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「IgA血管炎」子どもの足に謎の紫斑?痛くて歩かない【ベスタ小児科医解説】
「昨日まで元気に走り回っていたのに、急に足が痛いと泣いて歩きたがらない…」
「お着替えのとき、足やお尻に赤いポツポツとした発疹を見つけて、これって何だろう?」
「なんかお腹も痛がっている。」
その症状、もしかしたら**「IgA血管炎」**かもしれません。以前は「アレルギー性紫斑病」や「ヘノッホ・シェーンライン紫斑病」とも呼ばれていた病気です。
少しドキッとなるような聞き慣れない病名ですが、IgA血管炎は、子どもによく見られる病気の一つであり、そのほとんどは自然に良くなります。過度に心配する必要はなく、病気について正しく理解し、適切なタイミングで見守っていくことが大事です。
もくじ
IgA血管炎って、どんな病気?
IgA血管炎は、「全身の細い血管に炎症が起きる病気」です。
私たちの体には、免疫という体を守るシステムがあります。この免疫システムが、何らかのきっかけで自分の血管を攻撃してしまうことで炎症が起こります。特に、皮膚、関節、お腹の血管が影響を受けやすいです。
3歳から10歳くらいのお子さんによく見られ、少し男の子に多い傾向があります。
小児では最も頻度の高い血管炎であり、小児科医の中ではよく知られている疾患です。
なぜ起こるの?原因は?
風邪や扁桃炎などの感染症(溶連菌、マイコプラズマ、ウイルスなど)が引き金になると考えられていますが、正確な原因は完全には解明されていません。
感染症をきっかけに免疫システムが過剰に反応し、IgAという抗体が血管に沈着して炎症を引き起こす、というメカニズムが想定されています。
溶連菌など、引き金となる病原体が体の中にいた場合は、除菌などの対応を行います。
IgA血管炎の主な症状は?この4つが大事!
IgA血管炎には、特徴的な4つの症状があります。
すべての症状が同時に出るわけではなく、時間差で現れることもあります。
【1】皮膚の症状(紫斑)
これが最も特徴的な症状で、ほぼ100%みられます。
主に、足やお尻に、少し盛り上がった**赤い点状の紫斑(内出血)**が現れます。
虫刺されやあせもと違い、指で押しても色が消えないのが特徴です。

【2】足や関節の症状
足首や膝の関節が腫れて痛がります。急に歩くのを嫌がったり、抱っこをせがんだりするようになります。関節以外に足やふくらはぎが腫れて痛がる場合もあります。50-70%でみられます。
【3】お腹の症状
お腹の血管に炎症が起きることで、繰り返し腹痛がみられます。吐き気や嘔吐、血便(イチゴジャムのような便)を伴うこともあります。50-70%程度でみられます。腹痛が非常に強い場合や水分が摂れない場合は、入院が必要になることもあります。稀ですが、腹痛症状が遷延し、入院が比較的長期に及ぶこともあります。
多くの場合、紫斑や関節痛、腹痛といった主な症状は、だいたい1-3週間ほどで自然に軽快します。
【4】腎臓の症状(腎炎)
これが、IgA血管炎で最も注意が必要な合併症です。【1】~【3】の症状と違い、将来的な障害が残る可能性があるためです。10-30%にみられます。
目に見える症状はほとんどありませんが、尿検査をすると血尿や蛋白尿が見られます。
腎症状は、皮膚や腹痛などの症状に少し遅れて出てきますが、ほとんどは数か月~半年以内に改善します。IgA血管炎を発症後、数か月遅れて腎症状が現れることもあるので、皮膚や腹痛などの症状が消えた後も定期的な尿検査による経過観察が重要です。
再発はどのくらいするのか?
IgA血管炎は、約3人に1人のお子さんが再発を経験すると言われています。
しかし、再発したとしても、その多くは初回よりも症状が軽いことがほとんどです。
筆者はIgA血管炎を発症した多くの患者さまを外来でフォローしてきましたが、「少しだけ足のブツブツが出たけど、腹痛や足の痛みは大丈夫でした。」といったように事後報告で済むような再発の仕方が多く、過剰に心配しなくもて大丈夫だと思います。
一部例外はありますが、何度も繰り返し再発し、長期化することも稀です。腎症状さえ問題なければ、多くの方が半年~一年以内で定期フォロー終了となります。
IgA血管炎の診断基準
「指で押しても消えない、少し盛り上がった紫斑」があることに加えて、以下のうち1つ以上の症状がある場合に診断されます。
- 関節の痛み(関節炎)
- お腹の痛み(腹痛)
- 腎臓の症状(血尿や蛋白尿)
- 生検でのIgA沈着 ※皮膚などを採って調べる検査で、通常は行いません
採血だけで「確定診断」ができるような特別なマーカーはありません。
大事なのは、他の病気ではないことを確認することです。
紫斑が出る病気の中には、血を止める役割の血小板が減ってしまう病気(特発性血小板減少性紫斑病; ITP)や、血液のがんである白血病などがあります。血液検査で血小板の数が正常であることを確認することは、これらの病気を否定する上で非常に重要です。
血が固まるプロセスに異常がある血友病などの病気でも、出血症状が見られます。凝固系の検査で、血が正常に固まることを確認します。
また、IgA血管炎では血管の炎症や小さな血栓(血の塊)の形成を反映して、D-ダイマーという数値が上昇することがあります。また、重症例では出血傾向に関わる第13因子(FXIII)が低下することが知られており、症状の勢いを評価し、診断を行う上で参考になります。
各症状への対応・治療について
特別な治療薬はありません。病勢が強い間は安静にして、自然に症状が治まるのを待つのが基本です。
【1】皮膚の症状(紫斑)
基本的に、紫斑そのものに対する特別な塗り薬や飲み薬はありません。足を少し高くして休むと、むくみが和らぐこともあります。
【2】足や関節の症状
関節や足の痛みが強い場合はアセトアミノフェンを痛み止めとして使用します。
【3】お腹の症状
腹痛がひどい場合はステロイド薬による治療を行うことがあります。嘔吐などで経口摂取ができない場合は点滴を行います。症状が強い場合は入院での管理が必要です。
また、腹痛が非常に強い場合には、「腸重積症」、「急性胆のう炎」、「虫垂炎」、「細菌性腸炎」などを考えなければいけません。「腸重積症」と「急性胆のう炎」は、IgA血管炎の合併症として知られています。
「腸重積症」は、腸の一部が、隣の腸の中にもぐりこんでしまう病気です。放置すると腸が壊死(えし)してしまう可能性のある、緊急性の高い状態です。
これらの病気を見分けるために、お腹の診察に加えて、「腹部超音波(エコー)検査」が非常に役立ちます。腸重積の典型的な所見や、虫垂炎の兆候などを詳しく観察することができます。
また、腹痛が長引く・繰り返す場合には、クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(IBD)を考える場合があります。頻度としては非常に稀ですが、鑑別として重要です。非典型的な経過の場合は内視鏡検査(胃カメラや大腸カメラ)などを検討します。
【4】腎臓の症状(腎炎)
腎症状がみられた場合でも、自然軽快を期待できるので、基本的には経過観察となります。
数か月~半年以内に改善することがほとんどです。
しかし、血尿蛋白尿が続き、慢性腎炎へと移行する場合もあります。
腎症状が強い場合は、赤~黒褐色の血尿を生じたり、尿から漏れるタンパクが多すぎて体が浮腫んだりすることもあります(=ネフローゼ)。尿の色調変化や浮腫には注意が必要です。
腎機能が低下し、血液検査でクレアチニンという数値が悪化することもあります。
数か月~半年以上たっても血尿蛋白尿が続く場合や、ネフローゼ、腎機能障害を認めるような場合は腎生検を行い、程度に応じて腎炎に対する免疫治療を行います。
回復期:園・学校への復帰と運動制限について
基本的に、IgA血管炎は人にうつる病気ではありません。症状が改善し、お子さん自身が集団生活を送れるくらいに元気になれば、登園・通学は可能です。
腹痛や下肢痛などの症状が悪化してしまう場合は運動を控える必要があります。
復帰後もしばらくは、腎炎のチェック(定期的な尿検査)が重要であり、血尿蛋白尿の程度や、血圧や腎機能によっては運動制限が必要な場合もあります。
医療上の免責事項 本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の症状や状況に応じた医学的な診断・治療を代替するものではありません。お子さまの症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指示に従ってください。
監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
