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これって薬疹?子どもの発疹の見分け方と、受診すべき重症化のサイン

子どもに薬を飲ませた直後や数日経ったあとに、体に赤いブツブツが広がった経験はありませんか。こうした経過で現れる発疹は、もしかしたら薬疹かもしれません。子どもの発疹は、ウイルス感染やあせもなど原因が多岐にわたり、見分けが難しいことがあります。
ほとんどの薬疹が軽症で済む一方で、まれに重症化するケースがあります。冷静に対応するためには、保護者が危険なサインを知っていることが重要です。
この記事では、”薬疹が疑われる発疹の特徴”や、”受診すべき重症化のサイン”、”行うべき対応”まで詳しく解説します。正しい知識を身につけ、子どもの健やかな日常を守りましょう。
子どもの薬疹とは?原因と特徴

薬疹とは、薬を服用したあとに皮膚に発疹などの症状が現れる状態を指します。
ここでは、子どもの薬疹の原因や特徴について解説します。
薬疹の多くは「体のアレルギー反応」で起こる
薬疹は、体の免疫システムが薬を異物と認識し、過剰に反応することで起こるアレルギー反応です。多くの人が安全に使える薬でも、特定の体質を持つ一部の子どもには薬疹が起こる場合があります。
人の体には、外敵から自分を守るための免疫機能が備わっています。薬の成分に対して敏感に反応しやすい体質や、その日の体調によっては、免疫が過剰に働き、皮膚に炎症を引き起こしかねません。
以前は大丈夫だった薬でも、繰り返し飲むうちに体が薬を異物だと認識してしまい、薬疹が現れることもあります。一度薬疹が出たら原因を特定し、将来的に同じ成分を含む薬を避けることが重要です。
アレルギーではない薬疹もある
薬疹のように見える発疹でも、すべてが免疫によるアレルギー反応とは限りません。
中には、薬の作用そのものや体質によって起こる「非アレルギー性」の反応もあり、例としてバンコマイシンのRed Man症候群やNSAIDs不耐症などが知られています。
そのため、発疹が出たからといって直ちに「薬アレルギー」と決めつけるのではなく、使用した薬の種類やタイミング、症状の経過などを総合して判断することが大切です。
原因になりやすい薬(抗生剤・解熱剤など)
子どもの薬疹で原因になりやすい薬には、以下のようなものがあります。

服用を開始して発疹が出た場合は、最近使用している市販薬を含むすべての薬を医師に伝えましょう。
また、抗生剤や感冒薬を飲んでいる時期は、同時にウイルス感染に伴う発疹が出ることも多く、「薬のせい」とも限りません。自己判断で中止せず、すぐに処方医に相談しましょう。
薬疹のアレルギーのタイプ
薬疹のアレルギーのタイプには、薬を飲んで10〜30分程度の短時間で症状が現れる「即時型アレルギー(Ⅰ型アレルギー)」と12時間〜数日後に症状が出る「遅延型アレルギー(Ⅳ型アレルギー)」の2種類に分けられます。
どちらのタイプなのかによって、発疹の出方や注意すべき症状が変わるため、まずは特徴を整理しておくことが大切です。
即時型アレルギー(Ⅰ型アレルギー)
即時型アレルギー(Ⅰ型アレルギー)は、薬に対してIgEが関与して起こるタイプです。
体がその薬をアレルゲンとして認識すると、肥満細胞(マスト細胞)が反応し、ヒスタミンなどの物質が放出されます。この反応はスピードが速いため、薬を飲んでから10〜30分程度、早い場合は数分で症状が現れます。
症状として多いのは、突然出てくる蕁麻疹や強いかゆみです。皮膚が赤く盛り上がったり、全身に広がったりすることがあります。また、唇やまぶたが腫れる血管性浮腫がみられることもあります。
さらに重症になると、喉の違和感や息苦しさ、ゼーゼーする呼吸などが出て、アナフィラキシーにつながる可能性もあるため注意が必要です。
遅延型アレルギー(Ⅳ型アレルギー)
遅延型アレルギー(Ⅳ型アレルギー)は、薬を飲んだ直後ではなく、数時間〜数日後に発疹が出るタイプです。
小児外来で遭遇する薬疹の多くはこのタイプで、麻疹のような赤い発疹(紅斑丘疹)が全身に左右対称に広がる形が典型です。かゆみを伴うこともありますが、比較的元気が保たれているケースも少なくありません。
即時型(Ⅰ型)と異なり、症状が出るまでに時間差があるため、原因となった薬が分かりにくい点が問題になります。また、原因薬を再度使用した場合に同様の発疹が再び現れる可能性があるため、使った薬の名前や開始日を控えたうえで、医師に相談することが大切です。
子どもの薬疹の見分け方

子どもの肌はデリケートなため、薬疹以外にもあせもやウイルス感染による発疹などよく似た症状が見られます。ここでは、薬疹を見分けるポイントを解説します。
よく見られる症状
子どもの薬疹でよく見られるのは、全身に赤い斑点やブツブツが出る症状です。薬の成分が全身に回ることで、皮膚の毛細血管が拡張し、炎症が起きることがあります。
子どもの薬疹のタイプには、以下のようなものがあります。

短時間で全身に広がるような赤みがある場合は、薬疹の可能性があるため医療機関へ相談してください。
あせもとの違い
薬疹とあせもは、出現する場所や消えるまでの時間が異なります。それぞれの疾患の違いは以下のとおりです。

汗をかきやすい場所だけに出ているか、短時間で消えるかなどの確認で、緊急性の高い薬疹なのか、日常的な皮膚トラブルなのかを推測できます。
ウイルス性発疹との見分け方
薬疹と見分けがつきにくいものに、風邪などをきっかけに起こるウイルス性発疹があります。ウイルス性発疹では、発疹が出る前後に発熱や咳、鼻水、下痢などの感染症状を伴うことが多く、体調の経過と発疹の出現時期が連動するのが特徴です。
発疹は時間とともに自然に軽快することが多く、かゆみが比較的軽い場合もあります。発疹が出たタイミングや、発熱が先行していたか、風邪が治りかけていたかといった経過は、薬疹かどうかを判断する重要な手がかりになります。
ほかの皮膚トラブルとの混同に注意
子どもの発疹は原因がさまざまで、薬疹とよく似た症状も多いため見分けが大切です。薬疹と思っていても、別の皮膚トラブルであることがあります。
固定薬疹は、特定の薬を飲むたびに同じ場所に赤い腫れや水ぶくれが出るのが特徴で、治ったあとに黒ずみが残ることもあります。口唇ヘルペスは、疲れや体調不良をきっかけに唇の周りがピリピリ痛み、小さな水ぶくれが集まって現れます。
虫刺されやかぶれは、肌に触れた部分だけに赤みやブツブツが出やすく、薬の服用とは関係ありません。新しい薬を飲み始めたあとに発疹が出た場合は、自己判断せず、処方した医師に相談することが安心です。
受診すべき重症化のサイン

一部の薬疹では、重症化したり発疹が皮膚だけでなく粘膜や全身にまで広がったりする場合があります。どのような症状が危険なのか、詳しく見ていきます。
皮膚の症状(発赤・水ぶくれ・ただれ)
皮膚に発赤や水ぶくれ、ただれが見られる場合は通常の湿疹とは異なり、皮膚の深い部分まで炎症が及んでいることがあります。
発赤や水ぶくれは、薬に対する免疫反応が強く現れているサインで、皮膚が炎症を起こしている状態です。症状が進むと皮膚がむけ、ただれて痛みやしみる症状を伴うことも少なくありません。
皮膚や粘膜に広い範囲で異常が生じるスティーヴンス・ジョンソン症候群や、中毒性表皮壊死症などの重篤な薬疹の疑いもあります。(※1)
見た目はそれほどひどくなくても数時間で悪化するケースもあるため、子どもの皮膚症状が現れたら、早めに医師へご相談ください。
全身症状(高熱・目の充血・唇や口内の荒れ)
発疹に加えて、高熱や粘膜の異常があるときは、薬疹が重症化している可能性があります。次のような症状が1つでも見られる場合は、早急に医療機関への受診が必要です。

発疹だけでなく、いつもと違うと感じる場合は、専門的な治療が必要な可能性があります。
アナフィラキシー症状
アナフィラキシーは、薬疹のなかでも緊急性が高い状態です。原因となる薬を摂取してから短い時間のうちに全身に激しいアレルギー症状が現れます。
以下のチェックリストに当てはまる場合、アナフィラキシーの可能性があります。
- 全身に広がるじんましん
- 顔やまぶた、唇の急な腫れ
- ゼーゼーする呼吸音
- 声のかすれ、犬が吠えるような咳
- 繰り返す嘔吐、強い腹痛
- 血圧の低下
- 意識がもうろうとする、めまい、失神
- 冷や汗、手足のしびれや脱力感
薬の使用後に呼吸や意識に異常が見られた際は、救急医療機関に連絡して状況を伝えてください。
子どもに薬疹が疑われたときの対応と治療

子どもに薬疹が疑われるとき、保護者が行うことは「原因の遮断」と「正確な情報の記録」です。薬疹が現れたときの対応と、病院で行われる治療について解説します。
まず行うべき対応
まずは、原因と思われる薬の使用を中止しましょう。てんかんや心臓の薬など、急にやめると危険なものもあるため、処方した医師やかかりつけ医に確認してください。
次に、症状の経過を観察し、記録しておきましょう。いつ、どこに、どのような発疹が出たのかを時系列で記録します。発疹の写真を撮っておくと、診察時の有効な情報となります。発疹だけでなく、子どもの活気や食欲など、全身の様子を伝えるのも良いでしょう。
夜間や休日で判断に迷う場合は、子ども医療電話相談(#8000)の利用も検討してください。
抗ヒスタミン薬・ステロイドが使われる場合
薬疹の治療では、主に抗ヒスタミン薬とステロイドが使われます。抗ヒスタミン薬は、かゆみや赤みを抑えることを目的とした薬で、薬疹によるかゆみやじんましん、皮膚の赤み・盛り上がりがある場合に処方されます。
ステロイドは免疫反応や炎症を強く抑える薬で、皮膚の炎症が強い場合や、症状が広範囲に及ぶ場合に使用されます。塗り薬として局所に使うこともあれば、症状が重い場合には内服薬や点滴が選択されることもあります。
ステロイドの副作用を心配される方もいますが、長期間(数週間以上)でなければ、過度に心配する必要はありません。ステロイド薬を使用する際は、病態や重症度に応じ、薬の種類、用量、使用期間などが判断されています。
薬による発疹は、症状の出方で対応が変わります。
まず、息苦しさやゼーゼーする呼吸、顔や唇の腫れ、ぐったりするなど全身症状がある場合は緊急性が高く、すぐに医療機関へ連絡・受診が必要です。
赤い発疹が体に広がっていても元気が保たれている場合は、慌てすぎる必要はありませんが、原因となった薬を見極めることが重要になります。薬の名前、飲み始めた日、発疹が出た日をメモし、受診時に伝えると判断がしやすくなります。
一方で、発熱に加えて口の中のただれ、目の充血や痛み、唇の荒れ、水ぶくれ、皮膚がむけるなどがある場合は重症の可能性があり、早めの受診が必要で、入院治療が検討されることもあります。発疹が出たときは「呼吸や全身症状があるか」「粘膜(目・口)や水ぶくれがないか」を確認し、迷う場合は早めに相談するのが安全です。
診断の流れと受診時に必要なもの
薬疹の診断で特に重要なのは、「いつ」「どの薬を」「どのくらい使ったか」という情報です。受診時には、まず問診で最近使用した薬を確認します。処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントも含めて確認し、症状が出るまでの経過や、本人・家族のアレルギー歴についても詳しく聞き取ります。
次に視診を行い、発疹の形や色、広がり方、全身状態を観察します。あわせて、目や口、陰部などの粘膜に異常がないかを確認し、薬疹のタイプを判断します。
必要に応じて検査を行うこともあります。皮膚のパッチテスト、リンパ球刺激試験、内服誘発試験などが検討されます。
当院では主に、DLST;薬剤リンパ球刺激試験を実施しています。DLST(薬剤リンパ球刺激試験)は、血液を採って、患者さんのリンパ球が「疑わしい薬」に反応して増える(刺激される)かを調べる検査です。薬が原因かどうかを判断する材料の一つになります。
まとめ
子どもに薬疹の疑いがあるときは、できるだけ早く医師の診察を受けましょう。薬疹は乾燥やかぶれ、ヘルペスなどと見分けがつきにくく、原因となる薬を飲み続けると症状が悪化する可能性があります。
ただれや水ぶくれ、高熱、息苦しさなどがある場合は、重症化のサインかもしれません。受診の際には、実際に飲んでいる薬を持参したり、スマホの写真などで症状の経過を伝えたりすることが大切です。
ベスタこどもとアレルギーのクリニックでは、薬疹が疑われる場合の診断やDLST(薬剤リンパ球刺激試験)などの専門的な検査、そして治療を行っています。服薬後に肌や全身の症状が現れたときは、早めにご相談ください。
参考文献
- 日本アレルギー学会:「アレルギー疾患の手引き2025」
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監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
医療上の免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の赤ちゃんの状態や健康に関する問題については、必ず医師の診察を受けてください。この記事の情報だけで判断せず、ご心配な点はかかりつけ医にご相談ください。
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
