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【妊娠中のワクチン】赤ちゃんをRSウイルス・百日咳から守る「母子免疫」|練馬区
ご妊娠、おめでとうございます。 新しい命に会える日が楽しみな反面、「赤ちゃんが病気になったらどうしよう」と不安を感じることもあるかもしれません。
実は、赤ちゃんが生まれる前から、ママだからこそできる「免疫のプレゼント」があります。 今回は、妊娠中に接種することで、生まれたばかりの赤ちゃんを感染症から守るワクチンについて、小児科医の視点でお話しします。
当院(ベスタこどもとアレルギーのクリニック)では、「RSウイルスワクチン(アブリスボ)」や「百日咳ワクチン」などの接種が可能です。
また、「RSウイルスワクチン(アブリスボ)」は令和8年4月から公費負担(無料)となりました。詳しくご案内しますので、ぜひ判断材料にしてください。
もくじ
生まれたばかりの赤ちゃんを守る「母子免疫」とは?

生まれたばかりの赤ちゃんは免疫が未熟ですが、胎盤を通じてママから「抗体(病気と戦う武器)」を受け取って生まれてきます。これを「母子免疫(移行抗体)」と呼びます *1)。
これは一番無防備な時期を守る「強力なお守り」となります。
赤ちゃん自身がワクチンを打って免疫を作れるようになるまでの生後数ヶ月間は、感染症が重症化しやすい最も無防備な時期です。 ママからもらった免疫は、この一番危険な時期をしっかり守り抜き、赤ちゃん自身の免疫へとバトンタッチする大切な役割を果たします。 つまり、妊娠中のワクチン接種は、生まれてすぐの赤ちゃんを確実に守るための「強力なお守り」を、あらかじめ持たせてあげることなのです。
妊娠中に接種が推奨される主なワクチン

現在、母子ともに守るために妊娠中の接種を推奨・考慮されているワクチンは主に以下の通りです *2)。
- RSウイルスワクチン(アブリスボ)
- 百日咳含有ワクチン(三種混合など)
- インフルエンザワクチン
それぞれについて、詳しく解説します。
RSウイルスワクチン(アブリスボ)について

RSウイルスは、2歳までにほとんどすべての子どもが感染する風邪のウイルスです。 大人にはただの風邪でも、生後6ヶ月未満の赤ちゃんがかかると重症化しやすく、細気管支炎や肺炎を起こして入院が必要になることがあります *3)。 これを防ぐため、妊婦さん向けのワクチン「アブリスボ」が登場しました。
メリット:赤ちゃんの重症化を劇的に防ぐ
アブリスボの最大の強みは、乳児の重症な呼吸器感染症や入院リスクを大きく下げることです。
- 高い予防効果: 生後90日以内の受診が必要な重症RSウイルス疾患を約82%予防することが報告されています *4)。
- 生涯1回の接種: 百日咳やインフルエンザワクチンとは異なり、現時点では「生涯で1回のみ」の接種とされています。
- 接種期間:**「妊娠28週〜36週」**を目安に接種することが推奨されています *2)
RSウイルス感染症や乳児の重症化リスクについて詳しく知りたい方はこちら
懸念点と接種時期の目安(早産への配慮)
「本当に打って大丈夫?」と心配な方のために、留意すべきデータもお伝えします。 一般的な副反応(注射部位の痛み、疲労感、頭痛、筋肉痛など)のほかに、理論的な懸念として「早産(妊娠37週未満での出産)の可能性がわずかに上がるかもしれない」というデータの偏り(シグナル)が指摘されています *4, 5)。
切迫早産のリスクがある方は、産婦人科の主治医による極めて慎重な判断が必要です。 「赤ちゃんを重症化から守る強力な盾になる」というメリットと、「より安全な時期を選んで打つ」という点をご理解いただいた上でご検討ください。
また、現在までに世界中で蓄積された膨大な治験データおよび市販後観察研究において、「早産(およびそれに伴う未熟性)」以外の重大な産科的・新生児的合併症の増加は確認されていません。妊娠高血圧腎症、胎児発育不全、胎児奇形、死産など、これらの合併症のリスク上昇は明確に否定されています*4, 7)。
百日咳ワクチンについて

百日咳(ひゃくにちぜき)は、激しい咳が長く続く感染症です。 特に生後3ヶ月未満の赤ちゃんがかかると、咳で呼吸ができなくなったり(無呼吸発作)、命に関わったりする危険性があります *2)。
赤ちゃんの定期接種は「生後2ヶ月」から
赤ちゃん自身がワクチンを打てるのは生後2ヶ月からです。 それまでの「空白期間」を埋めるために、妊娠中にママがワクチンを打ち、抗体を渡しておく方法が世界中で推奨されています。
- 接種のタイミング: 妊娠27週〜36週頃 *2)。
- 使用するワクチン: 三種混合ワクチン(DPT)などが用いられます。
- 接種回数: 妊娠ごとに接種します(以前の妊娠で打っていても、今回の妊娠で再度接種することが推奨されます)。
当院では、RSウイルスと百日咳ワクチンを妊娠28週以降に同時に接種することを推奨しています。
百日咳について詳しくは知りたい方はこちら
インフルエンザワクチンについて

インフルエンザワクチンも、妊娠中の接種が強く推奨されています。
ママと赤ちゃんの両方を守る
妊娠中は免疫の働きが変化するため、インフルエンザにかかるとママ自身が重症化しやすい状態にあります。インフルエンザワクチンには、まず妊婦さん自身の重症化を防ぐという大きな役割があります *1)。 さらに、母体への接種により作られた抗体が赤ちゃんに移行することで、乳児期早期のインフルエンザ発症リスクを大幅に低下させるという確かなエビデンス(科学的根拠)が確立しています *2)。
週数を問わず全期間で接種可能です
流行シーズンを迎えるにあたり、母子を守るためにぜひ接種をご検討ください。
当院で各種ワクチン接種が可能です

「産科の先生に相談したら、小児科で聞いてみてと言われた」という方も、どうぞご安心ください。
ベスタこどもとアレルギーのクリニックでは、妊婦さんへの「アブリスボ」および「百日咳ワクチン」「インフルエンザワクチン」の接種を行っています。 私たちは小児科ですが、「生まれてくる赤ちゃんの最初のかかりつけ医」として、妊娠中の方からのご相談も大歓迎です。
令和8年4月からRSウイルスワクチンが定期接種化!
これまでアブリスボは任意接種(自費)であり、数万円の負担がかかっていました。 しかし、*令和8年(2026年)4月より「定期接種」となり、練馬区にお住まいの方は助成制度によって金銭の負担なく(無料)受けられるようになりました 6)。
費用の壁がなくなり、より多くの赤ちゃんをRSウイルスの重症化から守れる環境が整いました。 対象の方には区から予診票が送付されますので、お手元に届きましたらご持参ください。
百日咳ワクチンとインフルエンザワクチンの費用について(目安)
なお、百日咳ワクチンやインフルエンザワクチンについては、これまで通り「任意接種(自費)」となります。
- 百日咳: 三種混合ワクチンを打つ場合、当院では11,000円となります。
- インフルエンザ: 時期や流行状況によります。
接種をご希望の方は、ワクチンの在庫確保のため、事前にお電話やWeb予約等でお問い合わせいただけますとスムーズです。
ご不安な点があれば、当院で遠慮なくお尋ねください。
参考文献
*1) 日本産婦人科学会. 妊婦への接種が推奨または考慮されるワクチン.
*2) 日本小児科学会. 妊婦への接種が推奨または考慮されるワクチン(2024年版).
*3) 厚生労働省. RSウイルス感染症Q&A.
*4) Kampmann B, Madhi SA, Munjal I, et al. Bivalent Prefusion F Vaccine in Pregnancy to Prevent RSV Illness in Infants. N Engl J Med. 2023;388(16):1451-1464.
*5) Marchand G, et al. RSVpreF vaccination in pregnancy: a meta-analysis of maternal-fetal safety and infant efficacy. Am J Obstet Gynecol. 2024.
*6) 練馬区公式ホームページ. 予防接種・感染症(保健・衛生). Available from: https://www.city.nerima.tokyo.jp/hokenfukushi/hoken/yobo/index.html
*7) Alami A, et al. Safety surveillance of respiratory syncytial virus (RSV) vaccine among pregnant individuals: a real-world pharmacovigilance study using the Vaccine Adverse Event Reporting System. 2024.
FAQ
Q1. アブリスボ(RSウイルスワクチン)を打つと早産になりやすいと聞いて不安です。
A. ワクチンの臨床データにおいて、早産(妊娠37週未満での出産)の発生率がわずかに高くなる可能性(シグナル)が指摘されています。そのため、日本ではより安全な「妊娠28週から36週」での接種が推奨されています。切迫早産のリスクがある方は、必ず産婦人科の主治医とよくご相談ください。
Q2. インフルエンザワクチンは妊娠初期に打っても大丈夫ですか?
A. はい、大丈夫です。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、妊娠の週数を問わず全期間(初期から後期まで)で接種が可能とされています。ママ自身の重症化を防ぐだけでなく、赤ちゃんへの抗体移行による発症予防にも非常に有効です。
Q3. 自分が子供の頃に百日咳ワクチンを打っていても、また打つ必要がありますか?
A. はい、接種をおすすめします。ワクチンの効果は時間とともに薄れていくため、大人になると免疫が低下していることが多いです。また、アブリスボとは異なり、百日咳ワクチンは「妊娠ごと」に接種することで、その都度赤ちゃんに十分な抗体を届けることができます。
Q4. 産婦人科に通っていますが、ワクチンだけこちらのクリニックで打てますか?
A. はい、可能です。当院では妊婦さんへの接種も積極的に受け入れています。各種ワクチンとも常時在庫があるよう努めていますが、確実にご案内するために、事前のご予約・お問い合わせをおすすめしています。
Q5. 練馬区の助成券などは使えますか?
A. はい、アブリスボ(RSウイルスワクチン)についてはお使いいただけます。令和8年(2026年)4月1日より定期接種となり、対象者は無料で受けられるようになりました。
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
