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急増する子供のクルミアレルギー|注意点や対処法、治療法を解説

パンやお菓子など、身近な食品に含まれる「クルミ」。
このクルミが原因で、子供に命の危険が迫るアナフィラキシーが急増していることをご存知でしょうか。その危険性の高さから、2025年4月より「クルミ」のアレルギー表示が義務化されました。
この記事では、クルミアレルギーの症状の特徴や日常生活での注意点、家庭でできる対処法、治療法までを解説します。大切なお子さんを守るために、正しい知識を身につけましょう。
もくじ
子供のクルミアレルギーの症状

お子さんがクルミを食べた後、体に何らかの変化が現れたら注意が必要です。クルミアレルギーの症状は、食べてから数分~2時間以内に現れることが多く、その重症度はお子さんによって大きく異なります。
子供のクルミアレルギーの症状について、「軽度の症状」と「重篤な症状」を解説します。
軽度の症状(かゆみ・じんましんなど)
クルミアレルギーの初期症状は、皮膚や口の周りに変化が現れる傾向があります。一見すると軽い症状でも、お子さんにはつらいものです。次のようなサインを見逃さないよう、注意深く観察してください。

これらの症状が1つだけで落ち着く場合は、まず安静にして様子を見ても問題ありません。ただし、複数の症状が出る・じんましんが全身に広がる・ぐったりするなどの変化があれば、速やかに医療機関へ相談してください。
重篤な症状(呼吸困難・アナフィラキシー)
クルミアレルギーで警戒すべきなのが「アナフィラキシー」です。アナフィラキシーは、複数の臓器に急激にアレルギー反応が起こり、命を脅かす危険な状態を指します。
特に、クルミに含まれるタンパク質「Jug r 1(ジャグ・アール・ワン)」は、重篤な全身症状を引き起こす原因蛋白の一つであると研究でわかっています。(※1)以下のようなアナフィラキシーの兆候を見逃さないことが、お子さんの命を守るうえで重要です。

上記のうち、1つでも当てはまる症状が見られた場合は、アナフィラキシーを起こしている可能性が高いです。「少し様子を見よう」とためらわず、直ちに救急車を要請するか、医療機関を受診してください。
子どものクルミアレルギーを予防するうえでの注意点

クルミアレルギーと診断されたお子さんを持つご家族にとって、毎日の食事管理にはいくつかの注意点があります。日常生活での主な注意点は、以下の4つです。
①市販品は成分表示と原材料に注意する
②外食や人が作る食事に注意
③園や学校と情報を共有する
④家族で誤食防止を徹底する
①市販品は成分表示と原材料に注意する
加工食品を選ぶ際は、パッケージ裏の原材料名を確認する習慣をつけましょう。クルミはパンやお菓子だけでなく、さまざまな食品に含まれていることがあります。
クルミは2023年3月に「特定原材料」に追加されることが決定し、2025年4月から表示義務が施行されました。クルミが含まれやすい食品例は、以下の表のとおりです。

特に、パン屋さんなどで個包装されずに並んでいるパンは注意が必要です。成分表示がない場合も多く、クルミを使ったパンの隣に陳列されているだけで、アレルゲンが付着している可能性も考えられます。
②外食や人が作る食事に注意
外食や親戚・友人の家など、家庭以外での食事は、特に慎重な対応が求められます。調理の過程が見えないため、意図せずクルミが混入するリスクが高まるからです。
特に、外食産業やお惣菜などは、加工食品と違ってアレルギー表示の義務がありません。そのため、お店の方への確認が大切です。
外食時は以下の項目を確認しましょう。
- 予約・注文時に重症度を伝える
- メニューの原材料を細かく確認する
- 調理環境も質問する
祖父母の家や友人宅で食事をごちそうになる際も同様です。相手に悪気はなくても、アレルギーに関する知識が不十分なために誤食が起きるケースは少なくありません。
事前にアレルギーの症状を丁寧に説明し、理解と協力を得ることが大切です。
③園や学校と情報を共有する
お子さんが日中の大半を過ごす保育園や幼稚園、学校との情報共有は、命を守るためにも重要です。入園・入学時には、以下の点を徹底して、関係者全員に正確な情報を伝えましょう。
- 学校生活管理指導表の提出
アレルギー情報と緊急時対応を医師に記載してもらい、学校へ提出 - 関係者との面談
担任・養護教諭・栄養士・調理員に直接説明し、緊急時の連携を確認
- 行事対応
調理実習、誕生日会、遠足のおやつ、図工の木の実使用などを事前に相談
進級などで担任が変わる際には、面談を行って伝えることが重要です。
④家族で誤食防止を徹底する
安全なはずの家庭内でも、「うっかり」や「ちょっとだけなら」という油断が誤食につながることがあります。ご家族全員がアレルギーの危険性を正しく理解し、協力して安全な環境を作ることが重要です。
以下のように家庭で実践できる誤食防止ルールを作りましょう。
- 保管場所を完全に分ける
- 調理器具・食器を区別する
- 調理の順番を工夫する
- 兄弟姉妹にも危険性を伝える
アレルゲン食品は手の届かない場所や鍵付き収納に保管すると安心です。調理器具は専用のものを準備するか、しっかり洗浄・消毒しましょう。
料理はアレルギー対応食を先に作り、混入リスクを減らします。兄弟姉妹にも理解できる言葉で説明し、誤って食べ物を渡さないよう気をつけてもらうことが大切です。
クルミアレルギー症状が出た時の家庭での対処法

万が一の時に備えて、ご家庭でどのように対応すれば良いかを知っておくことが大切です。ここでは、アレルギー症状が軽い場合の初期対応から、医療機関を受診すべきタイミングまで解説します。
自宅でできる初期対応
軽い皮膚症状(赤み・かゆみ・局所じんましん)が出たときの手順は次のとおりです。
- 口の中のアレルゲンを除去する(食べ物を出す・水で口をよくすすぐ)
- 手・口周りを洗う(拭き取りの後に流水で洗浄)
- 安静にして様子を見る
- 処方薬があれば医師の指示通りに内服する(抗ヒスタミン薬など)
- 嘔吐時は横向きに寝かせ気道を確保する
- 症状の変化を観察・記録する(発疹の範囲・呼吸・顔の腫れ)
- 悪化したら直ちに受診/緊急対応を検討する
市販薬の自己判断での使用は避けてください。唇や舌、まぶたの腫れなど複数部位に症状が出たら、アナフィラキシーの可能性があります。エピペン®(アドレナリン自己注射薬)を処方されている場合は速やかに使用し、医療機関を受診してください。
症状の記録と医師への伝え方
アレルギー症状で受診する際は、医師に「いつ・どこで・どんな症状が出たか」を正確に伝えることが、診断と治療に直結します。
診察の際に慌てないよう、以下の内容をメモにまとめましょう。
- 食べたもの
何をどのくらい食べたか(クルミ単体か加工品か、パッケージがあれば持参) - 時間経過
食後どのくらいで症状が出たか(例:午後3時、口周りに赤いポツポツ) - 出始めた部位と時間、症状の広がり方
- お子さんの様子
元気はあるか・ぐったりしていないか・意識の状態がはっきりしているか - 家庭での対応
薬の使用や吐いた回数など
症状の記録は、個々の状況を見極める手がかりになります。また、皮膚症状は写真に残しておくと、診察時に消えてしまっていても医師に正確に伝えられます。
受診すべきか迷ったときの判断ポイント
アレルギー症状が出たときの判断の基本は、症状が「皮膚だけ」か、それ以外の臓器(呼吸器・消化器・循環器など)にも出ているかです。
症状が軽くても、初めて症状が出た場合や少しでも不安な場合は、医療機関に相談しましょう。判断に迷うときは、小児救急電話相談(#8000)に電話してアドバイスを求めるのも一つの方法です。
クルミアレルギーの治療法

ここでは、現在の治療法と今後期待される免疫療法をわかりやすく解説します。
現時点では確立された根治療法はない
現時点でクルミアレルギーを安全に完治する治療法は、まだ確立されていません。現在の治療は「治す」ことよりも、お子さんの安全を「守る」ことに重点が置かれています。
治療の基本は、以下の2つにより成り立っています。

医師と管理栄養士が連携し、ご家庭での食事管理を具体的にサポートします。万が一の誤食に備え、症状のレベルに応じた薬(対症療法)を事前に処方し、使用方法を丁寧にお伝えすることが、私たちの役割です。
今後に期待される免疫療法
クルミアレルギーを根本から治す治療法はまだありませんが、以下のような「免疫療法」の研究が世界中で進められています。

これらはまだ研究段階であり、誰でも受けられる治療ではありません。しかし、クルミアレルギーの治療は着実に進歩しており、将来に向けて希望が広がっています。
最新の情報を主治医と共有し、お子さんに合った最善の方法を検討することが大切です。
まとめ
近年、子供のクルミアレルギーが急増しており、時に命に関わるアナフィラキシーを引き起こすこともあります。安全を守るためには、正しい知識と日常の徹底した管理が不可欠です。
治療の基本は原因食物の除去で、市販品の表示確認や調理器具の分け方など、家庭での対策が大切です。また、園や学校と連携し、誤食を防ぐ体制を整えることも重要です。アナフィラキシーが疑われる際は、迷わず救急車を呼び、エピペン®を使用しましょう。
現在、根治療法は確立されていませんが、新たな治療法の研究も進んでいます。自己判断せず、専門医に相談することが安心につながります。
ベスタこどもとアレルギーのクリニックでは、土日・祝日を含めたアレルギー診療に対応しています。アレルギー症状や食品による体調変化に気づかれた際は、医師にご相談ください。
参考文献
- Castromil-Benito ES, Betancor D, Parrón-Ballesteros J, Bueno-Díaz C, Gutiérrez-Díaz G, Turnay J, de Las Heras M, Cuesta-Herranz J, Villalba M, Pastor-Vargas C. Walnut Jug r 1 is Responsible for Primary Sensitization among Patients Suffering Walnut-Hazelnut 2S Albumin Cross-Reactivity. J Agric Food Chem, 2024, 72(32), p.18162-18170.
- Ghouri H, Habib A, Nazir Z, Lohana N, Akilimali A. Omalizumab for the reduction of allergic reactions to foods: a narrative review. Front Allergy, 2024, 5, 1409342.
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こどもの病気コラムの一覧です。
監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
医療上の免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の赤ちゃんの状態や健康に関する問題については、必ず医師の診察を受けてください。この記事の情報だけで判断せず、ご心配な点はかかりつけ医にご相談ください。
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
