トピックス
子ども(赤ちゃん)が誤嚥したら?応急処置と受診の目安を解説

食事中、子どもが突然激しく咳き込んだり、苦しそうにしたりしてヒヤッとした経験はありませんか。その一瞬の出来事は、単なるむせ込みではなく、命に関わる誤嚥のサインかもしれません。
大人の気管の太さが約2cmなのに対し、子どもの気管は1cmにも満たないほど細いです。ミニトマトやブドウのような小さな食べ物一つで完全に塞がれる危険があり、わずか数分で深刻な事態に発展することもあります。(※1)
本記事では、1歳未満に行う「背部叩打法+胸部突き上げ法」、1歳以上に行う「背部叩打法+ハイムリック」などの応急処置や、すぐに救急車を呼ぶべきケースなどについて解説します。
もくじ
誤嚥とは?

誤嚥とは、食べ物や飲み物、唾液などが、本来通るべき食道ではなく、誤って空気の通り道である気管や気管支に入る状態を指します。
似ている状態として、誤飲や窒息などがありますが、それぞれの違いは次のとおりです。

誤飲・窒息との違いを理解し、お子さんの様子を注意深く観察することが、いざというときの適切な対応につながります。
ここでは、子どもの誤嚥で見られる危険な症状や起こりやすい年齢について詳しく見ていきましょう。
①誤嚥で見られる危険な症状
お子さんが誤嚥を起こしたときに見られる危険な症状を以下の表にまとめました。(※1)

これらの症状が見られたときは、すみやかに医療機関を受診しましょう。
②誤嚥が起こりやすい年齢
子どもの誤嚥は、特に生後5か月頃〜4歳頃までに多く見られます。(※1)生後3〜4歳頃までは、飲み込み機能が未熟であることが原因です。
食べ物を噛んで、舌でまとめ、タイミングよく飲み込むには、脳や神経、筋肉の高度な連携が必要です。しかし、子どもは飲み込み機能がまだ十分に発達していません。特に、早産児・嚥下発達に遅れがある子は、飲み込む力がより未熟であることが知られています。(※2)
奥歯が生えそろう2歳半〜3歳頃までも注意が必要です。奥歯が生えていないと、食べ物を細かく噛み砕くことが難しく、大きな塊のまま飲み込んで誤嚥しやすくなります。
1〜3歳頃は好奇心旺盛で、おもちゃの小さな部品やボタン電池なども口に入れてしまい、誤嚥につながりかねません。間違って子どもがおもちゃを食べないよう、保護者はしっかりと見守ることが大切です。
子どもが誤嚥しやすい食べ物や日用品

日常にあるささいな食べ物や日用品が、思わぬ誤嚥事故につながることがあります。大切なお子さんを危険から守るために、どのようなものが誤嚥しやすいのかを具体的に知っておきましょう。
危険な食べ物
子どもが誤嚥しないよう特に注意が必要な食べ物には、以下のような特徴があります。

これらの食べ物を与える際は、喉に詰まらないよう小さく切ったり、年齢に応じて与えるのを控えたりするなどの工夫が重要です。
おもちゃ・ボタン電池など
食べ物だけでなく、子どもの身の回りにある小さなおもちゃや日用品も、誤嚥の大きな原因です。
トイレットペーパーの芯(直径約4cm)を使うことで、簡単におもちゃや日常品の危険度をチェックできます。芯を通り抜けてしまう大きさのものは、子どもの口にすっぽり入り、誤嚥や窒息、誤飲を引き起こす可能性があります。(※1)
特に注意が必要なおもちゃ・日用品は、以下のとおりです。
- ボタン電池
- スーパーボール・ビーズ・おはじきなどの小さなおもちゃ
- ペンのキャップや小さな消しゴム
- 硬貨・ボタン・ヘアピン・画鋲・磁石
- タバコの吸い殻
ボタン電池は、胃の粘膜に触れると数分で消化管に穴を開けるため命に関わります。ボタン電池が使われている製品は、電池ボックスの蓋が簡単に開かないよう、テープで補強するなどの対策をとりましょう。
子どもが誤嚥したときの応急処置3選

子どもが誤嚥したときの応急処置としては、次の3つがあります。

ここでは、それぞれの応急処置の正しいやり方やチェックリストを解説します。
①背部叩打法(背中を叩く)
背部叩打法は、1歳未満の乳児が対象の基本的な応急処置です。次のケースに当てはまるときに、直ちに実施します。
- 1歳未満の乳児
- 意識はある
- 咳が弱い、またはほとんど出ない
赤ちゃんをうつ伏せで腕に乗せ、頭が少し下がる角度を保った状態で支えます。そのまま肩甲骨の間を手の付け根で力強く5回叩き、口の中に異物が見えれば取り除きます。
気道を圧迫しないようにするほか、異物が見えても無理に口に指を入れないように注意しましょう。
②胸部突き上げ法(胸部を圧迫する)
胸部突き上げ法は、背部叩打法を行なっても異物が出てこない場合に行う応急処置です。背部叩打法と繰り返し行うことで、異物を取り出しやすくなります。次のケースに当てはまるときに実施しましょう。
- 1歳未満の乳児
- 意識がある
- 背部叩打法で異物が出ない
赤ちゃんを仰向けにし、頭が体より低くなる姿勢を保ったまま、乳首の中央より指1本分足側を人差し指と中指で胸の厚さ1/3ほど沈む深さで5回圧迫します。
背部叩打法で異物が出ないときに行い、この2つを5回ずつ交互に繰り返すことが大切です。
もし赤ちゃんがぐったりしたら、直ちに心肺蘇生法に切り替える必要があります。すぐに119番へ通報し、救急隊が来るまで胸骨圧迫を続けてください。
③ハイムリック法(腹部を突き上げる)
意識がある1歳以上の子どもに行う応急処置がハイムリック法です。次の条件に当てはまるケースで実施しましょう。
- 1歳以上の子ども
- 意識がある
子どもの背後から腕を回し、握りこぶしをへその少し上・みぞおちの真下に当て、もう片方の手で包んで内側かつ上方向へ力強く突き上げます。
異物が出るか意識がなくなるまで繰り返し、意識を失った場合は直ちに心肺蘇生へ切り替えます。
ハイムリック法では横隔膜や腹部の臓器を傷める可能性があるため、実施した後は医療機関を受診して医師の診察を受けましょう。
子どもが誤嚥したときの受診の目安

子どもが誤嚥したときの受診の目安は「①すぐに救急車を呼ぶべき緊急性の高いケース」と、「②一旦落ち着いても医療機関を受診すべきケース」の2つがあります。以下で詳細を説明していきます。
①すぐに救急車を呼ぶべきケース
子どもに以下の症状が見られる場合は、命に関わる緊急事態なので、すぐに救急車を呼んでください。

これらの症状は、窒息を示唆している可能性があります。
②受診すべきケース
応急処置で異物が出てきたり、咳き込みが一旦落ち着いたりした場合でも、安心はできません。目に見えない小さなかけらが気管支の奥に残り、後から重い肺炎などを引き起こす危険性があります。
子どもに以下のような症状が見られたら、病院を受診してください。
- 激しい咳が続いていたりぶり返す
- 「ゼーゼー」「ヒューヒュー」などの異常な呼吸音がする
- よだれの量が異常に多い
- 食べ物や飲み物を飲み込みにくそうにしている
- 声がかすれている状態が続く
- 発熱している
- なんとなく元気や食欲がない
特に、ボタン電池や磁石、針・画鋲・ヘアピン、タバコなどを飲み込んだ疑いがあるときは、特に危険です。。症状がなくても体に重大な害を及ぼす可能性があるため、直ちに救急外来などを受診してください。
受診の際は、「いつ、何を、どのくらい」飲み込んだかを伝えられるようにしておきましょう。飲み込んだ物と同じ物を持参すると、診察や検査の大きな助けになります。
迷ったときは小児救急電話相談(#8000)が重要

救急車を呼ぶべきか迷ったときは、小児救急電話相談(#8000)に電話することが大切です。
小児救急電話相談事業は、夜間や休日に、小児科の医師や看護師へ直接電話相談できる窓口です。全国どこからでも「#8000」をプッシュすれば、お住まいの地域の相談窓口につながります。受付時間は地域によって異なりますが、多くの地域では平日と土曜日が19時頃から翌朝8時まで、日曜日・祝日が24時間です。
電話口の専門家は、お子さんの状況を丁寧に聞き取り、緊急性や家庭での応急処置、受診の必要性について具体的なアドバイスをしてくれます。
「咳は止まったけれど、なんとなく元気がない」「何を飲み込んだか分からない」など、少しでも不安を感じたら、ためらわずに電話してください。専門家からの客観的なアドバイスは、保護者の方の不安を和らげ、冷静な判断を助けてくれます。
誤嚥を防ぐ家庭でできる予防法

家庭ですぐに実践できる具体的な予防法は、以下の4つです。
①食材の切り方を工夫する
②食事中の環境を整える
③危険なおもちゃを避ける
④安全な環境にする
①食材の切り方を工夫する
子どもの誤嚥を防ぐ予防法の一つが、食材の切り方を工夫することです。食材別の工夫ポイントを以下の表にまとめました。

特に、豆類や飴、グミ、こんにゃくゼリーは、小さくても弾力や硬さがあり、気管にはまり込むと取り除きにくく危険な食品です。これらは、少なくとも4歳頃になるまでは与えないようにしましょう。
②食事中の環境を整える
食事中の環境を整えることも、子どもの誤嚥を予防する手段です。
食事中にテレビを見たりおもちゃで遊んだりすると、脳への指令が分散し、飲み込みのタイミングがずれやすくなります。お子さんが食事に集中できる環境を整えることは、誤嚥を防ぐための基本です。
以下のチェックリストを参考に、食事環境を整えましょう。

落ち着いた環境で食べることを楽しむ習慣をつけることが、安全な食事につながります。
③危険なおもちゃをなるべく避ける
子どもの誤嚥を防ぐために、危険なおもちゃはなるべく避けてください。
子どもが口に入れられる大きさの物は、誤嚥や窒息を引き起こす可能性があります。トイレットペーパーの芯を使い、定期的におもちゃや小物の危険度を確認する習慣をつけてください。
おもちゃを購入する際は、対象年齢を守りましょう。おもちゃに記載されている対象年齢は、遊びの発達段階だけでなく、安全性も考慮されています。
おもちゃを買った後も、定期的なチェックを忘れてはいけません。おもちゃが壊れて小さな部品が露出していないか確認することが大切です。安全性を第一に考え、子どもから目を離さないことが重要です。
兄弟がいる場合は、上の子が使う小さなおもちゃは、下の子の手が届かない場所に保管するルールを家族で徹底しましょう。
④安全な環境に整備する
家庭内の部屋環境を整えることも、子どもの誤嚥を防ぐのに重要です。子どもの目線に立って部屋の中を見渡し、危険な物が置かれていないか定期的にチェックする習慣をつけましょう。
ボタン電池やタバコ、医薬品・サプリメント、アクセサリーなどは、子どもの手の届かない場所に置くことが大切です。蓋付きの容器に入れたり、鍵のかかる棚に保管したりし、子どもに見つかっても開けられないようにしてください。
子どもの手の届く範囲は、成長とともに驚くほど広がります。踏み台などを使えば、大人が思う以上に高い場所にも手が届くことを忘れてはいけません。1歳児であれば約90cm、2歳児は約110cm、3歳児は約120cmの高さまで手が届きます。(※3)
「ここなら大丈夫」という思い込みを捨て、危険な物は子どもの生活スペースから徹底的に排除し、安全な環境を整えましょう。
まとめ
窒息を防ぐために重要なことは、日頃から危険なものを遠ざけ、食事の環境を整える予防です。しかし、万が一の事態が起きてしまったときは、慌てずにこの記事で紹介した応急処置や受診の目安を思い出してください。
救急車を呼ぶべきか、病院へ行くべきか判断に迷ったときは、一人で抱え込まず、小児救急電話相談(#8000)の活用も大切です。
ベスタこどもとアレルギークリニックでは、誤嚥や窒息などの対応に関する相談はもちろん、成長段階に応じた食事の相談もサポートしています。気になる症状やご不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
参考文献
- 公益社団法人日本小児科学会:「食品による窒息 子どもを守るためにできること」.
- Changhun Han, Jaeho Shin, Ga Won Jeon.Development of Swallowing Function in Infants with Oral Feeding Difficulties.Int J Pediatr,2020,2020,p.5437376.
- 政府広報オンライン:「赤ちゃんやこどもを誤飲・窒息事故から守る!万一のときの対処法は?」.
ベスタクリニックの公式LINEでは、離乳食のポイントやアレルギーに関する最新情報、練馬区周辺の小児医療情報などを配信中です。ぜひお友だち登録して、子育てにお役立てください!LINEからの予約も可能です。

QRコードでLINEの友だちを追加
LINEアプリの友だちタブを開き、画面右上にある友だち追加ボタン>[QRコード]を
タップして、コードリーダーでスキャンしてください。
監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
医療上の免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の赤ちゃんの状態や健康に関する問題については、必ず医師の診察を受けてください。この記事の情報だけで判断せず、ご心配な点はかかりつけ医にご相談ください。
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
