判断した場合は、MRI検査が可能な連携する高度医療機関へ速やかにご紹介する体制を整えています。
「ただの頭痛かもしれないけれど、心配」という場合でも、迷わずご相談ください。
まとめ:このような時は受診を
お子さんの症状が以下の条件に当てはまる場合は、一度小児科を受診して相談してください。
- 頭痛で夜中に目が覚める、または早朝に痛がる
- 下痢がないのに、嘔吐を繰り返している
- 歩き方がおかしい、物が二重に見えるなどの変化がある
- 頭痛が日に日にひどくなっている
「様子を見ていいのかな?」と迷ったときは、独りで悩まず、専門家の判断を頼ってくださいね。
よくある質問 (FAQ)
Q1. 子どもが「頭が痛い」と言いますが、元気で遊んでいます。受診は必要ですか? A1. 遊べるほど元気で、食欲もあり、夜もぐっすり眠れているなら、緊急性は低いことが多いです。ただし、痛みが週に何度も続く場合や、徐々に痛がる頻度が増えている場合は、念のため受診して相談することをお勧めします。
Q2. 脳の病気は遺伝しますか? A2. 小児の脳腫瘍や多くの血管障害は、遺伝性ではなく偶然発生するものがほとんどです。ごく一部の病気に関連するものもありますが、一般的な頭痛や嘔吐の症状だけで、過度に遺伝を心配する必要はありません。
Q3. CT検査の放射線被ばくが心配です。 A3. 医療用CTの被ばく量は管理されており、一度の検査で健康被害が出るレベルではありません。しかし、子どもは大人より放射線の影響を受けやすいため、医師は「検査のメリット(病気の発見)」が「デメリット(被ばく)」を上回る場合にのみ検査を提案します。
Q4. まだお話しできない赤ちゃんの頭痛は、どうやって分かりますか? A4. 赤ちゃんは言葉で伝えられないため、「不機嫌」「ミルクを飲まない」「手で頭をたたく仕草」「ぐったりしている」などがサインになります。特に、嘔吐を伴う場合や、視線が合わないなどの変化があれば、早めに練馬区の医療機関や当院へご相談ください。
Q5. 検査が必要な場合、すぐに紹介してもらえますか? A5. はい。診察の結果、MRIなどの詳しい検査が必要と判断した場合は、検査設備のある連携病院へ速やかに紹介状を作成します。緊急度に応じて適切な病院をご案内しますので、ご安心ください。
医療上の免責事項 本記事は情報提供を目的としており、医師の診断に代わるものではありません。特定の症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
引用文献
*1) 日本頭痛学会 (2021). 『国際頭痛分類 第3版』医学書院. *2) 日本脳腫瘍学会 (2019). 『脳腫瘍診療ガイドライン2019年版』金原出版. *3) 日本小児神経学会 (2021). 『小児神経学用語集 改訂第3版』診断と治療社. *4) 日本医学放射線学会 (2021). 『画像診断ガイドライン2021年版』金原出版.
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
