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男性へのHPVワクチン接種|男児でも受けられる時期とメリット

HPVと聞くと、女性の子宮頸がんを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。HPV(ヒトパピローマウイルス)は男性にも感染し、口腔がんや肛門がん、陰茎がんなどの深刻な病気の原因となることがわかっています。(※1)
HPVワクチンの接種は、ご自身の将来のがんリスクを下げることにつながります。
この記事では、男性がHPVワクチンを接種する具体的なメリット、費用、副反応について詳しく解説します。男の子もHPVワクチンを接種できるので、子どもの将来を守るために予防を考えていきましょう。
もくじ
なぜ今、男性へのHPVワクチンが注目されているのか

HPV(ヒトパピローマウイルス)は、女性の子宮頸がんに関係するだけでなく、男性でも中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんや尖圭コンジローマの原因となります。(※1)
自分が感染源となり大切なパートナーにうつす可能性もあるため、海外では男性への接種も広く行われています。日本でも男性接種の重要性が認識され始めており、男児でも接種できますが、まだ十分に普及しているとはいえません。
9価ワクチンの男性への適応拡大(シルガード9の承認)
広範囲のHPVを防ぐ9価ワクチン(シルガード9)が、2025年8月から男性にも使えるようになりました。(※2)9価とは、がんや尖圭コンジローマの原因になりやすい9種類の代表的なHPVの感染を防ぐという意味です。
シルガード9の接種は、男性が将来かかる可能性のあるがんや性感染症を予防できる、有効な選択肢です。
HPVワクチン接種で期待される主なメリット

HPVワクチンは、性別を問わず病気の予防ができます。ここでは、男性がHPVワクチンを接種することで得られる4つのメリットを解説します。
①HPV関連がんのリスクを下げる
HPVは子宮頸がんだけでなく、以下のように男性がかかるがんの原因になることもわかっています。(※1)
- 中咽頭がん:のどの奥(舌の付け根や扁桃腺など)にできるがん
- 肛門がん:肛門やその周辺にできるがん
- 陰茎がん:男性器にできるがん
ワクチン接種は、HPV関連がんの発症リスクを下げることが期待できます。
9価ワクチン(シルガード9)は、HPVが原因の肛門がんの95.9%に関わるウイルスの型に対応しています。(※2)
がんの治療は、手術や放射線治療など、心身ともに大きな負担を伴います。
HPV関連がんの多くは、ワクチン接種によって発症リスクを大きく下げることができると報告されています。(※3)お子さんの健康を考えるうえで、ワクチンについても前向きに検討してみましょう。
②尖圭コンジローマなどを予防できる
尖圭コンジローマは、HPV感染によって性器や肛門のまわりにイボができる性感染症です。命に関わる病気ではありませんが、生活の質(QOL)を下げてしまいます。
主な症状は、ニワトリのトサカやカリフラワーに似た形のイボです。痛みやかゆみを伴うこともあり、何より見た目の問題で大きな精神的苦痛を感じる方が少なくありません。
治療しても再発を繰り返しやすく、塗り薬や液体窒素でイボを取り除いても、皮膚に残ったウイルスが再び活動を始めることがあります。
9価ワクチン(シルガード9)は、尖圭コンジローマの原因であるHPV型の95%をカバーすると報告されています。(※2)ワクチンには、繰り返しやすい尖圭コンジローマを予防する効果も期待できます。
③パートナーへの感染予防につながる
HPVは主に性交渉によって感染が広がります。男性の場合、HPVに感染しても症状が出ないことが多く、気づかぬうちに大切なパートナーへウイルスをうつしてしまうかもしれません。
女性がHPVに感染すると、子宮頸がんを発症するリスクが高まります。子宮頸がんは、若い女性の命や、将来子どもを産む機能を奪う可能性のある深刻な病気です。
男性がHPVワクチンを接種することは、ご自身を守るだけではなく、お子さんの将来のパートナーを子宮頸がんのリスクから守ることにつながります。
男性のHPVワクチン接種の対象・費用・スケジュール

現在、日本では男性へのHPVワクチンの定期接種は始まっておらず、任意接種のみとなります。男性がHPVワクチンを接種する際の対象年齢、費用、接種スケジュールを解説します。
小学6年生〜高校1年生男子は助成制度で接種可能
多くの自治体が独自の助成制度を開始しており、小学6年生〜高校1年生の男子が対象です。(※4)助成制度を利用することで、接種費用の一部または全額が公費でカバーされ、自己負担を大幅に軽減、あるいは無料で接種できる場合があります。
詳しい手続きや助成内容は自治体によって異なります。お住まいの市区町村のWebサイトや保健所に確認してみましょう。
20〜30代男性の自費接種と費用相場
自治体での助成対象年齢を過ぎた20〜30代男性も、全額自己負担でHPVワクチン接種は可能です。任意接種の費用は、9価ワクチンか4価ワクチンか、医療機関によっても異なります。
一般的な費用相場は以下のとおりですが、あくまで目安とお考えください。

接種を検討する際は、お住まいの自治体に助成制度がないか、問い合わせてみると良いでしょう。
9価ワクチン(シルガード9)の接種回数と接種期間
9価ワクチン(シルガード9)は、接種年齢によって回数と間隔が異なるのが特徴です。15歳未満での接種は2回、15歳以上では3回が基本となります。若年ほど免疫の反応が高く、少ない回数でも十分な抗体が得られるためです。
【接種スケジュール】

ワクチンの効果を得るためには、定められた間隔で接種を完了することが重要です。1年以内の完了が望ましいとされますが、体調や予定により間隔が空いてしまっても大丈夫です。
スケジュールの調整は医師の判断で行えるため、途中で中断せずに相談しながら進めることが大切です。
接種前に知っておきたい副反応

ワクチン接種の副反応の多くは、ワクチンが体内で働き、ウイルスに立ち向かうための免疫機能が正しく作動している証拠でもあります。安心して接種に臨めるように、HPVワクチンで起こりうる副反応と、接種後の過ごし方を詳しく解説します。
一時的な副反応(腫れ・発熱・頭痛など)
HPVワクチンを接種したあと、多くの方に一時的な体の変化が見られることがあります。これは免疫を獲得する過程で起こる自然な反応で、数日で落ち着くことがほとんどです。
9価ワクチン(シルガード9)の接種後に報告されている主な副反応と頻度を以下の表にまとめています。(※5)

接種部位の痛みが気になる場合は、清潔な濡れタオルなどで冷やすと症状が和らぐことがあります。発熱や頭痛がつらい場合には、市販の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)が使用できることもあります。
症状が長引いたり、不安に感じたりした場合は、遠慮なく医療機関にご相談ください。
国内外で報告されているまれな重篤事例
頻度は低いものの、HPVワクチン接種後に以下のような重篤な症状が報告されています。(※5)
- アナフィラキシー:呼吸困難や血圧低下などを引き起こす、重いアレルギー反応
- ギラン・バレー症候群:手足の力が入りにくくなるなどの、末梢神経の症状
- 急性散在性脳脊髄炎(ADEM):頭痛、嘔吐、意識の低下などを引き起こす、脳や脊髄の神経の症状
万が一のアナフィラキシーに備え、接種後30分程度は医療機関で待機していただくのも、安全を優先するための対策です。
接種後の生活上の注意点
お子さんがワクチンを接種した当日は、できるだけリラックスさせることが大切です。副反応を悪化させないためにも、激しい運動は避け、接種部位を掻きむしったりしないように注意しましょう。
いつもと違う気になる症状が現れた場合も、速やかに接種した医療機関に連絡してください。
まとめ
HPVワクチンは、女性だけのものではありません。ご自身を将来のがんや尖圭コンジローマから守るだけでなく、大切なパートナーを子宮頸がんのリスクから守ることにもつながる予防策です。
小学6年生〜高校1年生の男子は、多くの自治体で費用助成を受けられる可能性があります。お子さんの将来の健康を守るために、ぜひ一度お住まいの自治体の制度を確認し、ご家庭で話し合ってみてください。
大人になってからでも接種は可能です。自分と大切な人の未来を守るための賢明な判断になります。ベスタこどもとアレルギークリニックでは、男児へのHPVワクチン接種に関するご相談や接種のご案内も行っています。
将来の健康を守るために、まずはお気軽にご相談ください。
参考文献
- Garolla A, Graziani A, Grande G, Ortolani C, Ferlin A.HPV-related diseases in male patients: an underestimated conundrum.J Endocrinol Invest,2024,47(2),p.261-274.
- MSD株式会社:「9価HPVワクチン「シルガード®9水性懸濁筋注シリンジ」肛門がんの予防の適応追加と男性への接種対象拡大について承認を取得」
- 厚生労働省:子宮頸がん予防ワクチンの有効性について
- 水戸市感染症・予防接種情報ナビ:「男子ヒトパピローマウイルス感染症予防接種(任意接種)」
- 厚生労働省:「医療従事者の方へ ~HPVワクチンに関する情報をまとめています~」
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監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
医療上の免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の赤ちゃんの状態や健康に関する問題については、必ず医師の診察を受けてください。この記事の情報だけで判断せず、ご心配な点はかかりつけ医にご相談ください。
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
