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アトピー性皮膚炎と乳児湿疹の違いとは?見分け方や治療法を解説【ベスタの小児科医が解説】

赤ちゃんのすべすべな肌に、ある日ポツポツとした湿疹が…。
「これは何だろう?もしかしてアトピー?」と、多くの親御さんが不安な気持ちになりますよね。一口に乳児湿疹といっても、その種類はさまざまで原因や経過も異なります。
この記事では、代表的な乳児湿疹の種類ごとの特徴から、アトピー性皮膚炎との見分け方、そしてご家庭で今日から実践できる正しいスキンケア方法までを徹底的に解説します。
もくじ
主な乳児湿疹の種類と特徴

赤ちゃんの皮膚症状は、「乳児湿疹」と一括りにされがちですが、実は原因や見た目、できやすい場所は様々です。
ここでは、赤ちゃんによく見られる代表的な皮膚トラブルを6つに分けて解説します。
①新生児ニキビ(新生児ざ瘡)
②乳児脂漏性湿疹
③皮脂欠乏性皮膚炎
④皮膚カンジダ症
⑤接触性皮膚炎(かぶれ)
⑥汗疹(あせも)
①新生児ニキビ(新生児ざ瘡)
生後2週間から1ヶ月頃の赤ちゃんに多く見られます。お母さんのお腹の中にいた時にもらったホルモンの影響で、一時的に皮脂の分泌が活発になることで起こります。

ただし、ジュクジュクしたり、あまりに数が多かったり、赤みが強い場合は、他の病気の可能性もあるためご相談ください。
②乳児脂漏性湿疹
新生児ニキビと同じく、皮脂の分泌が盛んな生後1〜3ヶ月頃の赤ちゃんに多く見られます。皮脂の分泌が多いことが主な原因です。

ご家庭でのケアとしては、入浴前にベビーオイルなどでかさぶたをふやかしてから、泡立てた石鹸で優しく洗い流す方法が効果的です。無理に剥がすと皮膚を傷つけ、そこから細菌が入る恐れもあるため注意しましょう。
③皮脂欠乏性皮膚炎
生後3ヶ月を過ぎて皮脂の分泌が減ってくると、今度は乾燥による湿疹が出やすくなります。これは、いわゆる「乾燥肌」が進行し、皮膚のバリア機能が低下した状態です。

強いかゆみを伴うことが多く、赤ちゃんが掻きむしってしまうと、皮膚のバリア機能がさらに壊れて悪化する悪循環に陥ります。この状態を防ぐためには、徹底した保湿ケアが何よりも重要になります。
④皮膚カンジダ症
皮膚カンジダ症は、カビ(真菌)の一種であるカンジダ菌の増殖によって起こる皮膚炎です。赤ちゃんでは、おむつの中など、高温多湿の環境で発症しやすいのが特徴です。

通常の湿疹に使うステロイド外用薬だけでは、かえってカンジダ菌を増やして症状を悪化させることがあります。カンジダ菌に効く「抗真菌薬」という種類の塗り薬が必要ですので、自己判断せず必ず医療機関を受診してください。
⑤接触性皮膚炎(かぶれ)
特定の物質が肌に触れる「刺激」によって起こる湿疹で、一般的に「かぶれ」と呼ばれます。赤ちゃんの皮膚はバリア機能が未熟なため、大人では何ともないような、以下のような刺激でもかぶれてしまうことがあります。
- よだれや食べこぼし(口の周り)
- おしっこやうんちに含まれるアンモニアや酵素(おむつの当たる部分)
- 汗(首やあせもができやすい場所)
- 衣類のこすれや、すすぎ残した洗剤

原因物質が触れた部分にだけ、境界が比較的はっきりとした赤みやブツブツ、ただれが起こるのが特徴です。原因を特定し、その刺激から肌を守ることが治療の第一歩です。
⑥汗疹(あせも)
あせもは、新陳代謝が活発で汗っかきの赤ちゃんにはよく見られる皮膚トラブルです。大量の汗をかいたときに、汗を排出する管(汗管)が詰まって炎症を起こします。
おでこ、首の周り、背中、わきの下、ひじやひざの裏側など、汗がたまりやすい場所にできます。こまめに汗を拭いたり、シャワーで洗い流したりして、肌を清潔で涼しい状態に保つことが一番の予防・対策になります。
アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎とは、かゆみのある湿疹が繰り返し現れる、慢性的な皮膚の炎症性疾患です。乾燥しやすい肌(ドライスキン)とアレルギー体質が背景にあることが多く、乳児期から学童期、成人に至るまで幅広い年齢層でみられます。
乳児湿疹として現れることもありますが、原因や症状、経過が異なるので詳しく見ていきましょう。
アトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎で最もつらい症状は、我慢できないほどの「強いかゆみ」です。特に夜間に強くなる傾向があり、睡眠が妨げられることも少なくありません。赤ちゃんが眠れずにぐずったり、無意識にかいむしったりします。
湿疹の見た目は、時期や体の場所によって様々に変化します。
【主な皮膚症状】
- 赤みのあるブツブツとした湿疹
- 皮膚全体が乾燥してカサカサし、白い粉をふく
- 掻き壊すことで、じゅくじゅくして透明な液体(滲出液)が出る
- 慢性化すると、皮膚がゴワゴワと厚く硬くなる(苔癬化:たいせんか)
これらの症状は、体の左右対称に出やすいのも特徴の一つです。また、年齢によって湿疹ができやすい場所が変わっていきます。
乳児期(~1歳頃)はおでこ、頬、口の周りなど顔や頭から始まります。この時期は、じゅくじゅくとした湿疹が多い傾向にあります。幼児期(2歳頃〜)には、首の周り、ひじの内側やひざの裏など、関節の曲がる部分に目立ちます。乾燥してザラザラした、鳥肌のような湿疹が多くなるのが特徴です。
一般的な乳児湿疹との違い
症状が出始めたばかりの頃は、一般的な乳児湿疹かアトピー性皮膚炎かを見分けるのは困難です。しかし、長期的に見ていくと違いが現れるので以下の表を参考にしてください。
【アトピー性皮膚炎と一般的な乳児湿疹の違い】
最も大きな違いは、「症状が慢性的に続き、良くなったり悪くなったりを繰り返す」という点です。スキンケアを頑張ってもなかなか改善しない場合は、アトピー性皮膚炎を考えます。
乳児湿疹の原因

乳児湿疹の原因には主に、以下があげられます。
①過剰な皮脂の分泌
②不安定なバリア機能と乾燥
③外からの刺激
①過剰な皮脂の分泌
生まれてから2〜3ヶ月頃までは、お母さんのホルモンの影響で皮脂の分泌が活発です。
分泌された皮脂が毛穴に詰まり炎症を起こすことで、新生児ニキビや脂漏性湿疹などの湿疹が現れます。
②不安定なバリア機能と乾燥
赤ちゃんの肌は見た目はすべすべでも、とても繊細で未熟な状態です。
肌の一番外側には角層という組織があり、外部の刺激や乾燥から体を守るレンガの壁のような役割をしています。赤ちゃんの角層は大人の半分ほどの厚さしかありません。さらに、水分を保つ力も弱いため、バリア機能が不安定です。
また、皮脂の分泌は生後数ヶ月経つと低下するため、今度は肌が乾燥しやすくなります。
不安定なバリア機能と乾燥が相まって、湿疹が誘発されるのです。
③外からの刺激
バリア機能が未熟な赤ちゃんの肌は、日常生活にあふれるささいな刺激にも敏感に反応してしまいます。大人では何ともないような刺激が、湿疹の引き金になったり、症状を悪化させたりするのです。

乳児湿疹の治療と予防策

赤ちゃんの湿疹の治療は、スキンケアと保湿、原因に応じた適切な薬剤の使用、刺激を避けるのが基本です。ここでは、それぞれの治療方針について詳しく見ていきましょう。
①スキンケアと保湿
すべての乳児湿疹治療の基本であり、土台となるのがスキンケアと保湿です。薬で炎症を抑えても、肌のバリア機能が低下したままでは、わずかな刺激で再び湿疹を繰り返してしまいます。
乳児のスキンケアと保湿では、以下のポイントを意識しましょう。
- 1日1回はぬるめのお湯で全身をやさしく洗う
- 石けんは低刺激のものを選び、しっかり泡立てて使用
- すすぎ残しに注意し、しっかり洗い流す
- よだれやミルクがついたらこまめに拭き取る
- 入浴後すぐ(5分以内)に保湿剤を塗る
- 顔・体ともに保湿し、乾燥やかゆみを防ぐ
肌を清潔に保つための洗浄と、うるおいを補う保湿を徹底することが、再発しにくい丈夫な肌を育てる上で重要です。
②薬物療法

かゆみや赤みなどの炎症が起きている肌を、正常な状態に戻すための治療です。症状や原因に応じて、主に塗り薬を使い分けます。
アトピー性皮膚炎は、薬物療法に関して「炎症を長期にわたってコントロールする」「より強力な薬を使う」など治療方針が異なるので、困ったら医師に相談しましょう。
③刺激を避ける
汗やよだれ、衣類の摩擦、乾燥など、湿疹の引き金となる原因がはっきりしている場合は、それらを生活から取り除く工夫も大切な治療の一環です。
例えば、汗をかいたらこまめに拭く、肌着は通気性の良い綿素材を選ぶ、よだれがついたらすぐにやさしく拭き取るなど、日常のちょっとした工夫が症状の改善につながります。また、エアコンや加湿器を活用して適度な室温・湿度を保つことも、肌への負担を減らすうえで効果的です。
まとめ
乳児湿疹は、皮脂欠乏性皮膚炎や新生児ニキビのことが多いですが、中には症状が長期化し、結果的にアトピー性皮膚炎であったということもあります。乳児の湿疹は病態が多岐にわたるため、それぞれの湿疹に適した、スキンケア、保湿、薬物療法が重要です。
「この湿疹は何だろう?」「ケアの方法はこれで合っているのかな?」と不安に感じたときは、ぜひベスタこどもとアレルギーのクリニックにご相談ください。
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監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
医療上の免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の赤ちゃんの状態や健康に関する問題については、必ず医師の診察を受けてください。この記事の情報だけで判断せず、ご心配な点はかかりつけ医にご相談ください。

初めまして。
当院のホームページをご覧くださりありがとうございます。
私は小児科の中でも特にアレルギーと呼吸器を専門にしていますが、赤ちゃんの体重が増えない、おねしょが無くならない、ニキビが気になる、便秘気味など少しでも心配なことや不安に感じることがあれば、何でもご相談していただければと思います。
こどもたちがなるべく制限を受けることなく笑顔で日々を過ごし、自分らしく元気に成長できるよう、ご家族の不安を取り除けるよう、「優しさ」を持ったクリニックを目指して、地域の子育てに貢献できるよう頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
