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新生児の呼吸が苦しそう…考えられる原因と受診の目安を解説

生まれたばかりの赤ちゃんの「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という呼吸音。時折見せる苦しそうな様子に、「このまま様子を見ていいの?」「すぐに病院へ行くべき?」と不安になるのは当然です。
実は、その呼吸音の多くは成長とともに自然に治まる「先天性喘鳴(せんてんせいぜんめい)」かもしれません。しかし、中には胸がペコペコとへこむ「陥没呼吸(かんぼつこきゅう)」のように、一刻を争う危険なサインが隠れていることも。
この記事では、小児科医の視点から、新生児の呼吸が苦しそうなときに考えられる原因を徹底解説します。受診すべき具体的なタイミングや、いざという時に役立つ家庭での対処法までご紹介。大切な赤ちゃんを守るための正しい知識を身につけましょう。
新生児の呼吸が苦しそうなときの特徴

生まれたばかりの赤ちゃんの呼吸は、大人と比べて浅く速いのが特徴です。呼吸のリズムが時々不規則になったり、寝ているときに数秒間止まったりすることもあります。これらは新生児によく見られる生理的なもので、多くは心配いりません。
しかし、中には注意深く観察すべき「苦しそうな呼吸」のサインもあります。これから紹介する特徴を知ることで、落ち着いて赤ちゃんの状態を把握できるでしょう。
ゼーゼー・ヒューヒューと鳴る先天性喘鳴
赤ちゃんが息を吸うたびに、のどの奥から「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と音がする場合、「先天性喘鳴(せんてんせいぜんめい)」が考えられます。これは生まれつき気道の一部が狭かったり、気道を支える軟骨が柔らかかったりするために起こる呼吸音です。
先天性喘鳴の主な原因として、以下のようなものがあります。

これらの多くは、体の成長とともに気道がしっかりと広がり、1歳頃までには自然に音がしなくなります。しかし、呼吸音だけでは原因を特定できません。
気になる音が続く場合は、他の病気の可能性を調べるためにも、一度小児科で相談することが大切です。
胸やお腹がへこむ陥没呼吸
陥没呼吸(かんぼつこきゅう)は、息を吸うたびに、胸やお腹の一部がペコペコとへこむ状態です。これは、赤ちゃんが必死に空気を吸おうとして、胸周りの柔らかい部分が強く内側に引っ張られるために起こります。
特に以下の場所がへこんでいないか、注意して観察してください。
- 鎖骨の上のくぼみ
- 肋骨と肋骨の間
- 胸の真ん中にある、みぞおちのあたり
陥没呼吸は、赤ちゃんの体に酸素が足りていないかもしれない、とても危ないサインです。もし赤ちゃんの胸やお腹にこのようなへこみが見られたら、夜間や休日であっても、ためらわずに救急外来を受診しましょう。
体の向きや姿勢で音が変わることもある
赤ちゃんの呼吸の音は、寝ている向きや姿勢によって変わることがあります。
たとえば喉頭軟化症がある場合、仰向けになるとのどの組織が重力で下がり、気道が狭くなって音が強くなりやすいです。反対に、縦抱きにすると気道が広がって音が弱まることがあります。
ただし、うつ伏せ寝は乳幼児突然死症候群の危険があるため、医師に勧められない限り避けましょう。
「姿勢で音が変わるから大丈夫」と思ってしまうかもしれませんが、自己判断は危険です。診察のときには「どんな姿勢で音が強いか」「どの姿勢のときに楽そうか」を伝えると役立ちます。呼吸の様子を動画で残しておくと、診断の助けになります。
先天性喘鳴と喘息の違い

赤ちゃんの呼吸時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音がすると、多くの方が「喘息かもしれない」と心配になります。
ただし、新生児や生後まもない時期のゼーゼー音は、喉頭軟化症などによる「先天性喘鳴」が関係している場合も少なくありません。
喘息と先天性喘鳴は音が似ていても原因や経過は異なるため、自己判断せず医師に相談することが大切です。違いを知っておくことで、必要な受診や対応につなげやすくなるでしょう。
生まれつきの気道の狭さによるものが先天性喘鳴
先天性喘鳴は、特定の病気というより、体の発達が未熟なために起こる生理的な現象です。先ほども述べたように主な原因は、のどの奥にある喉頭(こうとう)や気管を支える軟骨が柔らかいことです。これをそれぞれ「喉頭軟化症(こうとうなんかしょう)」「気管軟化症(きかんなんかしょう)」と呼びます。
大人の気道は硬い軟骨で支えられ、しっかりとした筒状の形を保っています。
しかし、赤ちゃんの気道はまだ軟骨が柔らかく、呼吸の力で内側に引き込まれやすいのです。息を吸い込むときに気道が一時的に狭くなることで、空気の通り道で音が発生します。
この音はアレルギーやウイルス感染によって起きるものではありません。生まれつきの体の構造によるものなので、哺乳ができていれば過度に心配する必要はありません。
喘息はアレルギーや炎症が関与
喘息は、気道がアレルギーなどで慢性的に炎症を起こしている病気です。炎症によって気道の粘膜が腫れたり痰が増えたりし、非常に敏感な状態になります。
そのためホコリやダニ、ペットの毛、風邪などの感染、タバコの煙や冷たい空気といった刺激でも反応し、気道の筋肉が急に縮むことで「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音や咳、呼吸の苦しさが出ることがあります。
気道の未熟さによる先天性喘鳴とは性質が異なるものとして理解しておくと安心です。
成長とともに改善しやすい先天性喘鳴
先天性喘鳴の多くは、赤ちゃんの体の成長とともに自然に改善していきます。
特別な治療をしなくても、喉頭や気管の軟骨が徐々に硬く、しっかりしてくるからです。気道がしっかりと広がり、呼吸の力でへこみにくくなると、音は自然と聞こえなくなります。
個人差はありますが、多くは生後半年ごろから音が小さくなり始めます。そして、1歳から2歳のお誕生日を迎える頃には、ほとんど気にならなくなるでしょう。
そのため、哺乳がしっかりできていて、体重も順調に増えている場合は、基本的に経過観察となります。
ただし、呼吸がとても苦しそうだったり、ミルクの飲みが悪くなったりする場合は、他の病気の可能性もあるため、医師の診察が必要です。
治療が必要になることもある喘息
先天性喘鳴が成長を待つことが多いのに対し、喘息は放置してはいけない病気です。気道の炎症を抑えるための、適切な治療が必要になります。
もし治療せずに発作を繰り返すと、気道そのものが硬く狭い状態に変化してしまうことがあります。これを「リモデリング」と呼び、将来的に呼吸機能が低下する原因にもなりかねません。
喘息治療の目標は、発作を起こさないように気道の炎症をコントロールすることです。そして、健康な子どもと変わらない日常生活を送れるようにすることを目指します。
喘息の治療には大きく分けて二種類の薬が使われます。
ひとつは「長期管理薬(コントローラー)」で、気道の炎症を普段から抑え、発作を起こさないようにするための薬です。代表的なのは吸入ステロイド薬で、毎日の継続が重要になります。
もうひとつは「発作治療薬(リリーバー)」で、発作が起きた際に狭くなった気道をすばやく広げ、呼吸を楽にする役割があります。このように、守りと攻めの両面から治療を組み合わせることが基本となります。
喘息は、医師と相談しながら根気強く治療を続けることが非常に重要です。適切な治療によって、症状をコントロールし、健やかな成長をサポートすることができます。
新生児の呼吸が苦しそうで医療機関を受診すべきタイミング

赤ちゃんの呼吸がいつもと違うと感じたとき、保護者の方が「病院に行くべきか」と迷うのは当然です。新生児は自分のつらさを言葉で伝えられないため、周りの大人がサインに気づくことが重要です。
これらのサインが見られた場合は、決して自己判断で様子を見ず、速やかに医療機関を受診してください。
①陥没呼吸や呼吸が止まりそうに見えるとき
②顔色が悪い、唇が紫色になるとき
③授乳ができない、元気がないとき
④不安が強いときや症状が続くとき
①陥没呼吸や呼吸が止まりそうに見えるとき
陥没呼吸(かんぼつこきゅう)は、息を吸うたびに胸やお腹の一部がペコペコとへこむ呼吸です。赤ちゃんが必死に空気を吸おうとして、胸まわりの柔らかい部分が強く内側に引き込まれることで起こります。
特に、鎖骨の上のくぼみ、肋骨の間、胸骨の下(みぞおちあたり)にへこみが見られると要注意です。
また、新生児では呼吸のリズムが未熟なため、5〜10秒ほど呼吸が止まることは生理的に起こり得ます。しかし、20秒以上呼吸が止まっている場合や、短い停止でも顔色が悪くなる場合は極めて危険です。
これらの症状は、体に十分な酸素が取り込めていないことを示しています。時間が経つほど負担が大きくなるため、夜間や休日であっても様子を見ずに直ちに受診してください。
②顔色が悪い、唇が紫色になるとき
赤ちゃんの顔色や唇の色は、体内の酸素状態を映す大切なサインです。普段の色を知っておくことで、異常があったときにすぐ気づけます。
チアノーゼとは、血液中の酸素が不足し、皮膚や粘膜が青紫色に見える状態を指します。これは体に酸素が十分に行き渡っていない危険なサインです。以下のような状態になっていないかチェックしましょう。
- 唇や舌の色が紫色になっている
- 手足の爪の根元が青紫色に見える
- 顔色全体が青白い、または土気色(灰色っぽい色)に見える
特に、泣いているときだけでなく、落ち着いている安静時にもチアノーゼが見られる場合は緊急性が高い状態です。脳をはじめとする重要な臓器に酸素が足りていない可能性があります。すぐに医療機関を受診しましょう。
③授乳ができない、元気がないとき
呼吸が苦しいと赤ちゃんは体力を消耗し、おっぱいやミルクを飲むことさえ難しくなります。哺乳量の低下や元気のなさは、体調が悪化している重要なサインです。
哺乳は赤ちゃんにとって、呼吸をしながら吸って飲み込むという、とても高度で体力を使う動作です。呼吸がつらいと、この一連の動きがうまくできず、すぐに疲れてしまいます。
次のような様子が見られたら、早めに小児科を受診してください。
- おっぱいやミルクを吸う力が弱い
- 飲み始めてもすぐに口を離し、疲れた様子で泣き出す
- 1回の哺乳量が普段の半分以下になっている
- ぐったりしていて、あやしても笑顔や手足の動きが見られない
- 泣き声に力がなく、か細い
哺乳ができない状態が続くと、水分や栄養が不足し、脱水症や低血糖を起こす危険があります。「飲めない」「元気がない」は体の不調が進んでいるサインと捉え、早めに対応することが大切です。
④不安が強いときや症状が続くとき
明確な危険サインがなくても、保護者の方の「いつもと違う」という直感はとても大切です。医療現場でも、毎日赤ちゃんを見ているご家族の感覚は診断の重要な手がかりになります。
「こんなことで受診していいのだろうか」とためらう必要はありません。不安なまま時間を過ごすよりも、医師に診てもらうことが最善です。
判断に迷うときは、まずかかりつけの小児科に相談しましょう。夜間や休日で連絡が取れない場合は、小児救急電話相談(#8000)を利用するのも有効です。
新生児の呼吸が苦しそうなときにご家庭でできる対応

呼吸が苦しそうなとき、まずは医療機関を受診することが大前提ですが、そのうえでご家庭でも赤ちゃんの呼吸を少し楽にするために以下のような対応ができます。
- 赤ちゃんの体勢を工夫して呼吸を楽にする
- 鼻づまりがあれば吸引や加湿でケア
- 日常の様子を動画に残して医師に相談
それぞれの対応を詳しく見ていきましょう。
①赤ちゃんの体勢を工夫して呼吸を楽にする
新生児の気道は、大人と比べて非常に狭く、軟骨も柔らかいため、少しのことで空気の通り道が狭くなりがちです。そのため、体の向きや角度を少し変えるだけで、呼吸が楽になることがあります。
まず試していただきたいのが「縦抱き」です。赤ちゃんの頭と首をしっかりと支えながら縦に抱っこすると、重力で気道がまっすぐに保たれやすくなります。これにより、空気の通り道が広がり、呼吸がしやすくなる効果が期待できます。
また、寝かせるときは、上半身全体を少し高くしてあげるのも一つの方法です。バスタオルを折りたたみ、赤ちゃんの肩からお尻の下あたりに敷いて、上半身が少しだけ角度のついた状態になるようにします。
②鼻づまりがあれば吸引や加湿でケア
赤ちゃんは鼻呼吸が中心なので、少しの鼻づまりでも苦しくなります。
鼻がフガフガしているときは、優しくケアしてあげましょう。
市販の鼻吸い器を使えば家庭でも安全に鼻水を取ることができますが、粘膜はデリケートなので強く吸いすぎないよう注意が必要です。入浴後など鼻が温まっているときや、授乳前・就寝前に行うと楽になります。
また、乾燥は鼻づまりを悪化させるため、加湿器や濡れタオルで湿度を保つ工夫も効果的です。鼻水が黄色や緑色で多い場合は感染の可能性があるため、小児科に相談してください。
③日常の様子を動画に残して医師に相談
赤ちゃんの呼吸の症状は一時的に現れてすぐ落ち着いてしまうことがあり、病院に着いたときには異常が分かりにくいことがあります。
その際に役立つのが、スマートフォンで撮った動画です。言葉で説明するよりも、実際の様子を見てもらう方が診断の手がかりになります。
動画を撮る際は、以下のポイントを意識しましょう。
- 胸やお腹の動きが分かるように撮影する
- 呼吸音が入るように口元にマイクを近づける
- 顔色や唇の色も映るようにする
こうした記録を残しておけば、医師が診察時に状態を正確に判断しやすくなります。
まとめ
赤ちゃんの呼吸は未熟で不規則になりやすいですが、「陥没呼吸」や「顔色の悪さ」は酸素不足の危険なサインです。こうした症状があれば様子を見ず、すぐに受診してください。
また、「いつもと違う」という保護者の直感も大切です。呼吸の様子を動画に残すと診断の助けになります。
ベスタこどもとアレルギークリニックでは、赤ちゃんの呼吸に関するご相談に幅広く対応しています。気になることがあれば早めにご相談ください。
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https://www.besta-kids.jp/2024/06/14/942/
監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
医療上の免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の赤ちゃんの状態や健康に関する問題については、必ず医師の診察を受けてください。この記事の情報だけで判断せず、ご心配な点はかかりつけ医にご相談ください。

初めまして。
当院のホームページをご覧くださりありがとうございます。
私は小児科の中でも特にアレルギーと呼吸器を専門にしていますが、赤ちゃんの体重が増えない、おねしょが無くならない、ニキビが気になる、便秘気味など少しでも心配なことや不安に感じることがあれば、何でもご相談していただければと思います。
こどもたちがなるべく制限を受けることなく笑顔で日々を過ごし、自分らしく元気に成長できるよう、ご家族の不安を取り除けるよう、「優しさ」を持ったクリニックを目指して、地域の子育てに貢献できるよう頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
