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インフルエンザと診断された。ホームケアと受診目安
お子さんがインフルエンザと診断されると、高熱や辛そうな様子を見て、「家でどう過ごせばいいの?」「また受診すべき?」と不安になることは当然のことです。
インフルエンザは特効薬を使っても、すぐに熱が下がるわけではありません。回復までの数日間、ご家庭でどのようにお子さんを支えればよいか、練馬区の小児科専門医が具体的な判断基準をお伝えします。

もくじ
熱はどのくらい続くの?
通常、インフルエンザの熱は3〜4日以内に下がることが一般的です *1)。 薬を飲んでもすぐには下がらないことが多いですが、水分がとれて眠れていれば、焦る必要はありません。
経過観察で大事なことは、「全身の状態」を見ることです。
再受診を検討する目安は?
- 熱が4日以上続いている
- 水分が半日以上全くとれず、おしっこが出ない
- 一度下がった熱が再び上がり、咳や鼻水が悪化している(中耳炎や肺炎の可能性があります)
すぐに受診が必要なサイン(救急要請含む)は?
以下の状態が見られる場合は、診療時間外であっても救急相談や受診を検討してください。
- 呼吸が苦しそうで、肩で息をしている
- 顔色が明らかに悪い(青白い、土気色)
- 呼びかけても反応が鈍い、視線が合わない
お家での過ごし方(ホームケアの基本)
水分補給と食事
最も大切なのは脱水を防ぐことです。食欲がなければ無理に食べさせる必要はありません。 経口補水液、麦茶、スープ、ゼリーなど、お子さんが口にしやすいものを少量ずつ頻回に与えてください。
お風呂は入ってもいい?
「熱があるからお風呂はダメ」ということはありません。以下の条件が揃えば、短時間の入浴やシャワーは可能です。
- 38度台でも活気があり、本人が入りたがっている
- 脱衣所や浴室が寒くないように温めてある
ただし、長湯は体力を消耗します。さっと汗を流す程度にし、入浴後はすぐに髪を乾かして湯冷めしないようにしましょう。ぐったりしている時は、温かいタオルで体を拭くだけで十分です。
解熱剤(熱冷まし)を使う正しいタイミング
「熱が高いから」という理由だけで解熱剤を使う必要はありません。
解熱剤は「一時的に症状を和らげる」ために使いましょう *1)。
解熱剤を使ってほしい場面
- 熱が高くて眠れない
- 喉の痛みや頭痛が強くて水分・食事がとれない
- ぐずりがひどく、体力を消耗している
これらのお薬を使うことで、少し眠れたり、水分がとれたりすれば十分な効果です。平熱まで下げることを目標にする必要はありません。
心配な「異常行動」と「けいれん」について

インフルエンザでは、熱による一時的な幻覚や、異常な行動が見られることがあります。
異常行動(うわごと・幻覚など)への対応
「部屋の隅に誰かいる」「怖いものが来る」と怯えたり、意味不明なことを口走ったりすることがあります。これを「熱せん妄」と呼ぶことがあります。
- 大丈夫なケース: 数分〜数十分で落ち着き、その後は意識がはっきりして会話ができる場合は概ね大丈夫です。様子をみていきましょう。
- 要注意なケース: ぼんやりした状態が長く続く、呼びかけへの反応がおかしい状態が継続する場合は要注意です。症状が長引いているだけのことが多いですが、「インフルエンザ脳症」の可能性もあります。直ちに医療機関へ連絡してください *2)。
事故防止のために 発熱から2日間は、転落などの事故を防ぐため、お子さんを一人にしないようにしましょう。窓の鍵をかけ、ベランダに出られないように対策してください。
けいれんが起きたらどうする?
インフルエンザは熱性けいれんを起こしやすい病気の一つです。
落ち着いて観察すること
- 時間を計る(何分続いているか)
- 服を緩め、横向きに寝かせる
- 口には何も入れない
救急車(119番)の目安
- けいれんが5分以上止まらない
- けいれんが止まっても、意識が戻らないうちに再びけいれんした
- けいれん後の意識の戻りが悪く、視線が合わない
数分でおさまり、その後泣いたり会話ができたりして、意識が普段通りに戻れば「熱性けいれん」の可能性が高いです *3)。その場合は慌てず、かかりつけ医に相談してください。
家族への感染を防ぐために
部屋はどうする?
可能であれば、感染したお子さんと他の家族の部屋を分けるのが理想です。 部屋を分けられない場合は、以下の工夫をしてください。
- 就寝時は2〜3メートル以上離れる
- 常に換気を心がける(1時間に1回程度)
- 食事の時間をずらし、対面での食事を避ける
マスクと手洗い
看病する大人はマスクを着用し、こまめな手洗い・うがいを徹底してください。お子さんの症状が落ち着いてきても、ウイルスはまだ体から出ています。家庭内での濃厚な接触や、マスクなしの会話には数日間注意が必要です。
いつから保育園・学校に行ける?(登園・登校の基準)

インフルエンザの出席停止期間は、法律で明確に決まっています 2)。 基準は*「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」**です。
これは少し複雑なので、具体例で考えましょう。
期間計算のルール
- 「発症日(熱が出た日)」を0日目と数えます。
- まずは**「発症から5日間(=発症日+5日)」**は休みます(最低でも6日目からの登園)。
- さらに、**「熱が下がった日」から数えて、決められた期間(幼児3日、小学生以上2日)**が経過している必要があります。
具体的なシミュレーション
例:1月4日(日)に発熱した場合
- 発症日(0日目):1月4日(日)
- 発症から6日目:最短で、1月10日(土)からの復帰となります。
- 小学生以上の場合は、1月7日(水)に熱が下がり、8日(木)、9日(金)も熱がなければ、10日(土)から復帰できます。
まとめ:迷ったら相談してください
インフルエンザの看病は、高熱が数日続くため、親御さんにとっても忍耐のいる時間です。
- 熱は3〜4日続くのが通常です。
- 水分がとれて、意識がはっきりしていれば、お家で様子を見て大丈夫です。
- 「5分以上のけいれん」や「明らかな意識の異常」がある時は迷わず救急へ。
お子さんの様子が「いつもと違う」「水分がどうしてもとれない」など、判断に迷うときは、いつでもご相談ください。中村橋駅近くの当院でも、回復期の確認や合併症のチェックを行っています。
よくある質問(FAQ)
Q1. インフルエンザの薬(タミフルなど)は必ず飲まないといけませんか?
A1. 必須ではありません。抗インフルエンザ薬は、発症48時間以内に使用すると発熱期間を1日程度短くする効果が期待できますが、重症化予防効果は限定的です。お子さんの全身状態が良ければ、薬を使わずに自然治癒を待つという選択肢もあります。医師と相談して決めましょう。
Q2. 解熱剤を使うと、ウイルスが死なずに長引くというのは本当ですか?
A2. 解熱剤を適切に使っても、治るまでの期間が大きく延びることはありません。高熱による体力消耗や、水分がとれない辛さを和らげるメリットの方が大きいため、お子さんが辛そうであれば我慢せずに使用してください。
Q3. 家族への感染を防ぐため、いつまで隔離が必要ですか?
A3. 発症から1週間程度はウイルスを排出している可能性があります。特に解熱後2〜3日はまだウイルス量が多いため、登園・登校許可が出ても、家庭内ではタオルを分ける、マスクをするなどの対策を続けることをお勧めします。
Q4. 予防接種をしていてもインフルエンザにかかりますか?
A4. かかることはあります。ワクチンの主な目的は「重症化(脳症や肺炎など)を防ぐこと」です。接種していても感染することはありますが、接種していない場合に比べて症状が軽く済むことが多いです。
Q5. 治った後の登園許可証は必要ですか?
A5. 自治体や施設によって異なります。練馬区の多くの保育園や学校では、医師の証明書ではなく、保護者が記入する「登園届」でよい場合も増えています。必ず通っている園や学校のルールを確認してください。
Q6. 1歳未満の赤ちゃんがインフルエンザになりました。重症化しませんか?家での注意点は?
A.6 基本的には自然に治りますが、「呼吸」と「おっぱい・ミルク」の様子をよく見てあげてください。
赤ちゃんは気管支が細く、体力が少ないため、肺炎や脱水を起こしやすい傾向があります。以下のサインがあれば、早めに受診してください。
- 呼吸が苦しそう:鎖骨の上や肋骨の間が、息をするたびにペコペコへこむ(陥没呼吸)、肩で息をしている。
- 飲みが悪い:いつもの半分程度しか飲めない、飲んでも吐いてしまう。
- 機嫌が極端に悪い:あやしても笑わない、視線が合わない、ぐったりしている。
医療上の免責事項 本記事の情報は2026年2月時点の医学的知見に基づきますが、すべての症例に当てはまるものではありません。お子さんの症状が重い場合や心配な場合は、個別の医師の診察を受けてください。
監修者表記 ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長(小児科専門医・アレルギー専門医)
引用文献
- *1) 日本小児科学会. インフルエンザ診療ガイドライン2024.
- *2) 文部科学省. 学校保健安全法(学校感染症).
- *3) 日本小児神経学会. 熱性けいれん診療ガイドライン2023.
子どもがインフルエンザと診断されると、高熱やぐったりした様子に不安を感じる保護者の方も多いでしょう。「このまま家で様子を見て大丈夫?」「いつから学校に行ける?」といった疑問は、診察室でもよく伺います。
この記事では、診断後のホームケアの具体的なポイントと、再度受診を検討すべきサインを分かりやすく解説します。ご家族の不安が少しでも軽くなり、落ち着いて看病ができるようお手伝いします。
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
