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インフルエンザ脳症はどんな子になりやすい?疑うべき症状と受診の目安

冬が近づくと気になる、お子さんのインフルエンザですが、ただの風邪と同じように考えていませんか?
多くのインフルエンザは自然に回復しますが、まれに、けいれんや意識障害、異常言動などを伴う「インフルエンザ脳症」を起こすことがあります。日本では近年も毎年100〜200例程度が報告されており、早い受診判断が大切です。
この記事では、インフルエンザ脳症になりやすい子の特徴から、見逃してはいけない危険な初期症状、家庭でできる予防法までを詳しく解説します。大切な子どもを守るために、正しい知識を身につけましょう。
もくじ
インフルエンザ脳症とは?

インフルエンザ脳症とは、免疫がインフルエンザウイルスと戦うために過剰に反応し、正常な細胞を傷つけてしまうことで起こります。脳内で免疫の過剰反応が起こると、脳の血管から水分が漏れ出ます。頭蓋骨に囲まれた脳は逃げ場がないため、浮腫みによって圧が高まり、脳の機能に深刻なダメージを与えてしまうのです。このように脳が浮腫んでいる状態を脳浮腫といいます。
脳浮腫に至る病態は一つではなく、過剰な炎症反応、けいれん重積に伴う神経細胞障害、代謝異常など、複数のメカニズムが関わると考えられています。
インフルエンザ脳症は、発熱の早期(48時間以内)にけいれんや意識障害などの症状が現れることが多いです。またその一方で、厚労省ガイドラインでは3〜5日後にけいれんや意識障害が出る二相性の経過にも注意が必要とされています。(※1)
インフルエンザと風邪の違い
インフルエンザと風邪の大きな違いは、症状の始まり方と強さです。インフルエンザは、通常の風邪と比べ、急な高熱、悪寒、倦怠感、頭痛、関節痛、筋肉痛などの症状が目立ち、肺炎や脳症のような重い合併症が起こる危険性があります。
インフルエンザ脳症の後遺症
インフルエンザ脳症は、命に関わることもある危険な病気ですが、回復した後も体に影響が残る(後遺症)ことがあります。
インフルエンザ脳症の後遺症には、以下のようなものがあります。

インフルエンザ脳症の後遺症は必ず残るわけではありませんが、初期症状を見逃さず、早期に適切な治療を受けることが重要です。
インフルエンザ脳症になりやすい子の特徴

インフルエンザ脳症は、インフルエンザにかかったお子さんなら誰にでも起こりうる合併症です。そのなかでも発症しやすいお子さんの特徴がいくつかあります。
ここでは、インフルエンザ脳症になりやすい年齢と基礎疾患について解説します。
なりやすい年齢
インフルエンザ脳症は、5歳以下の幼児に発症しやすい傾向があります。(※1)子どもの体は免疫機能が未熟で、ウイルスに反応した免疫が過剰に働いて、自分の体を傷つけてしまうことがあります。
乳幼児期から小学校低学年までのお子さんは、インフルエンザの感染から守るためにワクチンの接種が重要です。インフルエンザが流行する時期は、お子さんの年齢にかかわらず、体調の変化にいつも以上に気を配りましょう。
基礎疾患
インフルエンザ脳症は、もともと何か病気を持っているお子さんだけがなるわけではありません。これまで大きな病気をしたことのない、元気なお子さんにも突然発症するケースがあります。
海外の報告では、インフルエンザ脳症と診断されたお子さんの半数以上(55%)には、もともとの病気(基礎疾患)がなかったとされています。(※2)誰にでも起こる可能性があるインフルエンザ脳症ですが、熱性けいれんや先天性代謝異常症、てんかんなどの既往がある場合は注意が必要です。
基礎疾患の有無で判断するのではなく、どんな子どもでも、インフルエンザ脳症になる可能性があることをしっておくことが大切です。
インフルエンザ脳症の危険な初期症状

インフルエンザ脳症は、発症から3日間程度で症状が急激に悪化することがあります。どのような症状が危険なサインかを知っておけば、早期発見につながり、お子さんの未来を守ることができます。
ここでは、インフルエンザ脳症の危険な初期症状を3つ解説します。
①けいれん
インフルエンザの高熱に伴い、お子さんがけいれんを起こすことがあります。その多くは、「熱性けいれん」ですが、インフルエンザ脳症のサインとして現れるけいれんは、その様子が異なります。
熱性けいれんの多くは、全身が左右対称に硬くなるか、ガクガクと震える動きが特徴で、通常は5分以内におさまります。けいれんが終わった後は、少しぼんやりしていても、徐々に意識がはっきりしてくるのが一般的です。
一方で、以下のような特徴が見られるけいれんは、脳に異常が起きている可能性を示す危険なサインです。
- けいれんが5分以上続く
- 短い間隔で何度も繰り返す
- 体の片側だけがけいれんする
- けいれん後も意識が戻らない
- 顔色が悪く、唇が紫色になる
緊急性の高い症状が出たら、すぐに救急車を要請してください。救急隊の指示を聞きながら落ち着いて対処することが重要です。
②意識障害
「意識障害」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、簡単に言うと「呼びかけへの反応がいつもと違う」状態のことです。高熱でぐったりしているだけなのか、危険な意識障害なのかを見分けることが重要になります。
インフルエンザ脳症による意識障害が起こっているのか、確認するときは刺激に対する反応を見ましょう。意識障害がある場合は、強い刺激でも目を覚まさない、目を覚ましても視線が合わずぼんやりしている、簡単な質問に答えられない、起きてもすぐ眠ってしまう状態がみられます。
このような状態は、脳が正常に機能していないことを示しており、一刻も早い専門的な治療が必要です。
③異常な言動
インフルエンザ脳症では単なる寝ぼけやうわごととは異なり、異常な言動が見られることがあります。脳の機能が混乱し、幻覚や幻視、興奮状態などが起きている可能性があるため、注意深く確認してください。
- 誰もいない方向を指して怖がったり、おびえたりする(幻聴、幻覚)
- 会話が成り立たず、急に叫んだり歌い出したり、意味不明な行動をとる
- 急に泣き叫んでパニックになる、感情のコントロールができなくなる
- 走り回ったり、暴れたり、普段はしないような目的のない行動をとる
お子さんの意思とは関係なく、異常な行動が起こっている可能性があるため、安全を確保しつつ、早めに医療機関へ連絡してください。
インフルエンザになったときの再診目安と治療方法

ここでは、受診の具体的な目安や病院での診断、治療について詳しく解説します。
受診の目安
前述したけいれん・意識障害・異常な言動の他、全身状態の悪化などが見られた場合は、脳に異常が起きている可能性があります症状は数時間で急速に状態が悪化することもあるため、一刻も早い医療機関への相談が重要です。
診断方法
インフルエンザ脳症の診断では、発熱の時期や意識障害、けいれん、異常な言動がいつから出ているかを確認します。そのうえでインフルエンザ検査を行い、必要に応じて血液・尿検査、頭部CTやMRI、脳波検査で脳や全身の状態を調べます。
これらの所見を組み合わせて診断します。
自宅で様子をみられる条件
インフルエンザにかかった場合、高熱で元気がなくなり、食欲が落ちるのは自然なことです。高熱でぐったりしていても、意識がはっきりしており、応答がしっかりできていれば経過観察しても良いでしょう。食事がとれなくても、水分が取れ、しっかり睡眠を確保できていれば、ひとまずは安心できます。
症状が安定していても、子どもの状態は急に変化することがあります。経過観察をしていても、油断せずにこまめに様子を観察し、「おかしい」と感じたらすぐに医療機関へ連絡してください。
治療方法
インフルエンザ脳症と診断された場合は、基本的には入院して専門的な治療を受けることになります。治療は、脳へのダメージを最小限に食い止め、お子さん自身の回復する力をサポートするために行われます。

症状に合わせて、けいれんを抑える薬や脳の温度を少し下げる「脳低体温療法」といった、専門的な治療が行われることもあります。入院中は、医師や看護師が24時間体制でお子さんの状態を注意深く見守ります。
インフルエンザ脳症の予防法と注意点

ここでは、インフルエンザ脳症の予防法や注意点を解説します。
予防接種を受ける
インフルエンザ脳症を予防するために、インフルエンザワクチンの接種を受けましょう。
ワクチンを接種しても、インフルエンザに絶対にかからないわけではありませんが、発病や入院・重症化を減らす効果が期待されます。(※3)小児における脳症そのものをどこまで直接予防するかのエビデンスは十分明らかではありませんが、インフルエンザにかからない・重くしないことは重要です。免疫機能がまだ十分に発達していない小さなお子さんにとって、ワクチンは体を守るための大切です。
小さなお子さんは、2回接種することで、より効果的に免疫を高められることもわかっています。1回の接種よりも、2回接種するほうが、ウイルスに対する防御力が高まるのです。(※3)
お子さんだけでなく、ご家族全員でワクチンを接種し、家庭内感染を防ぐことも重要です。
感染症の予防対策を徹底する
ワクチン接種に加え、日常生活での基本的な感染対策も重要です。
石けんと流水で30秒以上の手洗いを行い、咳やくしゃみの際は口と鼻を覆いましょう。人混みを避け、外出時はマスクを着用し、室内の湿度は50~60%を保ちます。
十分な睡眠とバランスの取れた食事で体の抵抗力を高めることも、家族全体を感染症から守ることにつながります。
解熱剤を選ぶ際の注意点
インフルエンザで高熱が出たとき、自己判断で市販の解熱剤を使うことは危険です。薬の種類によっては、インフルエンザ脳症になる可能性を高めてしまう場合があります。
インフルエンザのときに使用できる解熱剤の成分は、基本的には「アセトアミノフェン」のみです。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれるタイプの抗炎症薬は、インフルエンザにかかっているときは注意が必要です。ジクロフェナクナトリウムやメフェナム酸はインフルエンザ脳症との関連が指摘されています。(※4)また、アスピリンは「ライ症候群」という、脳や肝臓に重い障害を起こす病気の原因となるため、使用は厳禁です。
どの薬を使えばよいか迷った場合は、自己判断せず医師や薬剤師に相談するようにしてください。
まとめ
インフルエンザ脳症は、基礎疾患のない元気なお子さんにも突然発症することがあり、進行が早いのが特徴です。
大切なのは、危険な初期症状のサインを見逃さないことです。「いつもと様子が違う」という保護者の方の直感が、お子さんを救うための最も重要な手がかりとなります。
日頃からワクチン接種や手洗いなどの感染症予防を徹底しましょう。危険なサインが一つでも見られたら、ためらわずに夜間や休日でもすぐに医療機関を受診してください。正しい知識を持つことが、大切なお子さんを守ることにつながります。
ベスタこどもとアレルギーのクリニックでは、インフルエンザウイルスのワクチン接種を実施しています。予防や治療でお困りごとがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
参考文献
- Lam Van Nguyen, Duc Sy Nguyen, Que Thi Pham, Hai Thien Do, Dien Minh Tran, Tung Viet Cao, Hai Thanh Phan, Thai Quang Pham. Clinical Features and Treatment Outcomes of Influenza-Associated Encephalitis and Encephalopathy: A Study on 16 Children in Vietnam. Global Pediatric Health,2024,11,2333794X241286549.
- Amara Fazal, Elizabeth J Harker,et al..Pediatric Influenza-Associated Encephalopathy and Acute Necrotizing Encephalopathy – United States, 2024-25 Influenza Season.MMWR Morb Mortal Wkly Rep,2025,74,36,p.556-564.
- 厚生労働省:「インフルエンザワクチン(季節性)」
- 厚生労働省:「インフルエンザによる発熱に対して使用する解熱剤について」
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監修
ベスタこどもとアレルギーのクリニック 院長 濵野 翔
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
医療上の免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の赤ちゃんの状態や健康に関する問題については、必ず医師の診察を受けてください。この記事の情報だけで判断せず、ご心配な点はかかりつけ医にご相談ください。
この記事を監修した医師
小児科専門医 / 院長 濵野 翔
ベスタこどもとアレルギーのクリニック
当院の記事は、「こどもとご家族に寄り添い、より良い医療を考える」という理念のもと、 小児科・アレルギーの専門医が監修しています。日々の子育てで不安に感じることがあれば、 いつでもご相談ください。
経歴
- 2009年 杏林大学医学部付属病院 初期研修
- 2011~2017年 杏林大学医学部付属病院 小児科
- 2018年 福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科、2019~2023年 杏林大学医学部付属病院 小児科
専門・所属学会
- 日本小児科学会認定 指導医・専門医
- 日本アレルギー学会認定 専門医
- 日本小児アレルギー学会 ほか関連学会所属
