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子どもの陰嚢(玉袋)が腫れている!原因と緊急性の見分け方
「あれ、おむつ替えの時に見たら、なんだか片方だけ大きい…?」
「中学生の息子が『急に痛くなってきた!』と訴えている…」
様子を見ていいの?すぐに病院に行くべき?
陰嚢の腫れや痛みの原因は様々で、慌てずに様子を見てよいものから、一刻を争う超緊急のものまで存在します。この記事では、考えられる主な病気と、「緊急性のレベル」と「病院へ行くべき危険なサイン」について、小児科専門医が詳しく、分かりやすく解説します。
陰嚢の「腫れ」や「痛み」で考えられる主な病気を「腫れているだけの(痛みは少ない)場合」と「腫れと痛みを伴う場合」に分けて解説します。
もくじ
《主に腫れているが、痛みはあまりない場合》
陰嚢水腫(いんのうすいしゅ)
陰嚢の中に液体(腹水)がたまって、ぷっくりと腫れた状態です。特に1歳未満の赤ちゃんによく見られます。痛みや赤みはほとんどなく、ぷよぷよしているのが特徴です。
基本的には経過観察となりますが、1-2歳でも改善ない場合は手術が検討されます。
【緊急性の目安:★☆☆☆☆(低い)】
基本的に緊急性はありません。慌てずに、診療時間内にご相談ください。ただし、急に硬くなったり痛がったりした場合は、鼠経ヘルニアの嵌頓の可能性があり、緊急性が一気に高まります。
鼠径(そけい)ヘルニア
お腹の中の腸などが、足の付け根(鼠径部)から陰嚢に飛び出す「脱腸」です。泣いたりいきんだりした時に腫れ、リラックスすると戻ることが多いです。
乳幼児期に最も多いですが、学童期以降も含め、どの年齢でも起こる可能性があります。
自然軽快は期待できません。経過をみることもありますが、基本的には手術で治します。
【緊急性の目安:★☆☆☆☆(通常時)〜 ⚠️★★★★★(嵌頓時)】
普段、腫れたり戻ったりしているだけの状態であれば緊急性はありません。
しかし、嵌頓(かんとん)した場合は緊急性が高いです。
飛び出した腸が根元で締め付けられ、お腹の中に戻らなくなることを**「嵌頓(かんとん)」**と言いますが、これは、腸の血流が止まり、数時間で組織が壊死してしまう可能性がある危険な状態です。
腫れている部分が硬くなっている
指で押しても、腫れが引っ込まない
いつもと違う激しい不機嫌、火が付いたように泣き止まない
吐き気、嘔吐がある
このような症状がある場合は、夜間や休日でも、ためらわずに救急病院を受診してください。
精巣腫瘍(せいそうしゅよう)
精巣(睾丸)にできる「できもの」です。早期発見が重要で、痛みを伴わない硬いしこりとして触れる場合は要注意です。乳幼児期と思春期以降に2つのピークがありますが、頻度は非常に稀です。
【緊急性の目安:★★☆☆☆(できるだけ早めに)】
一気に悪化するような緊急性はありませんが、様子を見るべき病気ではないため、気づいたらできるだけ早めに診療時間内にご相談ください。
《腫れとともに、痛みを伴う場合》
精巣捻転(せいそうねんてん)
精巣が根元でねじれ、血流が完全に止まってしまう病気です。数時間で精巣が壊死してしまう、最も緊急性の高い病気の一つです。突然始まる激しい痛み、赤黒い腫れ、嘔吐などが特徴です。思春期(12歳〜18歳頃)に起こりやすく、夜間睡眠中に突然発症することが多いとされています。
【緊急性の目安:★★★★★(超緊急!)】
まさに時間との勝負です。夜間・休日を問わず、この病気を疑ったらためらわずに救急車を呼ぶか、すぐに救急病院を受診してください。
精巣付属器捻転症(せいそうふぞくきねんてんしょう)
精巣についている小さな組織がねじれて痛む病気です。精巣本体の血流は保たれるため、精巣捻転ほどの危険性はありません。思春期前(7歳〜12歳頃)の男の子に最も多く見られます。
【緊急性の目安:★★★★☆(準緊急)】
病気自体は緊急手術を要さないことが多いですが、症状が精巣捻転と酷似しており、保護者の方が見分けることは絶対に不可能です。「精巣捻転ではない」ことを確認するために、痛みが出たらすぐに医療機関を受診する必要があります。
精巣上体炎(せいそうじょうたいえん)
精巣の隣にある精巣上体に細菌が感染し、炎症を起こす病気です。数日かけて徐々に痛みや腫れ、赤みが強くなります。思春期以降に多いですが、尿路に何らかの異常がある場合、乳幼児でも起こることがあります。
【緊急性の目安:★★★★☆(準緊急)】
こちらも精巣捻転との鑑別が非常に重要です。抗菌薬による治療が必要なため、痛みが続く場合は我慢させず、速やかに受診してください。
《その他に考えられる原因》
外傷
自転車で転んだ、ボールが当たった、どこかに強くぶつけた、などの原因がはっきりしていることが多いです。強い痛みが続いたり、腫れがひどくなる場合は受診が必要です。
特発性陰嚢浮腫
明らかな原因なく、突然陰嚢の皮膚が赤くパンパンに腫れあがる病気です。痛みやかゆみは軽いことが多く、通常は数日で自然に治まりますが、他の病気との鑑別が重要です。
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)に伴う精巣炎
おたふくかぜの合併症として、みられます。
診断の鍵は「エコー検査」です
当院では超音波(エコー)検査を積極的に行っています。 エコー検査は、ゼリーを塗った機械を当てるだけの、全く痛みのない安全な検査です。
このエコー検査によって
- 袋の中に液体が溜まっているだけか(陰嚢水腫)
- 腸管が飛び出しているのか(鼠径ヘルニア)
- 腫瘍のような内容物かどうか(精巣腫瘍)
- 精巣への血流が保たれているか(=精巣捻転かどうか) 、などがわかります。
ただし、超緊急の「精巣捻転」の場合、時間的な余裕はあまりありません。
「急に痛くなって」、かつ「しっかり腫れている」場合は、精巣捻転の対応が可能な救急病院に直行しましょう。
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医療上の免責事項
本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の症状や状況に応じた医学的な診断・治療を代替するものではありません。お子さまの症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指示に従ってください。
監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
